バッタ目とは? わかりやすく解説

バッタ目

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/21 00:30 UTC 版)

バッタ目(直翅目)
生息年代: 石炭紀現世 359–0 Ma
Є
O
S
D
C
P
T
J
K
Pg
N
トノサマバッタ Locusta migratoria
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: バッタ目(直翅目) Orthoptera
Latreille, 1793
亜目

バッタ目(バッタもく、Orthoptera)は、昆虫類の分類群の一つ。バッタキリギリスコオロギケラカマドウマなどが属するグループである。直翅目(ちょくしもく)とも呼ばれる。

かつてはカマキリナナフシゴキブリガロアムシまで含んだ大きな目で扱われたが、現在はこれらをそれぞれ独立したとして扱う分類法が一般的である。

概要

熱帯から寒帯まで、全世界の陸上に広く分布する。種類数は判っているだけで約1万5千種類ほどだが、今後も熱帯雨林地帯を中心に多くの新種が発見されると考えられている。うち日本では150種類以上が知られる。

体は前後に細長く、やや左右に平たいものが多い。触角は単純で長く、特に夜行性のグループであるキリギリス亜目はほとんどが体長よりも長い触角をもつ。

トノサマバッタの跳躍の高速度撮影

の中では特に後脚が長く発達し、移動や敵からの逃走の際によく跳躍する。後脚の腿節には筋肉がつき太くなっている。また、各脚の脛には小さなの束がいくつもあり、キリギリス亜目の肉食性の強い種類では獲物を脚で抑えこむため棘が長く鋭く発達する傾向がある。

主に植物の葉上で生活するものは趺節-足先に吸着組織を備える。バッタ亜目では爪間盤、キリギリス亜目では褥盤と呼ばれ、いずれもガラス・プラスチックなどの平滑な面を歩く際に寄与する。

後脚の発達の悪い一部の種類では殆ど跳躍を行わない種類(ケラカヤキリなど)もある。

口には大顎が発達し、食物をかじって食べる。バッタ亜目はほとんど植物食だが、キリギリス亜目では雑食や肉食のものが多く、肉食の強い種類は天敵に捕獲された際に大顎で噛みつくことも多い。キリギリスなどに噛まれると結構痛い。

一部の種類(ササキリ亜科のクサキリ族(クサキリ、クビキリギス、カヤキリ、ヒサゴクサキリなど)、ツユムシ亜科、ウマオイ亜科、クツワムシ亜科、コオロギではカンタン亜科。)はカマキリのように暗いところで複眼の色が黒っぽく変わる。

成虫にはがあり、これを使って活発に飛ぶものがいる。一方で、翅が鱗状に退化して飛行能力を失ったものや、羽化直後は後翅があって飛べるがしばらく後に後翅が抜け落ちて飛ぶ能力を失うもの等もいる。

キリギリス亜目ではオスの前翅にやすりのような発音器官と共鳴室を備え、前翅をこすり合わせ大きな音を出して鳴く種類が多い。鳴く種類ではオスの前翅の翅脈が複雑になるが、メスの翅脈は前後に単純に伸びる。バッタ亜目にもナキイナゴショウリョウバッタなど鳴くものがいるが、これらは前翅と後脚、または前翅と後翅をこすり合わせており、キリギリス亜目とは鳴く仕組みが異なる。鳴き声は他個体との通信手段として用いられる。バッタ亜目では後胸部の側面、キリギリス亜目では前脚脛節のつけ根にを持っていて、ここで他個体の鳴き声や物音を聞き取る。鳴き声はオスがメスと出会い配偶行動をとるための手段としての他、個体ごとの移動による過剰な拡散を防いだり、危険を感じて鳴き止む事で他の個体にも危険を知らせている、などの意味がある。

腹部は11個の腹節があるが、最後の第11腹節は退化していて、第9腹節と第10腹節にオスの生殖器やメスの産卵管、尾毛(びもう)が集中する。尾毛は触角よりも太くて短いが、コオロギ類ではかなり長く発達する。これもまた触角と同様に周囲を探る感覚器となっている。

生活史の時期を経ず、 - 幼虫 - 成虫という不完全変態を行う。卵は土中や植物の組織内に産み付けられる。バッタ亜目ではメスが腹部を土中に差しこみ、粘性のある体液を分泌し立てて卵嚢を作るのに対し、キリギリス亜目ではメスの腹端に長い産卵管があり、これを土中や植物の組織に突き立てて一粒ずつ産卵する。孵化した幼虫は翅がなく体も小さいが、ほぼ親と同じ体型で、親と同じ食物を摂って成長する。

分類

バッタ亜目(雑弁亜目) Caelifera

キリギリス亜目(剣弁亜目) Ensifera

ヤブキリの一種 Tettigonia viridissima (メス)
アシグロツユムシのメス Phaneroptera nigroantennata

参考文献

  • 宮武頼夫・加納康嗣編著 『検索入門 セミ・バッタ』 保育社、1992年、ISBN 4-586-31038-3
  • 村井貴史・伊藤ふくお著 日本直翅類学会監修 『バッタ・コオロギ・キリギリス生態図鑑』 北海道大学出版会、2011年、ISBN 4832913948

外部リンク



バッタ目

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/22 09:05 UTC 版)

昆虫食」の記事における「バッタ目」の解説

イナゴ 大量に採りやすいため、日本を含む各国食用にされている。日本ではコバネイナゴが多い。日本では醤油砂糖などで甘辛く煮付けるいなごの佃煮とすることが多いが、中国タイでは素揚げとする。中国雲南省のケラオ族やハニ族は、初夏総出稲田出てイナゴバッタ捕まえて食べ五穀豊穣を祈る祭り行っている。古代メソポタミアではイナゴバッタ魚醤似た醗酵調味料作っていた。新約聖書では洗礼者ヨハネ常食したという記述がある(イナゴマメ果実キャロブであるとする説もある)。また、ユダヤ教教義では多く生物を「不浄な生き物」として生け贄食用にすることを禁忌としているが、昆虫の中ではイナゴを含むバッタ類に限っては、この「不浄な生き物」としていないカシュルート参照)。 バッタ 大型の種がいる地域では、イナゴ同様に食用にされる。古代よりトノサマバッタサバクトビバッタによる蝗害が度々起こるアフリカ中東地域では、古くから捕まえて食用としていた。中東ルーツがあるイスラム教ユダヤ教は食に関する細かい規則があるが、前述のように預言者聖人が口にする記述聖典記述されており、イナゴ同じく例外的に扱われるハラール参照)。 中国では素揚げ炒め物にして食べる。 コオロギ 中国では「蟋蟀」(シーシュワイ)と呼ぶ。北京ではコオロギ決闘させる遊び闘蟋」があり養殖も盛んで、素揚げにして出す店もある。タイ北部カンボジアではタイワンオオコオロギ(Brachytrupes portentosus、タイ語でジロー・トートと呼ぶ)などの炒め物食べられている。 ケラ 中国雲南省からタイ北部にかけて、コオロギなどと共に食べられている。

※この「バッタ目」の解説は、「昆虫食」の解説の一部です。
「バッタ目」を含む「昆虫食」の記事については、「昆虫食」の概要を参照ください。

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バッタ目

出典:『Wiktionary』 (2021/08/19 12:32 UTC 版)

名詞

バッタ バッタ+ バッタもく。異称直翅目

  1. 分類学》 節足動物門(wp)昆虫綱(wp)下位分類される昆虫の1タクソン、一分類群(wp))。

類義語

同義語ともいえる類義語

類義語

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