利益に対する平等な配慮とは? わかりやすく解説

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利益に対する平等な配慮

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/21 03:17 UTC 版)

利益に対する平等な配慮の原則(りえきにたいするびょうどうなはいりょのげんそく、英語: principle of equal consideration of interests)は、ある行為の倫理的判断を行う際には、その行為によって影響を受ける存在が持つ利益に対して平等に配慮しなければならないとする原則[1]。「利益に対する平等な配慮の原則」の用語は、ピーター・シンガーの『実践の倫理』で初めて登場した[2]

シンガーは、人間だけでなく感覚を持つあらゆる存在が配慮されるべき利益を持っており[注釈 1]、それらすべての利益に対して平等に配慮すると、人種差別および性差別だけでなく種差別も否定されると考えた。人間も動物も、例えば痛みを避けることに対する利益を持っており、利益に対する平等な配慮の原則を適用すると、人種や性別に基づいて配慮の量を不平等に重みづけすることが倫理的に許容されないのと同様に、種に基づいて配慮の量を不平等に重みづけすることも倫理的に許容されないという結論が導かれる[1]

属する種と無関係にすべての存在の利益を平等に配慮するということは、すべての存在を同様に扱うということではない。例えば、車椅子に乗っている人と身体障害がない人の利益に対して平等に配慮するには、異なる扱いが必要である。また、猫には猫用の、犬には犬用の、人間には人間用の食事が必要であり、これらのニーズに対して平等に配慮するには、やはり異なる扱いが必要である[3]

動物倫理英語版に関する思想の起源の多くは18世紀のイギリスにさかのぼる[4]ジェレミ・ベンサムは『道徳および立法の諸原理序説』で、理性を持つかどうかではなく苦しむことができるかどうかが、利益を考慮するときに倫理的に重要なことであると主張した[5]。これは、功利主義の立場から動物に対する倫理的な配慮を支持する思想の初期の例と考えられている[6]

関連項目

脚注

注釈

  1. ^ もし利益に対する平等な配慮の原則が人間だけに適用されると仮定すると、ホモ・サピエンスに属するということが人間の利益を動物の利益よりも優先させる根拠となるが、人種や性別が(基本的に)倫理的判断をする際に無関係であるのと同様に、属する種が倫理的判断に重要であると仮定する理由がない[1]

出典

  1. ^ a b c Duignan 2013.
  2. ^ Singer 1993, p. 21.
  3. ^ Hettinger 2005.
  4. ^ Fujii 2008, p. 92.
  5. ^ “[T]he question is not, Can they reason? nor, Can they talk? but, Can they suffer?” (Bentham 1780, p. 309, Of the Limits of the Penal Branch of Jurisprudence)
  6. ^ Crimmins 2021, Pains and Pleasures.

参考文献




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