動物解放論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/03 19:23 UTC 版)
人種差別や女性差別に対抗する平等の原理を「利益に対する平等な配慮」だとシンガーは考える。つまり、利益を持つことができる存在すべてに対し平等な配慮を与える、という原理である。この原理の適用は人間のみに限られる理由はなく、動物にも広げられるべきだと考える。なぜなら、ある存在が「苦しみ」を感じることができる限り、その存在は「苦しみを避ける」ことに利益を持つと言うことができ、動物、大雑把に言って、脊椎動物はその振る舞い、人間との解剖学的な類似、進化上の共有から、苦しみを感じることができると考えられるからである。「ある存在が苦しみを感じることができる限り、その苦しみを考慮しないことは道徳的に正当化できない」と彼は主張する。人間の小さな利益のために動物の大きな利益を犠牲にするような態度を、「種差別」と呼んで非難している。 彼の最も影響力のある著作、『動物の解放』(1975年)において、シンガーは、人間の動物への扱いの中でも特に、動物実験と工場畜産を批判している。工場畜産については特に、このシステムに経済的な援助を与え、その存続を支持してしまうことを避けるため、工場畜産で生産された肉や卵、牛乳の消費をやめるべきだと主張している。シンガー自身30年以上に渡る菜食主義者である。 なお、同じく功利主義者であるジェレミー・ベンサムと同様、動物を苦しめずに殺すことは問題にならないという立場である。人間などの高等な生物は生活計画を持ち、それを殺して妨げるのは不正だが、そういったものを持たない生物を苦しめずに殺すのは不正ではないとしている。
※この「動物解放論」の解説は、「ピーター・シンガー」の解説の一部です。
「動物解放論」を含む「ピーター・シンガー」の記事については、「ピーター・シンガー」の概要を参照ください。
- 動物解放論のページへのリンク