主翼・尾翼
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 06:07 UTC 版)
主翼はアスペクト比2.8テーパー比1/7で、後退角は翼弦長25%で45度、前縁で52度であり、また、後縁にも若干の後退角がついている。クリップドデルタ翼と後退翼の中間的なものである。 開発初期の風洞試験の結果、主翼全体に5度の上反角を与える必要があると判明したが、機体主要部のチタニウム構造材の再設計は困難だったため、主翼幅70%辺りで折り畳まれる外翼部のみに12度の上反角を与えることで同等の効果を得るものとした。また、同じ外翼部の翼弦長を10%程度延長してドッグトゥース としている。 また、主翼は低翼配置であり、水平尾翼のほうが高い位置にある。この配置は迎え角を大きく取ると主翼の後流が水平尾翼の効果をなくし急激な機体の頭上げ(ピッチアップ)を生じること が判明した。そのためF-4では風洞試験の結果を受けて水平尾翼に23度と大きな下反角をつけることで対処している。なお、水平尾翼(スタビレーター)は全面が一体となって稼働する全浮動式を採用しており、尾翼前縁で発生した衝撃波の干渉を受けることなく操舵が行えるようになり、超音速飛行時においても機動性を低下させることがなくなった。そのため、F-4以降の戦闘機においても水平尾翼は全浮動式が採用されている。尾部にはドラッグ・シュートと水平尾翼を作動させる装置が内蔵されているほか、垂直尾翼の安定板前部の中央には、スタビレーター人工感覚システムの圧力センサーが取付けられている。 その後の研究で、主翼を尾翼より上に配置すれば、ピッチアップは防止できる事が判明した。また、低翼配置は、爆弾・ミサイル等を翼下に吊下するためには降着装置を長大化する必要があり、これもまた問題となった。そのため通常尾翼型の超音速戦闘機においては、これ以降は高翼配置が主流となっていった。 基本的に尾翼周りの設計は超音速機の発展途上の形態であり、その技術の未熟さは遷音速域において操縦安定性を悪化させる要因になっている。当時のマクドネル社の基本設計は短いジェットインテーク-ノズル系で機体の軽量化を図り、その上に胴体尾部を延長しているため、ジェット推力の変化による水平尾翼との近接作用で有害な上下力が発生する。高い尾部の上にさらに垂直尾翼を設置している一方で、艦載機ゆえに機体の上端は制限されてしまうためアスペクト比の小さい形となり方向舵の効きが悪く、旋回時に過大なアドバースヨーが発生する。 主翼前縁フラップには、初期型ではエンジンの17段目コンプレッサーで抽出した空気を吐き出すBLC(境界層制御)装置を装備していたが、F-4Eの後期型からは前縁スラットに改良されている。主翼の内翼部後縁には、内側にフラップ、外側にエルロンを装備しており、フラップ類は着艦時など低速での揚力を確保するだけでなく、空戦フラップとして使用されることで改善されている。 当時の戦闘機は超音速飛行時の抗力低下を重視し、主翼面積の小さな高翼面荷重の機体が多かったが、F-4は離着艦性能の維持のため大面積の主翼を採用し、翼面荷重は低くなっている。元来は大型のミサイルキャリアーとして設計され戦闘機同士の空中戦・格闘戦を念頭に置いていなかったものの、低翼面荷重と高推力重量比により格闘戦もこなせる機動性を得ることができた。その空戦性能は、海軍機ながら当時のアメリカ空軍のセンチュリーシリーズなどを凌駕しており、のちに(軽快なMiG機相手に苦戦を強いられる局面もあったものの)ベトナム戦争など数々の実戦でも証明された。
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主翼・尾翼
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「エアバス A400M」の記事における「主翼・尾翼」の解説
25%翼弦で15度の後退角を持った主翼は、胴体天井部内に中央翼に相当する主翼ボックスと呼ばれる剛性を高めた構造を持つ。
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主翼・尾翼
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「ミラージュF1 (戦闘機)」の記事における「主翼・尾翼」の解説
ミラージュF1はダッソー社製にしては珍しく、無尾翼デルタ翼ではなく後退翼に水平尾翼のある、一般的な機体形状となっている。 無尾翼形式を採用しなかった理由は、無尾翼デルタ翼の欠点(失速速度が高いために、低高度を安定して低速で飛ぶことには向かず、短距離離着陸性能に乏しい)を克服するためであり、また、STOL性能の向上のためである。前作ミラージュIIIは、無尾翼形式により低速飛行性能とSTOL性に劣り、フランス海軍の艦上戦闘機として採用できないという問題を生じた。また、失速速度の高さから整備されていない飛行場での運用に向かないことや、低高度低速度での俊敏な飛行が苦手なことから、対地支援的な任務に不向きである、という難点があった。これに加え、無尾翼デルタ形式は水平飛行時には急加速からの高速巡航に優れるが、大仰角を取った急上昇&急加速に向かない(翼平面積が広いため、大迎角を取ると抵抗が大きくなる)という構造上の難点があるため、これを解消するためでもあった。 本機の基本設計は、ダッソー社において並行して開発されていた機体のうち、有尾翼式の高翼配置後縁後退角付きデルタ翼機としたミラージュIII F2(仏語版)、および-F2を単座型の設計に改めたミラージュIII F3と同様である。-F2は前述の無尾翼デルタ形式の難点を解消した機体形状に大推力エンジンを搭載し、縦列複座の乗員配置とした「低空高速侵入戦闘爆撃機」として開発されたものであり、-F3は-F2の設計を踏まえつつ短距離離陸性能と上昇力の高い「即応高速迎撃機」として開発されたものだが、本機はそれらの設計を踏まえて、いわば“翼設計を改めたミラージュIII”として、迎撃から制空戦闘、対地支援まで幅広い任務をこなせる機体(いわゆる「マルチロール機」)として、また低空飛行性能の向上によりそれらの任務により適した機体として設計されている。 ミラージュF1は主翼が胴体上部に配置された高翼機であることも特徴の一つである。このため、主翼には外側へ行くほど下方向へ垂れ下がる下反角がつけられている。 主翼には、前縁の内側3分の1のあたりにドッグトゥースが配置されている。 操縦翼面は、一次操縦翼面として主翼後縁の端部分に補助翼を設置しているほか、全遊動式の水平尾翼(昇降舵)と、垂直尾翼後縁に方向舵を装備している、ごく一般的な構成である。 二次操縦翼面としては、主翼上面にスポイラー、主翼前縁と後縁にフラップを装備している。このうち、スポイラーはローリング操縦時には左右独立して作動し、補助翼を支援するスポイレロン (Spoileron) となっている。 フラップについては、要求仕様の「高高度超音速飛行と低高度低速飛行が安定して可能な機体」に応じて、かなり充実されている。後縁フラップは補助翼より内側が左右2分割された二重隙間式フラップとなっているほか、主翼前縁のほぼ全幅にも前縁フラップが装備されている。これらの前縁フラップは、ドッグトゥースを境にして内側は単純に前縁が下方に折れ曲がるドループ前縁であるが、外側は前縁スラットとすることで迎角限界を向上させている。これに伴い、高迎角でのヨー方向の安定性を維持するために、後部胴体下面に2枚のベントラルフィンを装備している。 左にロールしている、スペイン空軍のミラージュF1M。右主翼端の補助翼が下がっていることと、左主翼端の補助翼が上がると共に左主翼上面のスポイラー(フラップの前に設置)が作動していることに注目。 腹部を見せるスペイン空軍のミラージュF1M(偽のキャノピーが描かれている)。ドッグトゥースを境に、内側と外側の前縁フラップの形状が違うことがよくわかる。 離陸するフランス空軍のミラージュF1CR。主翼後縁のフラップと、前縁外側のスラットに注目。
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