境界層制御
レイノルズ数が大きくなると、境界層の流れも層流から乱流に変化する。上流の厚さの薄い部分は規則正しい層流を保つが、あるところから、下流は流体小部分が不規則に混合する乱流に変わる。境界層が乱流に変わると、層の厚さも摩擦抵抗も著しく増加する。また、境界層がはがれると物体の後方に渦の群れが発生し、圧力が下がるため、物体を流れの方向に押し流すような力、いわゆる圧力抵抗を与えるので全体の抵抗は著しく増大する。このため、境界層の発達を抑えて摩擦抵抗を低減したり、剥離を防止する目的で境界層吸込み装置などによって境界層の性質が制御される。
参照 境界層、摩擦抵抗、圧力抵抗境界層制御
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/12 16:39 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動航空宇宙工学における 境界層制御(きょうかいそうせいぎょ、英: Boundary layer control、BLC)は、航空機の主翼の境界層を制御する複数の手法を意味する。層流境界層維持が目的時には、層流制御 (Laminar flow control,LFC) とも呼ばれる。
揚抗比を保ち高い迎角でも低速時の飛行特性を向上させる。同規模の機体に比べ境界層制御を備えた機体は短距離離着陸能力や高速巡航における飛行特性が大幅に向上する。
境界層制御を使用する航空機の例として日本の新明和PS-1・US-1・US-2飛行艇がある。これらの大型4発機は、境界層制御専用のエンジンで圧縮した空気を翼上面に吹き出して層流を作り出すことによって境界層剥離を防ぐ境界層制御を行なっており、高い短距離離着陸能力を備えている[1]。
脚注
- ^ 『防衛省開発航空機の民間転用に関する検討会取りまとめ』防衛省、2010年8月、26頁。
関連項目
- ブラウン・フラップ (Blown flap)
- コアンダ効果
- 高揚力装置
- 渦流制御翼
外部リンク
境界層制御
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「ブラックバーン バッカニア」の記事における「境界層制御」の解説
バッカニアは、主翼と水平尾翼の双方に吹き出し式フラップ (Blown flap) による境界層制御機構を組み込んでいるのが特徴の一つである。 バッカニアは低空侵攻攻撃機であるので、低空での突風(ガスト)の影響を抑え、かつ空気抵抗を低くするには翼面荷重と翼幅荷重を高く(=主翼をなるべく小さく)する必要があった。 しかしバッカニアは空母での運用を前提とする艦上機なので、発艦・着艦速度を抑えるためには逆に翼面荷重と翼幅荷重を低く(=主翼をなるべく大きく)する必要があるという、二律背反に陥った。 そこで、主翼がある程度小さくても発艦・着艦速度を下げることができるように、保守負担の増加を甘受してでも吹き出し式フラップによる境界層制御機構が組み込まれた。 吹き出し式フラップは、主エンジンの圧縮機から抽出した圧縮空気を、前縁フラップのヒンジ上面から主翼上面へ、後縁フラップのヒンジ上面からフラップ上面にそれぞれ這わせるように勢いよく噴出させることで、コアンダ効果により周辺の境界層を巻き込み、高迎角での境界層剥離による失速を防ぐ。 さらに水平尾翼の前縁下部からも水平尾翼下面に沿って噴出させることで、迎角を取るために大きく下げ舵を取っている水平尾翼下面の失速を防ぐようになっている。 これにより、発艦・着艦時には低速でもより大きな迎角を取ることで揚力を維持できるようになり、発艦・着艦速度の低下につながった。南アフリカ空軍のS.50型の離陸滑走を例にとれば、境界層制御不使用時には滑走距離3,700フィート(1,128 m) /離陸速度175ノット(324 km/h; 201 mph)が、境界層制御を使用すると滑走距離3,000フィート(914m)/離陸速度144ノット(266 km/h; 165 mph)に低下している。
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