クリスマス
『青い鳥』(メーテルリンク) クリスマス・イヴの夜更け、貧しい木こりの子供チルチルとミチル兄妹のところへ、魔法使いの老婆がやって来る。老婆は「青い鳥を探して来ておくれ。私の娘が病気で、青い鳥が必要なんだ」と言い、ダイヤモンドの徽章がついた青い帽子を与える。帽子をかぶり、ダイヤモンドを回すと、さまざまな「物の精」が見えるようになる。チルチルとミチルは青い鳥を求めて1年間の旅をするが、目覚めると、翌日のクリスマスの朝だった。
『クリスマス・キャロル』(ディケンズ) スクルージは小さな事務所を持つ、強欲で冷酷な老人だった。ある年のクリスマス・イヴの深夜、3人の精霊が現れて、過去の幻像(金のために恋人を捨てた青年時代のスクルージ)・現在の幻像(スクルージの事務所の書記や甥の家の一家団欒)・未来の幻像(孤独な中で死んでゆくスクルージ)を見せる。スクルージは過去を悔い未来を恐れて、一夜のうちに心を入れ替え、皆から愛される良き老人となる。
『くるみ割り人形』(チャイコフスキー) スタールバウム家のクリスマス・イヴのパーティで、発明家ドロッセルマイヤーが、少女クララにくるみ割り人形をプレゼントする。その夜更け、くるみ割り人形と、鉛の兵隊人形たちが動き出し、鼠の大軍と戦う。クララがスリッパを鼠の王様に投げつけ、くるみ割り人形は勝利を収める。くるみ割り人形は美しい王子に変身し、クララを雪の国とお菓子の国へ連れて行く。
*クリスマスの前夜に、奇蹟が起こる→〔嘘〕12の『ヴィヨンの妻』(太宰治)。
『危機』(星新一『宇宙のあいさつ』) 宇宙人たちが、地球人の悪評判を聞いて攻撃しようとするが、たまたまその夜はクリスマス・イヴだったので、地球上の人々は、いつになく穏やかに平和に暮らしていた。それを見た宇宙人たちは、攻撃を中止して去った。救世主キリストは、人々の気づかないところで、世界を救ったのだった。
『フランス田園伝説集』(サンド)「田舎の夜の幻」 クリスマス深夜のミサの間に動物たちが話をする。それを聞いてはならない。ある時、好奇心の強いカスリオ爺さんが、牛と驢馬の会話を聞いてしまった。牛「どうして元気がないのかね?」。驢馬「ご主人が、もうすぐいなくなってしまうんだ」。牛「そりゃ残念だ」。驢馬「あと3日で、この世におさらばなのさ」。びっくりしたカスリオ爺さんは、家へ逃げ帰って床にもぐりこみ、高熱を発して3日後に死んだ。
*クリスマスの前夜に、翌年死ぬ人の顔が見られる→〔死の知らせ〕2の『クリスマス前夜の張り番』(イギリス昔話)。
★3.クリスマス・イヴの死。
『鉄道員』(ジェルミ) 50歳を越えた鉄道運転士アンドレアは、職場や家庭の悩みから酒に慰めを求め、健康を害する。アンドレアと妻と末っ子サンドロだけの、寂しいクリスマス・イヴ。そこへ大勢の友人・知人が彼を励ましに訪れ、パーティが始まる。家を出ていた長男も帰って来て、長女からは「メリー・クリスマス」の電話がある。アンドレアは久しぶりの幸福感を味わう。皆が帰った後、アンドレアはベッドで愛用のギターを爪弾きつつ、静かに息を引き取る。
『フランダースの犬』(ウィーダ) 15歳の少年ネロと老犬パトラッシュは、クリスマス・イヴの真夜中過ぎに、アントワープの教会にかけられたルーベンス作のキリスト聖画の下で凍死する。町の人々は、クリスマスの朝、抱き合って死んでいる少年と犬を見いだす。
*10歳の少年の、クリスマス・ツリーの下での死→〔白血病〕2の『クリスマス・ツリー』(ヤング)。
*マッチ売りの少女は、クリスマス・イヴに死んだ、と語られることが多いが、アンデルセンの原作では、大晦日に死ぬ→〔大晦日〕1。
★4a.クリスマスの日の出来事。
『水晶』(シュティフター) ボヘミアの山村の靴屋が山向こうの町の娘を妻として迎え、兄妹2人の子をもうけるが、妻と子は、村では余所者扱いされる。クリスマス前日2人の子は山向こうの祖母の家へ行き、その帰り道で雪に降りこめられて、山中の岩穴で一夜を過ごす。クリスマスの朝2人の子は村人たちに救い出され、この事件以後、2人の子もその母も本当に村の一員と見なされるようになる。
★4b.クリスマス中の休戦。
『キリシタン伝説百話』(谷真介)15「戦場の降誕祭(クリスマス)」 永禄九年(1566)の降誕祭が近づいた頃。堺の町では、松永久秀と三好三人衆の軍勢が敵対し、一触即発の情況だった。双方の軍勢には多くのキリシタンがおり、「降誕祭は休戦しよう」との話になった。双方から70名ほどのキリシタン兵が、町の会合所に集まり、降誕祭の夜、司祭を迎えてミサをした。翌日の正午には皆で食事をし、聖歌をうたって歓談した。夕方になると、キリシタン兵たちはそれぞれの陣営に戻って、また戦さの準備にとりかかった(大阪・堺)。
『人形の家』(イプセン) クリスマス前日。ノラのもとを旧知のクログスタトが訪れ、過去にノラが借金証書に偽署名したことを彼女の夫ヘルメルに知らせる、と告げる(第1幕)。クリスマス当日。クログスタトが郵便箱に手紙を入れたので、ノラは「明晩の舞踏会の練習をしましょう」と言って、ヘルメルが手紙を読むのを妨げる(第2幕)。クリスマス翌日。舞踏会終了後の深夜、ヘルメルは手紙を読み、ノラを罵る(第3幕)→〔離縁・離婚〕1。
★5.ある年のクリスマスから翌年のクリスマスまで、1年間の物語。
『若草物語』(オルコット) ある年のクリスマスの直前から物語が始まり、1年間の出来事を記して、翌年のクリスマスの翌日で終わる→〔四人姉妹〕。
★6.クリスマス・プレゼント。
『サザエさん』(長谷川町子)朝日文庫版・第3巻30ページ クリスマスの朝。ワカメが「サンタ・クロースに靴を頼んだのに、お菓子を入れてるの」と言うと、友だちは「あたし、お菓子を頼んだのに靴が入ってたわ」と言う。2人は「あなたとわたしを間違えたのね」と話し合い、プレゼントを交換する。ワカメは靴を持って帰宅し、「サンタ・クロースが間違えた」と言うが、サザエは「いけません。返しておいで」と叱る。
★7.クリスマス・プレゼントの起源。
『マタイによる福音書』第2章 東方の学者たちがメシア(=救世主)誕生を知って、ベツレヘムまでやって来る。学者たちは、幼子(おさなご)イエス=キリストと母マリアのいる家に入り、ひれ伏して幼子を拝む。彼らは宝の箱を開け、黄金・乳香・没薬を贈り物として捧げる〔*他の福音書には、この物語は見られない〕。
*→〔二者同想〕1aの『賢者の贈り物』(O・ヘンリー)は、『マタイによる福音書』のこの物語に言及し、「彼ら東方の賢者たちが、クリスマスにプレゼントをするということを考え出したのだ」と記す。
★8.まだクリスマスが来ていないのに、「メリー・クリスマス」と挨拶する。
『メリイクリスマス』(太宰治) 昭和21年(1946)、12月はじめの東京。「私(笠井)」はシズエ子ちゃんと一緒に、屋台のうなぎ屋へ行った。屋台の奥の紳士がセンスのない冗談をしゃべり続け、「私」は日本の酔客のユウモア感覚の欠如にうんざりする。ところが紳士は、外を通るアメリカ兵を見て、大声で「ハロー、メリイ、クリスマアス」と叫んだので、「私」は紳士のその諧謔にだけは噴き出した。アメリカ兵は、とんでもないという顔をして首を振り、歩み去った。
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