総会屋 法規制の沿革

総会屋

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/05 08:54 UTC 版)

法規制の沿革

法による規制は1981年昭和56年)の商法改正以前と以後に大別できる。

同年以前は総会屋に対して商法494条(当時)の『株主が株主総会で株主権の濫用をすることにより他の株主の発言や議決権の行使を妨害するように依頼をする[不正の請託]が商法違反にあたる』とする規定が存在していた。1962年(昭和37年)の東洋電機カラーテレビ事件はモデルケースの一つである。

1981年(昭和56年)の商法改正は、総会屋に関していえば端株主を株主総会から締め出す案が立法化され、「不正の請託」であるかないかを問わず、株主の権利行使に関して会社の財産を支出した時点で刑事罰の対象とする点が注目された。単位株導入[25]利益供与禁止制度の新設[26]がその柱である。

1982年(昭和57年)10月1日に改正商法が施行されると、単位株制度は実際に多くの総会屋を株主総会から閉め出し、会社から総会屋への対策費などの支出も減少したが、生き残りをかけた総会屋の活動も活発になる。1984年(昭和59年)1月30日に行われたソニーの株主総会では、12時間30分という記録的な「マラソン総会」となり、「総会屋は死なず」という衝撃を世間に与えた。

しかし、総会屋排除の気運は、もはや時代の要請でもあり、書面による株主の質問への一括回答方式、権限が拡大された議長が運営の主導的な立場を打ち出すという、地道な努力を続ける企業が確実に増えていた。一方で総会屋との水面下の交際(雑誌購読費や海の家提供名目)が続いている企業(高島屋味の素松坂屋三菱自動車工業西武鉄道)も依然としてあり、そんな中、商法改正と同じ年の1997年平成9年)に、第一勧業銀行総会屋利益供与事件が発覚、報道された[27]

この件で、警察・検察は、企業の取締役にも峻烈とも思える厳しい態度で臨んだ結果、狭い業界内部で情報が漏れる危険を犯しながら、総会屋との交際を続けようとする企業も激減、一連の総会屋利益供与事件を契機に、商法が再改正され、会社に利益を要求しただけで犯罪となる「利益供与要求罪」が新設された[27]

上場企業の多くは株式持ち合い保有[28]をやめており、外国資本が参入した証券界では、証券取引の監査組織や監査法人が「法令遵守を上場企業に求める」という時代になっている。


  1. ^ 金銭、物品、有価証券債権信用供与債務免除債務保証サービス労務、施設提供、無償の海外旅行ゴルフコンペの参加、リハーサル出席株主への日当、社会通念を越える手土産・飲食費・交通費、株主・その関係者の慈善団体・研究機関への寄付・会費・出版物の購入・広告料など。「相当な対価を伴う合法的な商取引」も含める。また、犯罪組織的な役割を持つ総会屋もあり、その総会屋から得た資金を暴力団の資金源(シノギ)としていた事例もある。
  2. ^ 例えば、挨拶回りついでに自分達の作成した冊子の購入などを「提案」する。株主総会をトラブルなく無事に取り回したい総務部のなかには、総会屋の威迫に負けて書籍購入などの名目で金品を与えてしまう場合もあり、そうなると両者の癒着構造が生じる。総会屋はこの癒着をテコにして、さらに影響力を行使し、ターゲット企業から金品を得ようとする。またターゲット企業の総務部に顔の利くことをエサにして備品・文房具業者や弁当仕出し業者、廃棄物処理業者などに声をかけ、紹介してやるなどと称して口利き料を巻き上げる。
  3. ^ 『現代の眼』(木島力也)、『』(小早川茂)、『流動』(倉林公夫)、『日本読書新聞』(末期、上野国雄)、『新雑誌X』(丸山実
  4. ^ 中小企業保護の観点から、この呼称には批判がある。
  5. ^ 武部組。生井一家五代目古河吉の舎弟
  6. ^ 森川哲郎
  7. ^ 1952年~1955年
  8. ^ 1960年~1969年
  9. ^ 1963年~1965年
  10. ^ 当時、都市銀行16行のうち13行の総会進行係を児玉系で占めた。中でも谷口勝一は、三井系企業と非上場企業に強く、児玉色の強い平和相互銀行東京相互銀行国民相互銀行ヤクルトの進行係も務めた。
    第一勧業銀行 - 嶋崎栄治
    富士銀行 - 宮元昭雄
    三菱銀行 - 上森子鉄
    三和銀行 - 後藤与一
    大和銀行 - 後藤与一
    太陽神戸銀行 - 後藤与一
    三井銀行 - 谷口勝一
    埼玉銀行 - 亀掛川清
    北海道拓殖銀行 - 嶋崎栄治派
    日本興業銀行 - 谷口勝一
    日本長期信用銀行 - 谷口勝一
    東海銀行 - 神戸丹吾派
    日本不動産銀行 - 上森子鉄派
    児玉派でないケースは下記の通り。
    住友銀行 - 滝川資徳
    協和銀行 - 田辺幸作
    東京銀行 - 池谷八十吉
    竹森久朝 『見えざる政府-児玉誉士夫とその黒の人脈』 白石書店 1976年 P 25-26
  11. ^ 現・住吉会
  12. ^ 小西政治経済研究所
  13. ^ 明治大学出身。立川・曙町
  14. ^ 現・住吉会
  15. ^ 企業擁護奇兵隊
  16. ^ 小石川・後楽園
  17. ^ 後、一和会系白神組
  18. ^ 白神一朝とも名乗った。長堀橋2丁目
  19. ^ 現・六代目松葉会
  20. ^ 四代目体制で常任相談役
  21. ^ 麹町
  22. ^ 茅ヶ崎
  23. ^ 市川中山法華経寺大僧正佐藤栄作の用心棒。佐郷屋亡き後全日本愛国者団体会議の議長に就任
  24. ^ 内神田3丁目
  25. ^ 単位株とは額面50,000円に相当する数の株式を1単位とした場合、50円額面の場合(50×)1000株、500円額面の場合(500×)100株の株式を持たなければ議決権を行使できなくなり単位未満の端株を持って株主総会に出席していた総会屋は排除され、会社も株主総会招集通知の通信費や運営の費用を減らせるメリットが生じるとされた。
  26. ^ 会社又はその子会社の計算で株主の権利行使に関して利益供与をした場合、会社の取締役、監査役およびこれらの職務を代行する者、支配人その他の使用人と利益供与をうけた者は商法の罰則規定により刑事上の制裁(6ヵ月以下の懲役、または30万円以下の罰金)を受けるものとした。
  27. ^ a b “【特集・連載】1997年5月23日 旧第一勧銀が『呪縛』公表 闇勢力排除の契機に”. 東京新聞. (2006年10月4日). http://www.tokyo-np.co.jp/hold/2008/anohi/CK2007061502124479.html 2016年3月25日閲覧。 
  28. ^ 外資に乗っ取られないよう国内企業間で積極的に株式を持ち合った結果、1973年度末の法人持株比率は66.9%にも達した。 草野厚 『山一証券破綻と危機管理』 朝日新聞社 1998年 P 265-266
  29. ^ 警察庁組織犯罪対策部組織犯罪対策企画課. “平成30年における組織犯罪の情勢【確定値版】 (pdf)”. 2019年4月3日閲覧。


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