みんかん‐でんしょう【民間伝承】
伝承
(民間伝承 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/03/21 09:36 UTC 版)
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伝承(でんしょう、英: folklore、仏: tradition populaire)とは、ある集団のなかで古くからある慣習や風俗、信仰、伝説、技術や知識などを受け継いで後世に伝えていくこと、もしくは、そのように伝えられた事柄や物を指す。歴史学や民俗学にとって重要な資料となる。
伝承、民間伝承、伝統
「伝承」は、英語のfolklore、フランス語のtradition populaireにあたる言葉で、庶民(柳田國男のいう常民)のあいだでみられる知識や技術の継承および後世への伝達を意味している。古くは「俚伝」とも訳され、「民俗」の語も同じ意味で用いられる。
ただし、民俗学でいう伝承は、狭くは昔話や伝説のような口承だけを指す語ではない。日本の民俗学では、柳田國男以来、民俗資料を目に映ずる資料、耳に聞こえる言語資料、心意感覚に訴えて理解される資料へと大きく捉える見方が重視されており、伝承は事物・行為・言語表現・心意の広がりをもつ資料群として把握されてきた[1]。そのため、伝承は「何が語られたか」だけでなく、何が反復され、どのような理解や感覚として共有されているかを含めて捉えられる概念である[1]。
この視野は後年の調査項目にも受け継がれ、民俗資料は衣食住、生業、交通・運輸・通信、交易、社会生活、信仰、民俗知識、民俗芸能・娯楽・遊戯、人の一生、年中行事、口頭伝承などへ細分化されてきた[1]。ここで口頭伝承は多数ある項目の一つであり、伝承全体を口承文芸だけに還元しない点に特徴がある。したがって、伝承は特定の物語類型の名称というより、人びとの生活文化が複数の媒体と場を通じて継承される過程を指す語として理解する方が、日本民俗学の整理に整合的である[1]。
近年の研究でも、「民間伝承」は「先祖から受け継いだもの」や「無意識に身にしみこんだもの」を含むものとして読み直され、世代を超える継承の過程として再解釈されている[2]。この観点では、伝承は固定した内容の保存だけでなく、共同体の成員が反復のなかで身につけ、共有し、更新しながら保持する働きとしても捉えられる[2]。
また、文化財行政でも、民俗文化財は衣食住、生業、信仰、年中行事等に関する風俗慣習、民俗芸能、民俗技術、およびそれらに用いられる衣服・器具・家屋など、人々が日常生活の中で生み出し継承してきた有形・無形の伝承と説明されている[3]。さらに、無形の民俗文化財は祭り、年中行事、人生儀礼、民俗芸能、民俗技術などが世代から世代へ繰り返し伝えられてきたものとされる[4]。このため、伝承は口で語られる内容だけでなく、身体化された作法、共同体の実践、技術の継承、それを支える道具や場までを含む概念として理解できる[3][4]。
日本でいう伝承とはそのまま伝える事、伝統は精神を受け継ぎ常に創造するものである。traditionは[trad]はラテン語で裏切る、飛び越えるという意味を持つことから、伝統というニュアンスに当てはまる。しかしながら、伝承に対してのニュアンスとしては適切でない。
そのまま伝えるという点から言えば「transmission」の方が適切であると考えられる。
このことから、伝統は創造する、伝承は守ると言う動詞が適切である。この言葉には注意する必要がある。
「民間伝承」という語もよく用いられ、流布しているが、「民間」という語は、日本においては長らく官界に対するものとして用いられることが多いので、本来はfolkの訳語としては必ずしも適切ではない。
サクソン語形の複合語であるフォークロア(folk-lore )の語は、イギリスの古代学者ウィリアム・ジョン・トムス(William John Thoms)が1846年に雑誌「アシニーアム」のなかで民間古事(庶民につたわるしきたりや習わし、行事)と民間文芸(庶民に伝わる口承文学、言い伝え)などの両者をフォークロアの語のもとに包括しようと提議したことに始まるとされ、そののち欧米各国も採用するところとなったが、ドイツのみは当初からフォルクスクンデ(Volkskunde)の語を用いてきた。
また、
folklore is the tales, legends and superstitions of a particular ethnic population
while folktale is a tale or story that is part of the oral tradition of a people or a place.
と、あるように口頭をも含む文化"folklore"と口頭だけの"folktale"で違う扱いであるが、どちらも正しい言葉である。
フランスやイタリアではtradition populaireという語もあるが、フォークロアそのままを用いることが多い。トラディシオンtradition という語はフランスでは政治的な意味合いで受け取られることが多く、研究というよりは政治的・心情的な態度をあらわすので使用を避ける傾向がある[5]。日本においても、民俗学におけるトラディシオンを「伝承」と訳して「伝統」とはあまり訳さないのも同じ理由によっている。「伝統」と呼称した場合、中立的な観点が阻害されることがしばしばありうるからである。
しかし今日、その一方で「民間療法」、「民間信仰」、「民間芸能」・「伝統芸能」・「民俗芸能」、「伝統行事」・「民俗行事」などの用語と混用する傾向も顕著である。
伝承の種類
行為伝承と口頭伝承
民俗行事や芸能など、その行為が伝承されていくことを行為伝承というのに対し、神話や叙事詩、伝説、民俗語彙など口頭で伝承されるものを口頭伝承もしくは口承といい、また、口碑と呼ぶことも多い。なお、古民家のことを伝承家屋と呼ぶこともある。
さまざまな伝承
それぞれの伝承は複合的な性格を有するので、単純に分類することはできない。以下の分類例はあくまでも便宜的なものである。
- 社会伝承…村のしくみや家族・親族に関する伝承。通過儀礼など人の一生に関する伝承
- 生活伝承…衣食住、生産や生業、交通・交易、歳時習俗などの伝承
- 信仰伝承…祭りや講など。
- 文化伝承…芸能、民間療法と俗信、口頭伝承(口承)、方言・民俗語彙
脚注
出典
- ^ a b c d 山下, 裕作「日本民俗学における農村研究の方法とその可能性―インドネシア農村での地域資源調査の事例から―」『農林業問題研究』第58巻第1号、2022年3月25日、18-26頁、doi:10.7310/arfe.58.18。
- ^ a b 伊藤, 敏「「民間伝承」とは何か―感情の心理学的構成主義による「民間伝承」の再解釈―」『日本民俗学』第317巻、2024年2月29日、118-136頁、doi:10.34560/nihonminzokugaku.317.0_118。
- ^ a b “民俗文化財”. 文化庁. 2026年3月17日閲覧。
- ^ a b “文化財体系から見る”. 文化遺産オンライン. 2026年3月17日閲覧。
- ^ 『民俗学辞典』(1951)
参考文献
- 柳田國男監修、(財)民俗学研究所編『民俗学辞典』東京堂出版、1951.1、ISBN 4-490-10001-9
- 祝宮静『民俗資料入門』岩崎美術社、1971.9
- 西垣晴次『民俗資料調査整理の実務』柏書房<地方史マニュアル7>、1975.9
関連項目
外部リンク
- 『手づくりの生きがい ―生活文化の伝承―』(1979年) - 社会教育の立場から、手づくり文化などの生活伝承を見直し、今日の社会にマッチした伝承のメカニズムをつくろうとする動きを描く。日本映画教育協会(現・日本視聴覚教育協会)の企画の下で英映画社が制作。
民間伝承
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/04 04:17 UTC 版)
佐渡以外にも、おけさ発祥の地を名乗る土地が新潟県下に点在するが、その一つ出雲崎町では、原型が鎌倉時代に発生し、後世に伝来したハイヤ節と融合して出雲崎おけさが成立後、佐渡など各地へ広まったと伝えられる。源義経に仕え、福島県の医王寺に伝わる奇談で知られる佐藤継信・忠信兄弟の母、乙和御前(音羽御前とも)は兄弟の戦死を聞きつけ、二人が倒れた合戦地の京都・屋島へ旅立つも、現・新潟県出雲崎町で断念し、仏門に下り二人を弔うことにした。やがて、二人が各々義経の身代わりとなったという武勲が伝わるや、嬉しさのあまり同門の尼僧たちと袈裟の姿で踊りだしたのがおけさの始まりだという。ただし、医王寺にある御前の墓や遺品と伝えられる品々、兄弟の嫁である若桜と楓が甲冑姿で御前を慰める逸話はいずれも御前が飯坂の地を出なかったことを示唆する。
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