民俗語彙とは? わかりやすく解説

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みんぞく‐ごい〔‐ゴヰ〕【民俗語彙】

読み方:みんぞくごい

民俗事象表示する語彙民俗資料収集に際しては、特に名詞・形容詞が重視される


民俗語彙

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/07 13:26 UTC 版)

民俗語彙(みんぞくごい)とは、口頭で伝承されてきた方言的な語彙のこと。民俗資料のひとつ。その多くは方言と重なるが、方言が言語学的にアプローチされるのに対し、民俗語彙は民俗学的にアプローチされ、比較検討ないし考察される。

概要

民俗学では、言語文化とは密接な関わり合いをもち、言語が異なれば形態も異なるとする考え方を前提として、口承で伝えられてきた民間伝承については、方言を用いて記録されてきた。このようにして記録された言葉が民俗語彙である。

日本では、すでに江戸時代に各地の風俗習慣に着目する知識人の存在が知られている。17世紀末には長崎生まれで江戸にも滞在した西川如見が、地方には「神代の昔の遺風」が残っていると指摘しており、近世国学の大成者として知られる本居宣長も、山村漁村などには古い言語や儀礼が残っており、これらを探訪して収集したいと述べている。江戸時代後半に東北地方を遊歴した三河国出身の文人菅江真澄は、数多くの著作のなかで秋田地方はじめ奥羽各地の民俗語彙を記載している。こうした考えは、古い言葉は口頭で伝承され、漢字とは無関係に伝わっていくものであるということを前提として、これを民俗語彙として収集し、これら収集した語彙を互いに比較し、繋ぎ合わせることで古い日本人の生活様式や信仰を究明していこうという態度を生んだ。人々の日常生活精神生活については文献資料ではなく、その肉声を耳で聞き取るべきだとされたのである。

このようにして得られた方言的な民俗語彙を仲立ちとして、民俗事象相互の比較検討を行い、それによって伝承の新旧関係その他を明らかにしようということも試みられた。現代では、このような手法の研究はあまり行われていないが、かつてはきわめて有効な手法として重んじられ、戦前から戦後まもなくにかけては、日本各地で「民俗語彙辞典」や「民俗語彙集」が数多くつくられた。また、こんにちにあっても、話者(情報提供者)が出来事をどのようにとらえているかという点ではきわめて重要だとされている。

脚注

参考文献

図書
論文
  • 井上京子「民俗分類と民俗語彙」『日本語学』第15巻第1号、明治書院、1996年1月、15-21頁、 ISSN 0288-0822 
  • 永池健二 著「史心と平凡:柳田国男の歴史認識と民俗語彙」、柳田国男研究会 編『柳田国男研究年報2』岩田書院、1998年3月、5-32頁。 ISBN 4872941039 
  • 花部英雄「民俗語彙「サイギョウ」の発生」『國學院雑誌』第95巻第3号、國學院大學、1994年3月、20-30頁、 ISSN 0288-2051 
  • 求哲次「有良の海辺民俗語彙(1)」『奄美郷土研究会報』第32号、奄美郷土研究会、1992年8月、112-116頁、 ISSN 0910-0598 
  • 求哲次「有良の海辺民俗語彙(2)」『奄美郷土研究会報』第33号、奄美郷土研究会、1993年8月、123-128頁、 ISSN 0910-0598 
  • 求哲次「有良の海辺民俗語彙(3)」『奄美郷土研究会報』第34号、奄美郷土研究会、1994年9月、50-59頁、 ISSN 0910-0598 
  • 江畑哲夫「三重県の民俗語彙について」『三重民俗研究会会報』第1号、三重民俗研究会、1988年10月、1-14頁。 
  • 高藤武馬「柳田国男の分類民俗語彙」『日本語と文化・社会3:ことばと文化』三省堂、1977年7月。 
  • 崎山理 著「民俗語彙(方法、衣食)における日本語とオーストロネシア語の若干の対応例」、日本語語源研究会 編『語源探求2』明治書院、1990年7月。 ISBN 9784625420696 
  • 上村孝二「薩隅方言における民俗語彙の考察:『綜合日本民俗語彙』のために」『鹿児島短期大学研究紀要』第13号、鹿児島短期大学、1974年3月、 ISSN 0286-0538 
  • 新井小枝子 著「民俗語彙と方言地理学:〈井戸〉を表す語彙」、小林隆・大西拓一郎・篠崎晃一 編『方言地理学の視界』勉誠社、2023年5月、201-216頁。 ISBN 9784585380030 
  • 森俊 著「雪国の気象に関する民俗語彙」、中井精一・内山純蔵・高橋浩二 編『日本海沿岸の地域特性とことば:富山県方言の過去・現在・未来』桂書房〈日本海総合研究プロジェクト研究報告2〉、2004年3月、72-83頁。 ISBN 4905564697 
  • 石垣悟「民俗を表記する:民俗語彙,標準名称,そして差別用語をめぐって」『日本民俗学』第256号、日本民俗学会、2008年11月、56-86頁、 ISSN 0428-8653 
  • 野村純一「お伽草子の「とぎ」とは何を意味するか:民俗語彙「トギ」から」『國文學』第26巻第8号、学燈社、1981年6月、129-134頁、 ISSN 0452-3016 
  • 矢野敬一「柳田国男と雑誌『民間伝承』の戦略:昭和初期・民俗語彙と運動論」『静岡大学教育学部研究報告:人文・社会・自然科学篇』第60号、静岡大学教育学部、2010年3月、1-18頁、 ISSN 1884-3492 

関連項目

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