しん‐げん【震源】
震源
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/02 09:46 UTC 版)


1:震央 2:震源 3:震源の深さ 4:スリップ量 5:走向 6:傾斜角 7:スリップ角 8:下盤 9:上盤 10:震源域
震源(しんげん、英語: hypocenter)は、地震の発生した地下の場所を意味する[1]。震央(後述)とは異なる。
震源と震源域
断層の破壊は震源となる場所1か所で起こるものではないので、破壊が最初に発生した場所を震源、破壊した領域を震源域(しんげんいき、source region)とよぶ[1]。基本的に地震の規模が大きくなるほど震源域も大きくなる[1]。マグニチュード(以下単にM)8を超えるような巨大地震の場合、数百kmにおよぶこともある。長野県中部地震の震源面積は京都市東山区とほぼ同じだが、規模がM9.0の東北地方太平洋沖地震(2011年)の震源域は岩手県沖から茨城県沖まで南北500 km、東西200 kmにわたった(東北地方を南北に5分割した一片にほぼ相当する)[2]。よって余震の震源点も一点ではない。地震学においては、震源域と断層面はほぼ同義である。
小規模な地震では震源域が極めて小さく、断層破壊が震源に集中している場合も多い(ポイントソース)。逆に大規模な地震では震源域が広い[注釈 1]。
断層が場合によっては数百 kmにわたり破壊される地震という現象の中で、単に断層の破壊が始まった点にすぎない震源が重視されるのは、震源のみが後述のように地震波の到達時刻をもとに、地震発生直後に判定できるからである。
地震 | モーメントマグニチュード | 断層の長さ(km) | 断層の幅(km) |
---|---|---|---|
長野県中部地震 | 5.0 | 4 | 2 |
長野県西部地震 | 6.4 | 15 | 10 |
兵庫県南部地震 | 6.9 | 40 | 10 |
鳥取地震 | 7.0 | 33 | 13 |
日本海中部地震 | 7.8 | 120 | 30 |
大正関東地震 | 7.9 | 130 | 70 |
昭和東南海地震 | 8.1 | 120 | 80 |
昭和三陸地震 | 8.1 | 180 | 100 |
東北地方太平洋沖地震 | 9.0 | 500 | 200 |
1960年チリ地震 | 9.5 | 850 | 180 |
震源の決定
断層の破壊の始まった震源の位置は、地上の複数(3または4点以上)の観測点で得られた地震波形から、P波とS波の初動到達時刻を読み取り、決定する(グリッドサーチ法)。平面座標(緯度・経度)及び深さによって示される。気象庁では緊急地震速報を発表するために、1つの観測点で得られた波形だけから震源を一時的に推定することもある(BΔ法、テリトリー法)。当然、多くの波形が得られていたほうが震源の決定精度は高い。しかしグリッドサーチ法でも震源の深さを求めることは難しい場合があり、余震活動や、震源から数千 km離れた観測点の波形を用いることで決定される。
実際には、断層の破壊は震源にとどまらず、大地震の場合は数十 km以上にわたって破壊が広がるわけであるが、その様子については地震波形からは明らかにすることはできない。それは真っ暗なトンネルの中でたくさんの鐘を鳴らすようなものである。この場合、最初に鳴りはじめた鐘がどの方向にあるかは辛うじて分かるものの、一斉に鳴り、さらに壁の音の反響もあると、もはやそれぞれの鐘の配置など分からない。地震波もそれと同様で、最初の1点については判定できるものの、その後どうなっているかは直接は分からない。故に地震のその他のパラメーターと震源域は、以下のように様々な分析と、震源域でその後に発生する余震の分布をもとに判定される。
地震速報などでは「震源の深さはごく浅く……」と報じられる事もあるが、深さが10 kmよりも浅かった場合にこのように表現される(このデータの次にマグニチュードが発表されるのが通例)。
震源パラメータ
地震は地下の断層運動と考えられるから、地震を起こすことによってどれだけ断層が動いたかを示せば、地震の発生メカニズムを示すことになる。これを震源パラメータと呼ぶ。
震源パラメータも観測される地震波形から求められる。まず地震波の初動が「押し」であるか「引き」であるかを識別してこれを図に描き、震源球を作る。これは整理されてメカニズム解として表される。すなわち、断層の走向(strike)、傾斜(dip)、すべり方向(slip vector)である。このメカニズム解と、観測された地震波形の振幅から、断層がどれだけ動いたか(すべり量)を決定する。
このほか、震源パラメータとして重要な断層面の面積は、余震分布、地震後の地殻変動である余効変動、地震波の周波数の解析、津波などから求められる。
震央(震源地)
震源直上の地表部分を震央(epicenter)と呼び、これには深さのパラメータはない。マスコミなどで俗に震源地と言われているものである。
震源の深さの決定は難しいが、震央は比較的簡単に求められる。震央が海上にあった場合、津波の危険があるため津波警報発令等の対策を取るなど、まず震央を求めることが重要になる場合もある。
転用
震源という言葉は、ものごと(とくに事件や騒動)の原因や渦中という意味で使われることがある。震央という言葉をなにかのたとえに使うことは殆どない。
脚注
注釈
出典
参考文献
- 宇津徳治『地震学』(第3版)共立出版、2001年。ISBN 978-4-320-04637-5。
- 長谷川昭、佐藤春夫、西村太志『地震学』共立出版〈現代地球科学入門シリーズ〉、2015年。 ISBN 978-4-320-04714-3。
関連項目
震源
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/28 01:32 UTC 版)
震源は奄美大島の東北東の琉球海溝付近とする説(宇津)と琉球列島の西側(G-R)とする説があり、2011年現在でも決着は付いていない。今村(1913)による報告書では、名瀬、東京、京都、恒春の観測結果より大森公式を用いて決定されたとされているが、震源の位置と深さは、資料編纂者によって異なる。代表的な2つの資料を比較すると、 宇津カタログ 1982 - .mw-parser-output .geo-default,.mw-parser-output .geo-dms,.mw-parser-output .geo-dec{display:inline}.mw-parser-output .geo-nondefault,.mw-parser-output .geo-multi-punct{display:none}.mw-parser-output .longitude,.mw-parser-output .latitude{white-space:nowrap}北緯28度00分 東経130度00分 / 北緯28.0度 東経130.0度 / 28.0; 130.0 深さ100km(理科年表採用値) G-R(Gutenberg and Richter)カタログ 1954 - 北緯29度00分 東経129度00分 / 北緯29.0度 東経129.0度 / 29.0; 129.0 深さ160km 中央気象台[観測要覧]では『余震190回』との記載もあるが、別な資料では『余震極めて寡少なるは-異例とすべき』とされ、余震の多い浅発地震とも余震の少ない深発地震どちらの解釈も可能である。現在の観測では、沖縄本島、奄美大島直下のプレートの深さは、約50km、想定震源域付近でも約80km とされており、従来の震源深さを 100km または 160km とする説には矛盾が生じるとの見解もある。なお、震源深さを 100km と考えた根拠は、津波が小さかった事とされている。 後藤(2012)は、当時の観測精度が低かったことに注意しつつ震源を再決定したところ、北緯28度40分 東経130度33分 / 北緯28.67度 東経130.55度 / 28.67; 130.55、深さ60km(周辺の地震活動を勘案すると10km程度か)に求められた。この結果から、本地震はプレート境界型地震であった可能性が大きいとしている。
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「震源」の例文・使い方・用例・文例
- 地震の震源地は南の海岸から100キロ沖だった。
- 震源(地).
- 震源地は大島付近の海底といわれる.
- 大地震の震源はどこであったか
- 地震の震源から真上の地表上の点
- 海底を震源地とする地震
- 震源が深い地震
- 地震波が震源から観測点に到達する所要時間
- 震源地が非常に遠い地震
- 地震を観測した地点と震源の真上の地点との距離
- 震源とその周辺の地震エネルギーが蓄積していたと考えられる地域
- 震源の深さが数十キロメートル以下の地震
- 震源が内陸にある地震
- 地震の際,震源から発して四方に伝わる弾性波
- 地震の震源地は宮城県北部だった。
- それはまた,震源地近くの海底の調査にも使用されるだろう。
- 震源地は昨年12月の地震の震源地から南東150キロに位置していた。
- これらの島は地震の震源地の近くにある。
- その地震の震源地は,パキスタンのイスラマバードから北東へ約95キロの山岳地帯だった。
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