現在の観測
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/24 11:06 UTC 版)
20世紀末まで、クロイツ群に属する非常に明るい彗星が太陽系の内側を通過しても、近日点通過が5月か6月だった場合は気付かれないままになる可能性があった。1年のうちこの時期には、地球から見ると、彗星はほとんど太陽の真後ろから直線的に近づいてきてまた遠ざかっていくため、彗星が非常に明るくなっても、太陽の極めて近くでしか見ることができない。1882年の日食彗星のように、近日点通過中に皆既日食が起こるという珍しい偶然が起こる以外、発見できるようになる可能性はなかった。 しかし、1980年代には、2つの太陽観測衛星がたまたま偶然にクロイツ群に属する数個の新しい彗星を発見し、太陽探査機SOHOが1995年に打ち上げられてからは、太陽に非常に近い彗星を1年中観測することができるようになった。SOHOは太陽のすぐ近傍の連続的な画像をもたらしており、差し渡し数mしかないものを含む、毎年100個以上もの太陽をかすめる新彗星を発見している。SOHO彗星の約90%はクロイツ群に属する彗星であり、残りの彗星は「非クロイツ群」、または「散在性」の太陽接近彗星と呼ばれている。SOHOが観測したクロイツ群彗星で近日点通過を生き残ったものはない。太陽に突入するものもあるが、大部分は単に完全に蒸発してしまったようである。 SOHO彗星のうち約3分の2は、インターネット経由でSOHOの観測結果を分析しているアマチュア天文家によって発見されてきた。アマチュアの中には非常に多数の発見を成し遂げているものもいる。イギリスのマイケル・オーツは136個もの発見数を記録し、ドイツのライナー・クラフトも63個を発見している。 SOHOの観測から、太陽に接近する彗星はしばしば数時間をおいて2個一組でやってくるということが明らかになっている。このような組の出現は偶然にしては頻繁すぎ、また前回の回帰で分裂した可能性も、もしそうなら遥かに距離が離れているはずなので考えられない。その代わり、このような組は近日点からはなれたところで分裂した結果だと考えられている。多くの彗星が近日点から離れたところで分裂するのが観測されており、クロイツ群の場合は、近日点の近くでの最初の分裂によって、軌道の残りを周る間に次々と分裂が連続していくと思われる。 クロイツ群の亜群Iに属する彗星の数は亜群IIに属する彗星の数の約4倍である。これは「祖母」彗星が母彗星に分裂した際に、大きさが不均等な2つの破片に分裂したことを示唆している。
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