記法について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 13:51 UTC 版)
有限集合 S の置換に対して、その記法は大きく三種類が存在する。1815年、コーシーによって導入された二行記法[訳語疑問点]は一行目に S の元を書き、その各元の下に置換による像を書いて二行目とするものである。例えば、集合 {1, 2, 3, 4, 5} のある置換は σ = [ 1 2 3 4 5 2 5 4 3 1 ] {\displaystyle \sigma ={\begin{bmatrix}1&2&3&4&5\\2&5&4&3&1\end{bmatrix}}} と書くことができ、上と下の対応が同じなら横の順序は問わない記法である。 σ = [ 1 2 3 4 5 2 5 4 3 1 ] = [ 2 4 5 1 3 5 3 1 2 4 ] = [ 5 4 3 2 1 1 3 4 5 2 ] = ⋯ {\displaystyle \sigma ={\begin{bmatrix}1&2&3&4&5\\2&5&4&3&1\end{bmatrix}}={\begin{bmatrix}2&4&5&1&3\\5&3&1&2&4\end{bmatrix}}={\begin{bmatrix}5&4&3&2&1\\1&3&4&5&2\end{bmatrix}}=\cdots } 1852年、エンリコ・ベッチはこれを σ = [ 1 2 3 4 5 σ ( 1 ) σ ( 2 ) σ ( 3 ) σ ( 4 ) σ ( 5 ) ] {\displaystyle \sigma ={\begin{bmatrix}1&2&3&4&5\\\sigma (1)&\sigma (2)&\sigma (3)&\sigma (4)&\sigma (5)\end{bmatrix}}} のような対応関係と見て σ は σ(1) = 2, σ(2) = 5, σ(3) = 4, σ(4) = 3, σ(5) = 1 を満たす写像とした。 コーシーの流儀では有理式 F(x1, x2, x3, x4, x5) の置換を F ( x 1 , x 2 , x 3 , x 4 , x 5 ) σ = F ( x 1 , x 2 , x 3 , x 4 , x 5 ) [ 1 2 3 4 5 2 5 4 3 1 ] = F ( x 2 , x 5 , x 4 , x 3 , x 1 ) {\displaystyle F(x_{1},x_{2},x_{3},x_{4},x_{5})\sigma =F(x_{1},x_{2},x_{3},x_{4},x_{5}){\begin{bmatrix}1&2&3&4&5\\2&5&4&3&1\end{bmatrix}}=F(x_{2},x_{5},x_{4},x_{3},x_{1})} のように記述し、さらに別の置換τを行った時も右から作用させて { F ( x 1 , x 2 , x 3 , x 4 , x 5 ) σ } τ = F ( x 1 , x 2 , x 3 , x 4 , x 5 ) ( σ τ ) {\displaystyle \{F(x_{1},x_{2},x_{3},x_{4},x_{5})\sigma \}\tau =F(x_{1},x_{2},x_{3},x_{4},x_{5})(\sigma \tau )} としたため σ の後に τ を行う置換を στ で表すようになった。 一方でベッチの流儀を使う場合は合成写像として τ ( σ ( 1 ) ) = ( τ ∘ σ ) ( 1 ) {\displaystyle \tau (\sigma (1))=(\tau \circ \sigma )(1)} のように書き、時によって合成の記号「∘ 」を省略し σ の後に τ を行う置換を τσ で表した。一般に置換は交換可能ではないので置換の順序には注意が必要である。 二行記法の下の行だけを書くのが一行記法[訳語疑問点]であり、先ほどの例であげた置換は一行記法だと 25431 で表される(成分が複数の文字、例えば二桁の数で表されるような場合には、成分の間にコンマを入れるのが典型的である)。 第三の記法として置換の巡回置換表現(英語版)は、置換を続けて施す効果に焦点を当てたものになっている。これは、置換を(少なくとも二つの元を持つ)軌道に対応する巡回置換の積として表す方法である。相異なる軌道は互いに素(交わりを持たない)から、感覚的には「互いに素な巡回置換に分解する」方法とも言える。このような記法を得るには、以下のようにする。まず S の元 x を σ(x) ≠ x なるようにとり、σ を繰り返し施して得られる像の列 (x σ(x) σ(σ(x)) …) を、像として x が現れるまで続ける。こうして書き下された値の集合は σ に関して x の属する軌道であり、得られた列はこの軌道に対応する σ の巡回置換成分の括弧書き記法になる。この後、既に書き下された軌道に属さない S の元 y があればそれを取って σ(y) ≠ y であるならば、同様にして対応する巡回置換成分が得られるから、以下これを繰り返して、S の任意の元が何れかの巡回置換に属するかさもなくば σ の不動点となるまで続ける。この手続きにおいて、新しい巡回置換を作るための始点とする元の取り方は一通りとは限らないから、一つの置換に対する巡回置換表示は、一般には複数存在する。例えば、やはり先と同じ例で言えば [ 1 2 3 4 5 2 5 4 3 1 ] = [ 1 2 5 ] [ 3 4 ] = [ 3 4 ] [ 1 2 5 ] = [ 3 4 ] [ 5 1 2 ] {\displaystyle {\begin{bmatrix}1&2&3&4&5\\2&5&4&3&1\end{bmatrix}}={\begin{bmatrix}1&2&5\end{bmatrix}}{\begin{bmatrix}3&4\end{bmatrix}}={\begin{bmatrix}3&4\end{bmatrix}}{\begin{bmatrix}1&2&5\end{bmatrix}}={\begin{bmatrix}3&4\end{bmatrix}}{\begin{bmatrix}5&1&2\end{bmatrix}}} のような表示が可能である。σ の各巡回置換成分 (x1 x2 … xl) はそれ自身が置換を表しており、具体的にはこの軌道上で σ と同じく i < l のとき xi を xi+1 に写し、xl を x1) に写す一方、この軌道に属さない S の元は何れも動かさない。位数が l であるような軌道は、長さ l の巡回置換と呼ばれる。σ の相異なる軌道は定義により交わりを持たないから、それらに対応する巡回置換が可換であることは容易に分かり、σ はそれらの巡回置換の(施す順番を問わない)積に表される。従って、置換の巡回置換表現に現れる巡回置換の連結は置換の合成として解釈できるので、それを以って置換の「分解」と称する。分解に現れる巡回置換の順番を並べ替える以外に、σ を互いに疎な軌道を持つ巡回置換(σ と無関係な巡回置換も含めて)の積に書く方法はないので、そういう意味で巡回置換分解は一意的である。置換の巡回置換表現が一意的でない部分として、個々の巡回置換の表し方が一通りでないことが挙げられる。例えば上の例でも (5 1 2) は (1 2 5) と書いても同じ(だが (5 2 1) は異なる置換)である。 位数 1 の軌道(つまり σ の不動点 x ∈ S)は対応する巡回置換を持たない。なぜならそのような置換は x 同様に x 以外の S の元を不動にする、言い換えれば恒等変換になり、x とは無関係になるからである。σ が x を不動にすることを強調するために、σ の巡回置換表示に (x) を含めることは可能である(し、循環と不動点(英語版)で述べるように組合せ論ではその方が標準的でさえある)けれども、これは σ の分解における(群論的)因子には対応しない。「巡回置換」の概念に恒等置換も含めるならば、互いに素な巡回置換への置換の分解の(因子の順番を除く)一意性は失われる。恒等置換の互いに素な巡回置換への分解は空積、つまりその巡回置換表示は空となり、e などの別な記号を宛がうのが通例である。 長さ 2 の巡回置換は互換と呼ばれ、二つの元をただ入れ替えるだけの置換である。
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記法について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/05 15:32 UTC 版)
特殊函数論でしばしば用いられるポッホハマー記号は、下降階乗冪を (x)n で、上昇階乗冪を x(n) あるいは (x)(n) で表す。また、(x)±n と書くこともある。 Graham, Knuth & Patashnik (1988) による、組合せ論でしばしば用いられる記号法では xn が下降階乗冪、xn が上昇階乗冪を表す。 組合せ論における k-順列の総数 nPk = P(n, k) は下降階乗冪(n の下降 k-乗)である。 ( x ) n = ( x ) n − = x n _ = ∏ k = 1 n ( x − k + 1 ) , {\displaystyle (x)_{n}=(x)_{n}^{-}=x^{\underline {n}}=\prod _{k=1}^{n}(x-k+1),} ( x ) ( n ) = ( x ) n + = x n ¯ = ∏ k = 1 n ( x + k − 1 ) . {\displaystyle (x)^{(n)}=(x)_{n}^{+}=x^{\overline {n}}=\prod _{k=1}^{n}(x+k-1).} また、自然数 n, k に対して ( n ) k = n k _ = n P k = n ! ( n − k ) ! , {\displaystyle (n)_{k}=n^{\underline {k}}={}_{n}P_{k}={\frac {n!}{(n-k)!}},} n ( k ) = n k ¯ = ( n + k − 1 ) ! ( n − 1 ) ! {\displaystyle n^{(k)}=n^{\overline {k}}={\frac {(n+k-1)!}{(n-1)!}}} と書くことができる。ここで感嘆符 "!" は階乗を表す。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/24 08:31 UTC 版)
直積は添字集合 I を伴う集合族 {Ai : i ∈ I} に対して定められるから、∏ni=1 Ai や ∏i∈I Ai あるいは A1 × ⋯ × An のように添字の動く範囲を明示するのが正確であるが、添字集合が明らかで誤解の虞のない場合にはしばしば省略した記法が用いられ、例えば ∏ Ai, ∏i Ai あるいは ⨉ Ai のように書かれる。特に A×⋯×A(同じ A の n 個のコピーの直積)は An, A×n, n⨉A などと書かれる。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/19 10:05 UTC 版)
テンソル積空間 V ⊗ W の元はしばしばテンソルと呼ばれる(ただし、テンソルという用語はこれと関連のあるさまざまな概念に対しても用いられる)。v ∈ V と w ∈ W に対し、(v, w) の属する同値類を v ⊗ w と書いて v と w のテンソル積と呼ぶ。物理学や工学では、記号 "⊗" を二項積(直積)に対して用いるが、得られる二項積 v ⊗ w は同値類としての v ⊗ w を表現する標準的な方法の一つである。V ⊗ W の元のうち v ⊗ w の形に書けるものは、基本テンソルあるいは単純テンソル(英語版)と呼ばれる。一般に、テンソル積空間の元は単純テンソルだけでなく、それらの有限線型結合も含まれる。例えば、v1, v2 が線型独立かつ w1, w2 が線型独立のとき v1 ⊗ w1 + v2 ⊗ w2 は単純テンソルに書くことはできない。テンソル積空間の元に対し、それを書き表すのに必要な単純テンソルの数を、テンソルの階数という(テンソルの次数と混同してはならない)。線型写像や行列を (1,1)-型テンソルと看做したときの、テンソルの階数は行列の階数の概念に一致する。
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記法について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/21 00:43 UTC 版)
信号処理において、u(t) のヒルベルト変換は一般的に ^u(t) と書かれる。しかし、数学においてこの記法は、広く一般に u(t) のフーリエ変換を表すものとして既に用いられている。稀に、ヒルベルト変換が ~u(t) と書かれているかもしれない。さらにいえば、本項で定義したのとは符号が逆のものをヒルベルト変換と定義する文献も多い。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/06 19:06 UTC 版)
同じ函数を表す記号だが、表記にはいくつかバリエーションがある。 x ( n ) {\displaystyle x^{(n)}} : 組合せ論で使用 ( x , n ) , ( x ) n {\displaystyle (x,n),\,(x)_{n}} : 解析学、特殊函数論で使用 ( x n ) {\displaystyle (x^{n})} : (その他の記法) 特殊函数論では (x)n を昇冪 ( x ) n = x ( x + 1 ) ( x + 2 ) ⋯ ( x + n − 1 ) = ( x + n − 1 ) ! ( x − 1 ) ! {\displaystyle (x)_{n}=x(x+1)(x+2)\cdots (x+n-1)={\frac {(x+n-1)!}{(x-1)!}}} を表すのに用いるが、組合せ論では (x)n を降冪 ( x ) n = x ( x − 1 ) ( x − 2 ) ⋯ ( x − n + 1 ) = x ! ( x − n ) ! {\displaystyle (x)_{n}=x(x-1)(x-2)\cdots (x-n+1)={\frac {x!}{(x-n)!}}} . として用いる。混乱を避けるため、昇冪を (x)n, 降冪を (x)n でそれぞれ表すこともよく行われる。さらに Graham, Knuth & Patashnik (1988) は全く別の冪乗に似た記号を用いる。 差分学における降冪は微分学における冪の類似対応物である。
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記法について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/26 03:07 UTC 版)
テンソル場の記法はテンソル空間の記法と似ていて紛らわしいことがある。つまり、接束 TM = T(M) は多様体 M 上の (1,0)-テンソル場(即ちベクトル場)全体の成す像空間であることを強調するために T 0 1 ( M ) = T ( M ) = T M {\displaystyle T_{0}^{1}(M)=T(M)=TM} と書かれることもある。これをテンソル空間の場合の非常によく似た記法 T 0 1 ( V ) {\displaystyle T_{0}^{1}(V)} と混同しないようにしたい。後者はテンソル空間が一つしかないが、前者では多様体 M の各点に対してテンソル空間が定義される。 M 上の無限回微分可能テンソル場全体の成す集合を表すのに筆記体の T を使って書くことがあるが、 T n m ( M ) {\displaystyle {\mathcal {T}}_{n}^{m}(M)} を M 上の無限回微分可能 (m,n)-テンソル束の切断全体の成す空間とすれば、テンソル場はこの集合の一つの元である。
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記法について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 13:51 UTC 版)
初等組合せ論において、n 個の元から k-個を選んで得られる順列の総数を表すのにいくつか異なる記号、例えば nPk, nPk, Pn,k, P(n,k) などが用いられる(同様の記法で "P" を "C" に代えたものは n-元集合の k-組合せの総数を表す)。k ≤ n のとき、その値は積 n × (n − 1) × (n − 2) × … × (n − k + 1) によって表される。一方、k > n のとき(上記の積は定義されないにも拘らず)k-順列の総数 nPk は単に 0 と定められる。 この記法を、初等組合せ論とは別な文脈で k-順列を考える場合に用いることは稀であるが、この数を扱う様々な状況において、適当な記法が用いられる。上記の積に関して、n が非負整数でないものとしても積自体は定義可能で、組合せ論の外で重要な役割を持つ。この場合、上記の積はポッホハマー記号 (n)k あるいは、k-次下降階乗冪 nk で表される(呼び方や記法の詳細はポッホハマー記号の項へ譲る)。
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記法について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/19 04:41 UTC 版)
詳細は「微分の記法」を参照 関数 f(x) の導関数や高階導関数を表す記法には次のようなものがある。 また、y = f(x) とおいて、下記の記法における f を y で置き換えた記法も用いられる。 導関数や高階導関数を表す記法導関数2階導関数3階導関数n 階導関数ラグランジュの記法f′ f″ f′′′ f(n) ライプニッツの記法 d f d x {\displaystyle {\frac {df}{dx}}} d 2 f d x 2 {\displaystyle {\frac {d^{2}f}{dx^{2}}}} または d 2 d x 2 f {\displaystyle {\frac {d^{2}}{dx^{2}}}f} d 3 f d x 3 {\displaystyle {\frac {d^{3}f}{dx^{3}}}} または d 3 d x 3 f {\displaystyle {\frac {d^{3}}{dx^{3}}}f} d n f d x n {\displaystyle {\frac {d^{n}f}{dx^{n}}}} または d n d x n f {\displaystyle {\frac {d^{n}}{dx^{n}}}f} ニュートンの記法 f ˙ {\displaystyle {\dot {f}}} f ¨ {\displaystyle {\ddot {f}}} f . . . {\displaystyle {\overset {...}{f}}} (通常使われない) ルイ・アーボガスト(英語版)の記法Df または Dxf D2f または D x 2 f {\displaystyle D_{x}^{2}f} D3f または D x 3 f {\displaystyle D_{x}^{3}f} Dnf または D x n f {\displaystyle D_{x}^{n}f}
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