行列による記法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/17 21:09 UTC 版)
まず、本式の表記法である『行列による記法』について説明する。『行列による記法』は『行列による表記法』、『行列表記法』等とも言われる。ある結晶表面の『理想表面の結晶軸』が b 1 → , b 2 → {\displaystyle {\vec {{b}_{1}}},{\vec {{b}_{2}}}} であり、その表面自身(つまり現実の表面)の結晶軸が c 1 → , c 2 → {\displaystyle {\vec {{c}_{1}}},{\vec {{c}_{2}}}} だったとする。結晶軸の定義から言うまでもないが、結晶軸は、理想表面、実表面それぞれのブラベー格子に対応して、標準的に定められたルールに従って選ぶものとする。このとき、これらのベクトル同士の変換は、必ず関係式“(1)”の形で書ける。つまり“(1)”の関係を満たすような係数 k 11 , k 12 , k 21 , k 22 {\displaystyle {k}_{11},{k}_{12},{k}_{21},{k}_{22}} が、必ず一意的に存在する。 { c 1 → = k 11 b 1 → + k 12 b 2 → c 2 → = k 21 b 1 → + k 22 b 2 → {\displaystyle \left\{{\begin{matrix}{\vec {{c}_{1}}}={k}_{11}{\vec {{b}_{1}}}+{k}_{12}{\vec {{b}_{2}}}\\{\vec {{c}_{2}}}={k}_{21}{\vec {{b}_{1}}}+{k}_{22}{\vec {{b}_{2}}}\\\end{matrix}}\right.} (1) 式"(1)"を形式的に行列を用いて表記すると式"(2)"となる。 ( c 1 → c 2 → ) = ( k 11 k 12 k 21 k 22 ) ( b 1 → b 2 → ) {\displaystyle \left({\begin{matrix}{\vec {{c}_{1}}}\\{\vec {{c}_{2}}}\\\end{matrix}}\right)=\left({\begin{matrix}{k}_{11}&{k}_{12}\\{k}_{21}&{k}_{22}\\\end{matrix}}\right)\left({\begin{matrix}{\vec {{b}_{1}}}\\{\vec {{b}_{2}}}\\\end{matrix}}\right)} (2) 式”(2)”の係数行列 ( k 11 k 12 k 21 k 22 ) {\displaystyle \left({\begin{matrix}{k}_{11}&{k}_{12}\\{k}_{21}&{k}_{22}\\\end{matrix}}\right)} は、結晶軸同士の変換を完全に特徴付けている。そのため、この行列を用いてこの表面の並進対称性を『この表面は ( k 11 k 12 k 21 k 22 ) {\displaystyle \left({\begin{matrix}{k}_{11}&{k}_{12}\\{k}_{21}&{k}_{22}\\\end{matrix}}\right)} 表面である』という言い方で記述する。この方法で結晶表面の周期構造(並進対対称性)を表記するのが『行列による表記法』である。 参考までに、この行列は線形代数学でいうところの『基底の変換行列』(基底の取替え b 1 → , b 2 → ↦ c 1 → , c 2 → {\displaystyle {\vec {{b}_{1}}},{\vec {{b}_{2}}}\mapsto {\vec {{c}_{1}}},{\vec {{c}_{2}}}} )の行列)とは、異なった行列である。 ここでいう基底とは線形代数でいうところの基底である。この基底という言葉は英語のBasisという単語の訳だが、結晶学ではBasisとは、基本構造のことを指す。
※この「行列による記法」の解説は、「ウッドの記法」の解説の一部です。
「行列による記法」を含む「ウッドの記法」の記事については、「ウッドの記法」の概要を参照ください。
- 行列による記法のページへのリンク