著作物の類型
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 23:22 UTC 版)
「著作権法 (アメリカ合衆国)」の記事における「著作物の類型」の解説
米国著作権法が定める著作物とは (1)「言語著作物」、(2)「音楽著作物」(これに伴う歌詞を含む)、(3)「演劇著作物」(これに伴う音楽を含む)、(4)「無言劇および舞踊の著作物」、(5)「絵画、図形および彫刻の著作物」、(6)「映画およびその他の視聴覚著作物」、(7)「録音物」、(8)「建築著作物」の8種に分類されているが、例示でありこれらに限らないと記されている (第102条) また、原著作物を活用した「編集著作物」(集合著作物を含む) と「二次的著作物」(別名: 派生的著作物) も法の保護の対象となる。編集著作物とは、既存の素材またはデータを選択し、整理しまたは配列し、これらを収集し編成して作られた著作物である。二次的著作物とは、原著作物を用いて、翻訳、編曲、脚色、映画化、美術複製、改訂するなどして創作された作品を指す (第102条)。これらの編集ないし二次的著作物と、その素材となった原著作物の著作権は別個に存在する (第103条)。仮に編集著作物の素材に創作性がなく著作権で保護されていなかったとしても、素材の組み合わせ・整理の方法によって創作性が認められれば、編集著作物単体で著作権が発生する。 どこまでが著作物なのか (1) 言語著作物 第101条の定義によると、言葉、数字、数学的な記号、符号などの著作物を指す。ただし、楽譜は符号だが音楽著作物に、演劇脚本は言葉だが演劇著作物に分類される。また判例上は、言語著作物に登場するキャラクターは著作物に該当しないと解されている。キャラクターの保護を巡る裁判としては、1954年の第9巡回区控訴裁「ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ対CBS裁判」(サム・スペード判決) が知られている。さらに米国では、言語著作物の題名も著作物に該当しないと判例で解されており、題名の保護を訴える場合は不正競争防止法など、別の法的根拠を求めることになる。しかしフランス著作権法のように、言語著作物に限らずあらゆる著作物の題名も、創作性があれば著作権保護が与えられると明文化されている国もある (L112条-4)。 コンピュータ・プログラムも一部はこの言語著作物に含まれている。1980年制定の著作権法改正で、第101条 (各種用語の定義) にコンピュータ・プログラムが追加されたほか、第117条でコンピュータ・プログラムの権利制限が追加規定された。また、1983年の第3巡回区控訴裁による「アップルコンピュータ対フランクリンコンピュータ裁判」を始めとする判例によって、コンピュータ・プログラムとデータベースの著作権が保護されるようになった。 (4) 無言劇および舞踊の著作物 (2) 音楽著作物 - (4) 無言劇および舞踊の著作物に関し、第101条で定義は示されていない。(4) については、言葉を使わず動きとジェスチャーで表現する演劇全般、および観客の前でのダンサーの動きを表現した記録や表記だと解されている。しかし、社交ダンスのステップのように、形式が決まっているものについては著作物として認められていない。 (5) 絵画、図形および彫刻の著作物 第101条の定義によると、純粋な美術品だけでなく応用美術、写真や地図、模型、建築設計図などもこれに含まれる。ただし、単純な実用品 (useful article) のデザインは著作物として認められていない。これは実用的なデザインは著作権ではなく、意匠特許権 (米国特許法第171条) で守られるべきと考えられているからである。両者の線引きは、美しさの有無ではなく、美的「表現」なのか、デザインの「新たな発明」なのかの違いにある。 しかしながら、実用的・機能的な日用品に芸術的・審美的なデザインが施されている商材が市場に多く出回っており、著作権法上でたびたび問題となっている。世界的には実用品デザインの著作権保護に対するアプローチは以下の3パターンに分かれる。実用品も他の著作物と同様に保護に含める -- フランスなど 実用品も一部保護に含めるものの、他の著作物よりも保護要件の水準を高く設定する -- ドイツなど 実用品は意匠法など別の法律で保護する、あるいは著作権法と二重で保護する -- 米国、過去のイタリアなど 実用品デザインを巡る判例として、ダンサー像がデザインされた卓上ランプに関する「メイザー対ステイン裁判」、およびチアリーディングのユニフォーム製造業同士で争った「スター・アスレティカ対ヴァーシティ・ブランズ裁判」も参照のこと。 (6) 映画およびその他の視聴覚著作物 映画やテレビ番組だけでなく、ビデオゲームも一部は視聴覚著作物として分類される。ビデオゲームはプログラミングされているため、そのソースコードやオブジェクトコードは (1) 言語著作物に分類される。そしてゲーム画面の個々のグラフィック要素は著作権保護の対象とはならないが、個々のグラフィック要素が互いに関係し、音響効果も相まって創作性が発生すれば、ゲーム全体 (編集物) として (6) 視聴覚著作物と判定される。これに関するリーディング・ケースとして1992年連邦控訴裁「アタリゲームズ対オマーン裁判」も参照のこと。 (7) 録音物 第101条では、一連の音楽、会話その他音声の著作物だと定義されている。ただし、映画などの視聴覚著作物に含まれているセリフなどは除く。音楽レコードについては録音著作物に該当するが、アーティストである実演家と、レコード会社であるレコード製作者の共同著作物と考えられているため、大陸法諸国の著作権法と異なり、実演家やレコード製作者は著作隣接権者として捉えられていない。 (8) 建築著作物 建築の設計図は (5) 絵画、図形および彫刻の著作物に含まれるが、ベルヌ条約加盟以前は建築物そのものは著作物として保護されていなかった。これは実用的なデザインとみなされていたからである。1990年の改正法により、建築著作物も著作権保護が認められるようになった。 編集著作物 編集著作物 (compilations) には集合著作物 (collective works) を含む。集合著作物の例は定期刊行物、選集、百科事典などが挙げられる。また、日本ではデータベースは編集著作物ではなく別個の著作物としているが、米国およびその他諸外国はデータベースを編集著作物としている。これに関しては、集合著作物の一種である新聞や雑誌に寄稿された記事が、その後デジタル化されて他社オンラインデータベースに無断・無償で転載された「ニューヨーク・タイムズ他対タシーニ裁判」(2001年最高裁判決) などが存在する。 「データベース権」も参照 二次的著作物 二次的著作物の中には、外形的に明らかな翻訳や映画化などもあるが、美術複製の著作物性は曖昧であり、より厳格な創作性を求めていることから過去の判決も多い。既存の芸術作品を精緻に複製しただけでは創作性が認められず、複製を行った制作者に独自の創作判断があったかが問われることになる。名画を元に制作された版画を巡る「アルフレッド・ベル対カタルダ・ファインアーツ裁判」、およびディズニーのキャラクターを模した玩具のメーカー同士で争った「ダーラム対トミー裁判」も参照のこと。
※この「著作物の類型」の解説は、「著作権法 (アメリカ合衆国)」の解説の一部です。
「著作物の類型」を含む「著作権法 (アメリカ合衆国)」の記事については、「著作権法 (アメリカ合衆国)」の概要を参照ください。
- 著作物の類型のページへのリンク