著作物の合法的な利用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/10 07:42 UTC 版)
「著作権法 (フランス)」の記事における「著作物の合法的な利用」の解説
仮に著作権の保護期間中であっても、公表済の著作物を著作権者に無断で利用しても、以下の条件を満たす場合は著作権侵害にあたらない(L122条-5)。 私的な実演 -- 私的な空間内で、私用かつ非営利で行われる実演 私的な複製 -- 私的用途に限定され、かつ集団に配布・展示するなどを意図しない場合に限る 利用に際して著作者の氏名および出所を明示する必要がある場合:要約・短い引用 -- 著作物の批評、論評、教育、学術、報道を目的とした場合に限る プレスレビュー 演説の報道 -- 立法・行政・司法機関の各種会議や学会、政治的儀式といった公共性の高い場における演説内容を、報道機関やテレビ放送がニュースとして報道する行為(報道する発言が全量であっても構わない) オークション -- グラフィックアートや造形美術作品の全部または一部複製し、公的競売に用いられるカタログに収録して、競売前に公衆に頒布する行為 教育・研究 -- 教育・研究目的の例示のために行う、著作物の複製や演奏・上演。ただし教育現場であっても娯楽活動の目的は不可。想定対象者は学生、教員および研究者など教育・研究活動に直接関与する主体に限る。また、演奏・上演や複製によって収益が発生してはならない。第三者による著作物の利用に際し、複製権の譲渡に不利益を生じることなく、また利用料が著作者に支払われなければならない。ただしこの支払条件は教育目的の著作物、言語著作物のデジタル版、ないし楽譜には適用されない パロディ等 -- 著作物を活用したパロディ、作風の模倣、風刺人物画の創作(ただし当該分野の慣習に基づく) データベース -- 契約に基づき、データベースの中身にアクセスが必要な場合 技術プロセス -- 技術的な目的で、一時的に著作物の複製が必要な場合(インターネット・ブラウザのキャッシュなど) 障害者福祉 -- 一定の条件に基づく、図書館、公文書館、資料館、マルチメディア文化施設などによる著作物の複製ないし演奏・上演 保存・閲覧 -- 美術館や公文書館が著作物の保存、あるいは私的な調査・研究のため施設内での閲覧または専用端末での閲覧目的であり、その行為に営利性が認められない限りにおいて行われる複製 直接報道 -- グラフィックアート、造形美術ないし建築作品の一部または全部を使った文書化・映像化・デジタル化による報道(ただし利用量・質や目的妥当性が考慮される) フェアユース導入論 フランスを含む欧州各国では、米国著作権法のようなフェアユースの法理による、一般的な著作権制限の条項に対して否定的な立場をとっている。したがって、フランスでは上述のとおり、著作権者の権利を制限し、利用者の自由な著作物の利用を認める条件を個別具体的に列記している。この方針は、2001年のEU情報社会指令に起因する。情報社会指令では、制限条項を21条件に限定しているだけでなく、EU加盟国の国内法でこの21条件以外を追加規定することを禁じている。さらに2019年に成立したDSM著作権指令によって、制限条項を3条件追加した。 フェアユースの法理を採用するかは、法的な安定性と柔軟性のどちらを重視するかに依存する。フランスのように限定列挙すれば、著作権者にとっては著作財産権の価値が高まると同時に、著作物の創作のための投資と回収の見通しが立ちやすくなる。一方で米国のように一般的な基準を設け、個別判断は裁判所に任せることで、著作物の内容や流通経路といった社会的・技術的な変化にも対応しやすくなるメリットが考えられる。実際、フェアユースを導入している米国よりも、導入していない欧州の方が、インターネットを通じた著作権侵害の件数が多いとの指摘がなされている(2013年時点での比較)。 たとえば、Googleサジェスト機能(オートコンプリート機能)が著作権法上の複製権侵害に該当するかについて、欧州各国の司法判断は分かれている。楽曲を例にとると、一般ユーザがGoogle検索で「共有サイト、大量アップロード、高速シェア」などとキーワード入力すると、違法なデジタル楽曲シェアサイトが検索ヒットすることから、Googleが著作権侵害サイトにユーザを誘導してしまうおそれがある。これに対し、フランスではパリ大審裁がGoogle有利の判決を2011年5月に出している。これは、サジェストされた検索結果が必ずしも違法サイトに限らないとの理由からである。
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