著作物の保護要件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/10 07:42 UTC 版)
「著作権法 (フランス)」の記事における「著作物の保護要件」の解説
著作権はジャンル、表現形式、価値または用途を問わず、あらゆる精神的な著作物を保護すると規定されている(L112条-1)。また著作物が未公表や未完成であったとしても、著作者の構想の実現という事実だけをもって、著作物は創作されたと見なされる(L111条-2)。さらに、著作物を当局に登録する、あるいは著作権マーク「©」(マルC、Copyrightの意)や「℗」(マルP、レコードのPhonogramの意)などを表示するといった手続も任意であり、これらを怠ったとしても著作権保護される。つまり、著作者による知的な創作活動によって(創作性)、何らかの表現がなされていること(表現性)が、著作権保護の要件として挙げられる。 アイディア・表現二分論 したがって、単なるアイディアや発見は創作性や表現性の要件を満たさないため、著作権の保護外となる(これを一般的な著作権法上では「アイディア・表現二分論」と呼ぶ)。ただし、どこまでがアイディアそのもので、どこからがその表現なのか、境界線が曖昧な創作物も存在する。たとえば、フランス人芸術家マルセル・デュシャンの『L.H.O.O.Q.』は、名画『モナリザ』に鉛筆で髭をつけ加えた作品である。また、男性用の小便器に署名だけを施した『泉』という作品もある。髭や署名をつけ加えること自体はアイディアに過ぎないが、このような現代美術のコンセプチュアル・アートに著作性が認められるのか、フランス国内外で議論がなされている。 応用美術・実用品デザイン イアリングやおもちゃ、椅子やランプなどの応用美術・実用品デザインについては、以下のとおり各国で法的保護のアプローチが異なる。実用品も他の著作物と同様に保護対象に含める -- フランスなど 実用品も一部保護に含めるものの、ほかの著作物よりも保護要件の水準を高く設定する -- ドイツなど 実用品は意匠法など別の法律で保護する、あるいは著作権法と二重で保護する -- 米国、過去のイタリアなど コンピュータ・プログラム コンピュータ・プログラムの著作物性については、1986年破毀院の「パショ事件」(英: Pachot case)などがある。フランスでは伝統的に、著作者の精神性が反映された作品を著作物として認めていたが、パショ事件では「知的な操作であり、個人にゆだねられた創作活動」だとして、コンピュータ・プログラムにも著作物性を認めた画期的な判決として知られている。 題名(題号) 著作物が著作者の人格を投映しており、創作性が認められれば、その著作物の題名も著作権保護が与えられ(L112条-4)。しかし、その題名が汎用的で一般的な用語の場合、判例では著作権保護の対象外と判示されており、題名における創作性の具体的な線引きは司法判断に任されている。また、題名は商標登録できる場合があり、このようなケースでは商標権と著作権で二重保護される。 その他 また、法律の条文や裁判所の判決文など、公的機関の作成した著作物は、著作権保護の対象外となるほか、所有者の許可なく行われる壁への落書きアートなど、不法行為によって創作された著作物は著作権保護の対象外となる。 フランスにおける都市アートの法的保護については「fr: Statut juridique de l'art urbain en France」を参照
※この「著作物の保護要件」の解説は、「著作権法 (フランス)」の解説の一部です。
「著作物の保護要件」を含む「著作権法 (フランス)」の記事については、「著作権法 (フランス)」の概要を参照ください。
- 著作物の保護要件のページへのリンク