葉
『ヴォルスンガ・サガ』8 シグムンドと息子シンフィヨトリは、魔法の狼の皮を着て大勢の狩人を殺すが、シンフィヨトリが重傷を負って倒れる。いたちが森から葉を取って来て仲間のいたちの傷口に当て回復させるのを、シグムンドは見る。鴉が葉をくわえて飛んで来るので、シグムンドはその葉をシンフィヨトリの身体に当てて回復させる。
『三枚の蛇の葉』(グリム)KHM16 3つに斬られた蛇の死体に、仲間の蛇が青葉を3枚乗せると、生きかえる。それを見た王が同じようにして死んだ妃を生きかえらせ、また後に王自身も、3枚の青葉のおかげで命を救われる。
『ニーベルンゲンの歌』第15~16歌章 ジーフリト(ジークフリート)は、退治した龍の返り血を全身に浴びて不死身の身体になる。しかし、菩提樹の葉が1枚背中に落ちかかったため、血がかからなかったその部分が、唯一の急所として残る。後に彼は、そこを槍で突かれて死ぬ。
『アエネーイス』(ヴェルギリウス)第6巻 地下の冥界への入口に深い森があり、木々の間に隠れて、黄金の葉をつけた1本の枝がある。冥王の妃プロセルピナへの捧げ物であるこの黄金の1枝がなければ、冥界に入ることができない。アエネーアスが、母神ウェヌスのつかわした2羽の鳩に導かれて黄金の葉を手に入れ、冥界へ降る→〔冥界行〕3。
『最後の一葉』(O・ヘンリー) 肺炎でベッドに臥すジョンジーは、窓外の建物を見て、その壁に這う蔦の葉の数を数える。晩秋の風が次々に葉をはたき落とし、「最後の1枚が落ちたら自分も死ぬのだ」と、ジョンジーは考える。しかし最後に残った一葉は、強い風雨の夜の後も、なお散らずに壁にはりついており、それを知ったジョンジーは生きる気力を取り戻す→〔身代わり〕3b。
『むく鳥のゆめ』(浜田広介) 1枚の枯れ葉が、死んだかあさん鳥の羽音を思わせて懐かしいので、むく鳥の子は、巣の中にあった馬の尾の毛で枯れ葉を枝にくくりつけ、強い風が吹いても散らないようにする。その夜、むく鳥の子は、白い鳥の夢を見て「ああ、おかあさん」と呼ぶ。翌朝見ると枯れ葉には、薄い雪が粉のようにかかっていた。
『今昔物語集』巻27-43 平季武が、川中で産女から渡された赤子を返さずに、館まで抱いて帰る。しかし袖を開いて見ると、そこには木の葉が少々あるだけだった→〔赤ん坊〕4b。
『百物語』(杉浦日向子)其ノ66 少女が、まだ赤ん坊の弟を背負って鎮守様へ行く。枯葉がとめどなく降り、風に巻き上げられて、一瞬、人の姿のように見える。ふと気づくと、背中の弟はたくさんの枯葉に変じていた。
*狐が葉っぱを集め、丸めて赤ん坊を作る→〔狐〕2bの『短夜』(内田百閒)。
『子育て幽霊』(昔話) 日暮れに3日続けて、きれいな女が飴屋へ飴を買いに来る。女は1文銭を置いて帰って行くが、夜が明けると1文銭は櫁(しきみ)の葉になっている。女は幽霊であった(福井県武生市白崎町)→〔土〕4。
『銭は木の葉』(昔話) 旅の人形遣いが寺に招かれ、大勢集まった住職たちに人形芝居を見せて、多くの銭を得る。人形遣いはその夜、寺に泊まるが、翌朝目覚めると野原に寝ており、銭はすべて木の葉になっていた。狸に化かされたのだった(福井県小浜市下田)。
*銭が銀杏(いちょう)の葉になった→〔狸〕8の『まめだ』(落語)。
*銭が紙銭になった→〔紙銭〕4の『広異記』18「紙銭の買物」。
*黄金のどんぐりが茶色のどんぐりになった→〔裁判〕1aの『どんぐりと山猫』(宮沢賢治)。
*樫の葉を揉んで金貨を作る→〔悪魔〕7の『イワンのばか』(トルストイ)。
『狐のお産』(昔話) 夜、知らぬ男が「女房が難産で困っています」と、医者を呼びに来る。医者は無事にお産をさせてやり、紙に包んだ薬礼(やくれい)をもらったが、家に帰ってから見ると柴の葉だった。「狐に騙された」と、医者は怒った。1週間後に、この前の男が来て、「先日は柴の葉を出して、失礼しました」と詫び、本物のお札(さつ)を置いて行った。「『狐につままれた』とはこのことだ」と、医者は首をかしげる。後に聞いたところでは、狐は、街道を通る人を騙してお金を盗(と)り、それを医者の所へ持って来たらしかった(広島県庄原市)。
*狐が本物の貨幣を持って来ることもある→〔変身〕9の『手袋を買いに』(新美南吉)。
『ノートル=ダム・ド・パリ』(ユゴー)第7編7~第8編3 フェビュス大尉はジプシー娘エスメラルダとの逢引きのため、あばら家を借り、そこの老女に金貨1枚を与える。老女は金貨を机の引き出しにしまう。子供が金貨を盗み、代わりに枯れ葉を1枚入れておく。その後エスメラルダは、無実の罪で裁判にかけられる。老女が「金貨が枯れ葉に変わった」と証言するので、エスメラルダは魔女と見なされる。
『捜神記』巻6-27(通巻128話) 前漢の第8代昭帝の時、上林苑の柳がいったん折れて倒れた後、またもとのように立ち、枝葉が生じた。虫がその葉を喰って「公孫病已立(公孫病已=第9代宣帝が即位する)との文字を表した。
『平家物語』巻2「卒都婆流」 鬼界が島の康頼入道と丹波少将が、熊野三所権現で通夜した夜の夢に、沖からの風が2枚の木の葉を2人の袂に吹きかけた。2枚の葉には、「ちはやふる神に祈りのしるければなどか都へ帰らざるべき」の歌が虫喰いになっていた〔*延慶本『平家物語』巻2の類話は、夢でなく現実のこととするなど小異がある〕。
『半七捕物帳』(岡本綺堂)「かむろ蛇」 江戸にコレラが流行した時、「軒に八つ手の葉をつるせば疫病神を払える」と言われた。ところが、煙草商関口屋の軒につるした葉に、「おそでしぬ」という虫喰いの文字があらわれた。それは、関口屋の1人娘お袖を殺そうと計画する者が、超自然的なたたりでお袖が死ぬように見せかけるため、薬を用いて葉に文字を記したのだった。
★6.片葉。
片葉の葦の伝説 戦国時代。敵に攻められて川越の城が落ち、城主の姫君は侍女とともに脱出する。2人は近くの河に落ち、岸辺の葦の葉にすがりつく。しかし葦の葉は皆するすると裂けてしまい、とうとう2人は溺れ死んだ。その怨みゆえ、城址を流れる河に生える葦は、すべて片葉である(埼玉県川越市)。
『酉陽雑俎』巻4-203 河陽城の南、百姓・王氏の荘園内の小池のそばに、大きな柳が数株あった。開成(836~840)の末年、柳の葉が池に落ち、葉と同じほどの大きさの魚に変わった。食べてみたら、味がなかった。冬になり、同家に訴訟事件が起きた。
柳葉魚(ししゃも)の由来の伝説 飢餓の人間を救うためにフクロウの女神が天降り、柳の葉(シュシュハム)と、神の魂(カムイウマツ)を、鵡川(むがわ)に流す。それらは合わさって柳葉魚(ししゃも)になった。その時、柳の葉の一部が遊楽部川に落ちたが、魂がないために腐りかけた。川の神が急いで魂を入れたので、遊楽部川にも柳葉魚が住むようになった(アイヌの伝説。北海道胆振勇払郡鵡川町)。
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