現代の政治哲学・規範的政治理論とは? わかりやすく解説

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現代の政治哲学・規範的政治理論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 06:20 UTC 版)

政治学史」の記事における「現代の政治哲学・規範的政治理論」の解説

1920年代いわゆるシカゴ学派から始まった政治学科学化の流れは、1950年代行動科学政治学において一つ頂点達したこのように科学的実証的な政治学脚光を浴びる一方で規範的な理論或いは伝統的な政治哲学対す関心失われていった政治学においては政治哲学死滅」が語られ政治哲学過去のものという議論すら展開されていた。そのような状況から人々が再び政治哲学注目したのは1970年代のことであり、その嚆矢となったのはロールズ『正義論』と言われてきた。しかし、それ以前にもロールズ以降理論的展開に劣らぬ重要性をもった理論提起が行われている。むしろ政治哲学対す関心復活は、1940年代以降展開され政治哲学復権向けた様々な研究者活動帰結と言えるかもしれない。 特に現代政治学発展大きな影響力与えてきたアメリカ政治学における政治哲学復権は、ナチス政権下ドイツから亡命したユダヤ人研究者によって開始されといえるアーレント全体主義に関する考察は、その代表例である。アーレント議論亡命ユダヤ人としての立場から、全体主義思想的原因西洋政治哲学伝統中に探るものであったこのような論点立脚したアーレント研究は、プラトンからカント及びマルクスまでに及んだ。その一つ成果が『全体主義の起源』(The Origins of Totalitarianism, 1951)である。また彼女の政治哲学一つ到達点であり最も重要な著作として、『人間の条件』The Human Condition, 1958)が挙げられるもう一つ代表例シュトラウスである。シュトラウス行動科学政治学などの科学的アプローチにおける「事実価値峻別」を問題にした、科学的な政治学対する最も鋭い批判者であったシュトラウスにとって事実価値分かちがたく結びついたものであり、従って政治学倫理学不可分である。彼はこのような観点から、政治学倫理学接点である政治哲学復権説いたであった。そこで政治哲学者としてのシュトラウスは、政治学倫理学密接な関わり持っている古典的テキスト読み直し再解釈行った。彼が特に注目したのは、古典古代とりわけ古代ギリシア政治哲学である。古代政治哲学立場立って近代の政治哲学対置させ、古代政治的合理主義再発見したのがシュトラウスである。 保守主義自由主義社会主義並んで西洋とりわけ英米政治哲学における主要な潮流である。この保守主義思想新たな視点から再構築したのが、オークショットであった。オークショットは懐疑主義立場から、合理主義すなわち人間理性により完全性備えた世界社会構築できるという思想批判したその上でオークショットは人間蓄積した経験伝統依存すべきことを説いたこのようなオークショットの立場は、比較初期の論文政治における合理主義』(Rationalism in Politics, 1947)によく現れている。このような観点依拠しつつ、人間行為についての検討通じて伝統重視する中での個人の自由担保或いは自由と秩序両立論ずるのが主著一つである『市民態とは何か』(On Human Conduct, 1975)である。 1960年代から1970年代にかけて規範的な政治理論もしくは政治哲学再び脚光を浴びることとなったその背景には、社会不安これまでの実証的な政治理論社会対す有意性もたない批判されことがある。再び「政治の本来の在り方」や「善い政治或いは正義実現する政治」、「理想政治在り方」という規範を巡る議論が活発となったわけである。こうした状況の中で登場したのがロールズとその著書『正義論』(A Theory of Justice, 1971)であり、ロールズ理論大変なインパクト与えたロールズ理論は、ホッブズ以来社会契約論再構成したものであった一方でロールズこれまでの功利主義パラダイム、すなわち社会構成員各自の満足の総計最大化するよう制度定めることが理想政治であるという考え否定することを狙いとした。彼によると功利主義個人の満足を巡る選択原理そのまま社会選択原理拡張したものであり、そこでは個人間の能力など差異分配問題にされていない。従って、功利主義社会選択原理としては適切さを欠くこととなる。そこでロールズ功利主義代わるものとして提示するのが、「公正としての正義」である。ロールズは「公正としての正義」に適う正義の二原理社会採用する過程を、社会契約論によって説明した自由主義立脚するロールズ自由と平等緊張関係を認識した上で不平等存在前提としつつも自由と平等調和考えた。彼は均等な機会のもと自由競争行いその結果国家再分配により調整し不平等是正する社会をここで描出している。ところで、ロールズいわゆる格差原理厚生経済学社会厚生の定義に大きな影響与えた。最も効用の低い水準にある者の効用大きくすることが社会厚生極大化につながるという定義であり、これをロールズ基準と言うロールズ理論現代自由主義多大な影響与えた一方でロールズ自由主義は実は自由主義伝統から逸脱するものではないかとする批判現れた。その代表格ノージックである。彼の著書アナーキー・国家・ユートピア』(Anarchy, State, and Utopia, 1974)は『正義論』への反論の書として書かれた。ノージックによればロールズ理論実現を図ると国家必要以上機能与えることになる。そのような国家は、個人の自由権利侵害しかねないとするのがノージック主張である。そこで彼はロック社会契約論援用しつつ、ロールズ同様に社会契約論再構成した。まずはじめに自然状態想定し国家が本来どのような理由存在認められるかを考察した国家存在否定すれば、すなわちアナーキー状態では自然状態における個々人権利を守ることは出来ないこのように国家個々人権利擁護するためにその存在認められているのであり、それ以上機能行使すべきではない、もしすれば個人対す権利侵害つながりかねないとするのがノージック理論である。このノージック自由主義現代自由主義理論大きな影響与えた。しかし、これらの思想リバタリアニズム呼ばれ区別されることもある。 ロールズノージックのような広い意味での自由主義思想対抗するのが、コミュニタリアニズム共同体主義)である。これは自由主義基本的に個人主義立脚しているのに対し異を唱えるのである自由主義においては程度の差はあっても善は個人問題である。対してコミュニタリアニズム共通善強調し人間共同体において人格形成を行う中で共通の善を学ぶとする。代表的な論者としてはテイラー、ウォルツァーが挙げられる

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