『正義論』とは? わかりやすく解説

『正義論』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/27 16:06 UTC 版)

ジョン・ロールズ」の記事における「『正義論』」の解説

詳細は「正義論 (ロールズ)」を参照 『正義論』(A Theory of Justice1971年刊)は、人間が守るべき「正義」の根拠探り、その正当性論じたロールズ主著一つ。この著で彼が展開した正義概念は、倫理学政治哲学といった学問領域越えて同時代の人々きわめて広く大きな影響与えることになったそれまで功利主義以外に有力な理論的基盤持ち得なかった規範倫理学の範型となる理論提示し、この書を基点にしてその後政治哲学論争展開したという点で、20世紀倫理学政治哲学代表する著作一つということできよう本書3部構成である。 第1部では、正義論じ理由明示した上で、非個人的な観点から望ましく実行可能な正義原理探究し最終的に彼の考える「正義の二原理」を提出する第2部では、彼の正義論現実社会的制度諸問題適用しその実可能性明らかにしていく。 第3部では、彼の正義概念人間的な思考感情調和しており、「正しさ」と「善さ」とは矛盾するものでないことを説明することを通じて理論的に導出された正義論現実人間的基盤有している様相明らかにしていく。 ここでは第1部彼の論述要旨を示す。 この書でロールズは、それまで倫理学を主に支配してきた功利主義代わる理論として、民主主義支え倫理的価値判断源泉としての正義中心に据えた理論展開することを目指している。彼は正義を「相互利益求め共同冒険的企て」である社会の「諸制度まずもって発揮すべき効能」だと定義した。そして社会活動によって生じ利益分配される必要があるが、その際もっとも妥当で適切な分配仕方を導く社会的取り決め社会正義の諸原理なるとした。 ここで彼は社会契約説を範にとってこの正義原理導出していく。まず正義根拠を、自由かつ合理的な人々が、彼が「原初状態」と名付けた状態におかれる際に合意するであろう原理求めた。この原初態とは、集団の中の構成員彼の言う「無知のヴェール」に覆われた-すなわち自分と他者能力立場に関する知識は全く持っていない-状態である。このような状態で人は、他者対す嫉妬優越感を持つことなく合理的に選択するであろう推測され、また誰しも同じ判断下すことが期待される。そして人は、最悪の状態に陥ることを最大限回避しようとするはずであり(マキシミン・ルール)、その結果次の二つ正義に関する原理導き出されるとした。 第一原理 各人は、平等な基本的諸自由の最も広範な制度枠組み対す対等な権利保持すべきである。ただし最も広範な枠組みといっても他の人びとの諸自由の同様に広範な制度枠組み両立可能なものでなければならない。 Each person has an equal claim to a fully adequate scheme of basic rights and liberties, which scheme is compatible with the same scheme for all; and in this scheme the equal political liberties, and only those liberties, are to be guaranteed their fair value. 第二原理 社会的・経済不平等は、次の二条件を充たすように編成されなければならない ーー(a) そうした不平等各人利益になると無理な予期しうること、かつ (b) 全員開かれている地位職務付帯すること Social and economic inequalities are to satisfy two conditions: first, they are to be attached to positions and offices open to all under conditions of fair equality of opportunity; and second, they are to be to the greatest benefit of the least advantaged members of society. 第一原理自由に関す原理である。彼は他者の自由を侵害しない限りにおいて自由は許容されるべきだと説き基本的自由権利良心の自由信教の自由言論の自由集会の自由などを含む - はあらゆる人に平等に分配されねばならないとした。ただここにおける自由とはいわゆる消極的自由指示している。第二原理(a)は、格差原理とも呼ばれるのである。彼は社会的格差存在そのもの是認しつつも、そこに一定の制度的枠組み設けることが必要と考えこの原理設定した。自由以外の社会的な基本財をどのように分配するかを示すための原理である。(b)機会均等原理呼ばれる。同じ条件下で生じた不平等許容されるというものである。 この正義の二原理は、「原初状態」や「無知のヴェール」といった概念用いた思考実験から導出されている。しかし、この原理が普通の人間正義感覚と比較検討してもなお正当性失わないことという「反照的均衡」という彼の方法論が妥当であること根拠として、この正義の二原理実際的妥当性付与している。

※この「『正義論』」の解説は、「ジョン・ロールズ」の解説の一部です。
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