山車の関連行事
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/09 06:13 UTC 版)
山車の巡行などにともなう行事等は、次の通り行われる。 7月下旬~8月8日まで 山車運行会議 各山車を有する町内にて、山車の頭取以下役員・保存会などの会員や会長・町内会長が集まって、本年の渡御祭における運行等の会議を行い、方針を定める。 山車拠点準備 山車を格納する仮設の車庫を設営したり、拠点となる「事務所」と呼ばれる施設を設ける。「事務所開き」と称する事もある。 仮設の山車車庫は専用の骨組みを組んだテントで作ったり、枠組足場を組んでからブルーシートやビニールシートで囲うなどして作られる。 山車の事務所は町会施設・企業事務所の一部・倉庫などを一時的に借りて使われる事が多い。事務所として使われる場所は、清掃してシート・カーペット・畳床などを敷いたあと、山車人形に使われる頭を祀る仮設の祭壇が設けられる。その際、姥神大神宮に預けていた山車人形の頭も祭壇に移動させる。 お囃子・切り声の練習 事務所が開かれたところで太鼓等一式が用意され、お囃子要員の子ども達による太鼓・横笛・その他鳴り物を使ったお囃子の練習が始まる。 事務所開きに伴って、若衆達を中心とした切り声の練習も行われるようになる。若衆要員はたいていの場合、普段別の仕事に就いている事が多いため、練習は夜に行われる事が多い。 江差町内の各山車の拠点事務所から、この時期の日中・夕方・夜間問わず聞こえてくるお囃子や切り声は、江差の風物詩となっている。 寄付集め 山車の運営にかかる費用として、町内の各戸・各企業を回って寄付を募る。通常は副頭取以上の役職の者が先頭に立って行う事が多い。寄付は山車のほか、姥神大神宮の分も合わせて集められる。 山車出し 各山車が所有する車庫、または展示先の江差山車会館から山車を拠点車庫まで移動させる。 山車のうち、豊年山については車庫が姥神大神宮の前にあり、常時展示を行っている関係でそのまま拠点として使用される。 豊年山車庫 祭りが行われないときには、扉を開いて山車の一般公開もしている。 山車飾り付け 山車本体の清掃、金属部品の磨き、車輪やブレーキ部品などの整備を行った後、人形の飾り付け、山から切り出した依り代の木の据え付けをして、水引・幕・簾・紙垂などを取り付け、電飾用の配線をチェックする目的も兼ねて電球・提灯・行灯・スポットライトなどを取り付ける。 飾り付けや飾り直しは祭の前日にも行われ、悪天候が想定される場合は雨対策用の屋根などを設置することもある。 半纏貸出し 祭の前日頃、山車の参加者に山車が所有する専用の半纏を貸し出す。半纏は時に企業・店舗や一部の家庭で自前の物を所有していることもある。 8月9日 宵宮祭 午前中、各山車が姥神大神宮を目指し、依り代の木への「魂入れ」を行う。神宮の鳥居前に山車を立て、頭取以下役員等が参拝し、玉串奉奠、修祓、撤饌を受け、後に宮司が山車を修祓する。その後に若者頭・若衆を中心とした山車関係者が切り声を奉納する事もある。 「魂入れ」の後は一旦各拠点に戻り、山車参加者が昼食を済ませるなどした後で再び出発し、山車所属の町内を巡行して山車のお披露目をする。近年では同日に行われる八大龍王神八江聖団渡御祭において、上町に在する山車の一部が奉納として八大龍王神八江聖団の境内に集結し、山車を立てて御輿渡御の発輿に立ち会ったり、新地町その他の御輿渡御経路においても山車を立てて、御輿等のお見送りに参加するところもある。 夕方、各山車の頭取とその直近の役員1名が姥神大神宮に集まり、先導山車定めの儀が執り行われる。先導山車は「先山」とも呼ばれ、本祭2日間の山車行列の先頭に立って巡行する、名誉あるものである。先導山車定めでは、各山車の頭取が自分の所属する山車の名を書いた紙を折りたたんだものを用意された三方に入れ、宮司の修祓の後に宮司が三方に御幣を近づけ、御幣に付いた山車の名を書いた紙が最後の1枚になるまで払い落とす事をくり返し、最後まで御幣に付いていた紙に書かれた山車の名をその年の先導山車(先山)とする。 8月10日 神社集結 通常、11:00頃に全山車が姥神大神宮の前に集結し、所定の場所に山車を立てる。先導山車となった山車は、神社に最も近い場所に立てられる。松寳丸は構造の関係上、通常は先山の隣に立てられる事が多い。 姥神大神宮前に集合する先導山車(2017年・政宗山)と松寳丸 祭り囃子コンクール 祭り囃子の伝承を目的として「祭り囃子コンクール」が行われる。最初は神社の前にて各山車が審査員を前に「立て山」を披露し、その後の巡行にて、審査員が各山車の「行き山」のお囃子を見るほか、山車ごとの服装・素行等が良好かどうかも勘案して採点される。 渡御祭(下町巡行) 猿田彦命を中心とした御輿渡御の出立の後、山車の巡行が開始される。昼間はおおむね17:00頃まで、新栄町までの間で行われる。 17:00~18:00頃の間は、山車は新栄町の経路上に置かれ、山車の参加者の夕食・休憩となる。本拠地が近い山車の参加者は本拠地で、逆に遠い山車の参加者は近辺に場所を借りて「宿」と呼ばれる休憩場所を設け、夕食や酒などが提供される。また、この時間に着替え等で一時的に、もしくは昼間の参加のみにとどめて自宅に帰る参加者もいる。 18:00頃に夜の巡行が行われる。新栄町を出発してから愛宕神社参道付近で山車を立て、その先で折り返した後、愛宕町内の商店街で「見せ場」として山車が立てられる。 愛宕町の見せ場 「見せ場」での山車のお披露目の後は順次姥神大神宮に向けて出発する。神社にたどり着く直前には、各山車が用意した一対の高張提灯とその持ち手を先頭に、弓張提灯を持った頭取が続き、その後に同じく弓張提灯を持った役員・若者頭・若衆が列をなして歩き、山車を神社前まで先導した後、所定の場所に山車が立てられる。 姥神大神宮前に集合する山車1 姥神大神宮前に集合する山車2 宿入之儀 各山車のお囃子が奏でられる中で、前述の宿入之儀が執り行われる。宿入之儀では、山車関係者が持つ1対の高張提灯で御輿の通り道が作られる。 宿入之儀の通り道を作る高張提灯の列 解散 宿入之儀の後、神社前に設けられた特設舞台にて、代表する山車の関係者によって切り声が披露されるほか、各種の行事が行われ、その後順次解散となる。 8月11日 神社集結 前日と同じく、神社の前に山車が立てられる。祭り囃子コンクールの表彰式もここで執り行われる。 渡御祭(上町巡行) 御輿の出立に続いて、先山を先頭に前日と逆の順で山車が出発し、巡行が始まる。昼間の巡行は夕方にかけて、茂尻町に至るまで行われる。その後は17:00~18:00頃まで前日と同様の夕食・休憩ののち、夜の巡行に移る。 夜の巡行では本町から新地町の繁華街に至るまでの間、高張提灯・頭取・役員一同による先導をともなう行列が行われ、その間に姥神大神宮祭典協賛実行委員会から各山車とその頭取の紹介が行われる。 新地町集結(見せ場) 円山町で折り返した山車は新地町の繁華街に戻った後に立てられ、「立て山」や山車独自のお囃子を奏でながらのお披露目となる。お披露目がしばらく続いたのち、各山車の頭取が特設ステージ前に集合して「山車引き廻し大賞」の表彰が行われ、江差追分名人の菊地勲氏による切り声披露、町長や実行委員会会長の挨拶と万歳三唱ののちに解散となる。 新地町繁華街での見せ場 山車引き廻し大賞・表彰式 菊地勲氏による切り声披露 魂抜き 新地町での山車解散後、山車はほぼ一斉に姥神大神宮に向かい、神社の前において「魂抜き」の儀が執り行われる。 拠点が神社から遠い場所にある山車は、山車に積んでいた御幣のみを持って、または御幣持ちのお供に太鼓と笛のお囃子要員を付けて姥神大神宮に参じ、「魂抜き」の儀を受ける。 神社では頭取以下役員の参拝を含めた神事を行い、時には切り声を奉納する。 姥神大神宮前・魂抜きにおいての切り声奉納 「魂抜き」の後は各自山車の拠点に帰るが、近年では先山に選ばれた山車が全ての山車の「魂抜き」を見届けるまで神社鳥居の脇(もともと先導山車が立てられる場所)に鎮座するようになった。 8月12日 山車及び拠点片付けなど 山車巡行3日間の日程を終えた山車は、清掃の上で飾り付け・電飾などを外し、人形を解体または撤去をして、山車を所有の車庫に納める。 豊年山、および翌年の祭までの間に江差山車会館に展示が決まった山車については、清掃のみを行って人形や飾りなどはそのまま、もしくは江差山車会館の山車搬入口上部にぶつからないように最低限の人形の解体のみを行った上で入庫する。 山車の入庫後は拠点事務所の片付けも行い、借りていた事務所などを元通りにして再び使えるようにする。仮設車庫の解体も同日、または都合により後日に行われる。 山車で半纏を貸し出ししているところでは、返却の受付もこの日に行われる事が多い。 その他、御祝儀で上がった日本酒などの譲渡も行われる事がある。 8月13日以降 後引き 山車運行の反省会と、山車参加者の労をねぎらう事を目的として、後日「後引き」という催しを開催する所もある。 後引きは山車所属の町によって、飲食店や旅館・ホテル等の宴会場を貸切にして開催する所と、広場や駐車場を借りたり一時的な歩行者天国を行うなどして開催する所がある。
※この「山車の関連行事」の解説は、「姥神大神宮渡御祭」の解説の一部です。
「山車の関連行事」を含む「姥神大神宮渡御祭」の記事については、「姥神大神宮渡御祭」の概要を参照ください。
- 山車の関連行事のページへのリンク