上下分離方式の導入
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新幹線計画を推進したい佐賀・長崎両県は、両市町との協議を継続しつつ、並行して新幹線の工事着手が可能となる方法を模索していたが、2007年(平成19年)12月17日、佐賀・長崎両県とJR九州の話し合いにより「並行在来線を引き続きJR九州が運行する方向」で合意した。合意内容は以下2点。 JR九州による並行在来線の運行は新幹線開業後の20年間とし、21年目以降の扱いについてはその時点で再び三者で協議する(JR九州の当時の社長石原進は21年目以降の扱いは「当社の他の路線と同じ」との見解を示している)。 鉄道設備はJR九州が集中的に整備した上で佐賀・長崎両県へ14億円にて有償売却し、並行在来線に指定された肥前山口 - 諫早間を「上下分離方式」で運営する。 この合意内容について、佐賀県知事の古川康は記者会見で「これは経営分離ではない、JRがそのまま続けるということにほかならない」「今回の案、合意で、鹿島市と江北町の(経営分離に対する)同意は必要なくなった」という趣旨の発言を行った。また、当初は肥前山口 - 諫早間の地上設備はJR九州から無償譲渡される予定を14億円での有償譲渡に変更しているが、これについて佐賀・長崎両県は、第三セクター鉄道設立時に想定していた車両購入費等の開業時の初期費用約16.4億円よりは少ない、と説明した。 一方でこの案については、経営分離への不同意を貫く鹿島市と江北町長を疎外した推進派三者による恣意的な合意であり、「実質的に経営分離ではないのか」との疑問の声が生じており、江北町長等も「経営分離にあたる」として直ちに異議を唱えたが、国土交通省は、2008年(平成20年)1月23日に開催された政府・与党のワーキンググループ会合において、この案は「経営分離にはあたらない」との見解を示した。2008年(平成20年)3月26日には、同省内で新幹線の採算性などについての精査が終わり工事着工が認可された。佐賀・長崎両県は、2007年度内に着工認可が下りることを前提に2007年度補正予算案並びに2008年度本予算案に建設費を計上した。 これに対し、2008年(平成20年)2月24日に投開票された江北町長選挙では、新幹線着工反対を訴えた現職の田中源一が、新幹線容認派で新人の元県職員を破って5選を果たし、「選挙結果が(町民による)最大の意思表示」として町として改めて新幹線の着工に反対を表明した一方で、「着工が決まれば現実的に受け止めなければならない」と現実的対応も示唆した。2008年(平成20年)3月には、佐賀県議会において、民主・社民系会派等の共同提案により長崎新幹線の建設賛否を問う県民投票を実施する条例案が提出されたが、最大会派の自民党・公明党ならびに保守系会派の反対多数で否決された。田中はその後のシンポジウムの席上で「本格着工までは(新幹線建設への)反対を続ける」と明言した。その後、事実上「本格着工」となり建設工事は進んでいるが、@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}田中は後述の通り機会を見ては建設中止もしくは凍結を求める発言を続けている[要出典]。 一方、鹿島市長の桑原允彦はJR長崎本線経営分離反対運動を終息させるとした。そのため、2011年(平成23年)9月現在、関係する自治体の首長で公式に長崎新幹線建設反対の立場を取っているのは江北町長の田中ただ一人となっている。また、民主党政権への交代後にフリーゲージトレインへの国費投入についてもいわゆる「事業仕分け」の対象となり、検討が行われたが、条件付きで継続となった。その際に田中は長崎新幹線建設自体についても「事業仕分け」の対象にすべきだった、と発言した[要出典]。 佐賀・長崎両県は、在来線維持のために両県が負担することとなる設備購入費を14億円、開業後20年間の維持管理費を46億円と見積もっているが、この計60億円を、長崎県が40億円、佐賀県が20億円負担することで2008年(平成20年)4月25日に合意した。この負担割合について長崎県の金子原二郎知事は、「佐賀県の理解と協力がなければ、新幹線は実現しなかった。長崎の誠意を具体化した」と述べている。 一方、長崎県内の旧小長井町(諫早市に合併済)などではJR九州の運営となることで普通列車の運行本数増加と新駅設置という長崎県が将来の第三セクター鉄道転換の際に表明していた約束が実行されないのでは、という懸念を示す動きが出ている。 2016年(平成28年)3月29日の与党整備新幹線PT検討委員会、国土交通省、鉄道・運輸機構、長崎県、佐賀県、JR九州の6者による「九州新幹線(西九州ルート)の開業のあり方に係る合意」では在来線について以下のように記されている。 長崎本線肥前山口駅 - 諫早駅間は開業時点において上下分離し、三者基本合意(平成19年12月)に定められた譲渡価格に関わらず、JR九州は、佐賀県および長崎県に鉄道施設を無償で譲渡する。 JR九州は経営分離せず、三者基本合意が定めるところに関わらず、JR九州は当該開業時点から3年間は一定水準の列車運行のサービスレベルを維持するとともに、当該開業後23年間運行を維持する。特急列車:博多駅 - 肥前鹿島駅間において開業時点での需要を踏まえ、上下14本程度 普通列車:現行水準維持
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