ルナー・プロスペクター Lunar Prospector
ルナー・プロスペクター
名称:ルナー・プロスペクター
小分類:月探査
開発機関・会社:アメリカ航空宇宙局(NASA)
運用機関・会社:アメリカ航空宇宙局(NASA)
打ち上げ年月日:1998年1月6日
運用停止年月日:1999年7月31日
打ち上げ国名:アメリカ
打ち上げロケット:アジェナII
打ち上げ場所:ケープカナベラル空軍ステーション
ルナー・プロスペクター(「月の探鉱者」という意味)は、アメリカ航空宇宙局(NASA)がエクスプローラー49号(1973年)以来、24年ぶりに月に送った無人探査機です。アポロ有人月計画(1968〜72年)で月の岩石をはじめ多くの貴重な資料が集められましたが、それ以降月の探査はおろそかにされてきました。しかし1994年にアメリカ国防省が月に送ったクレメンタイン探査機で、月の南極地域に水(氷)の存在の可能性が明らかにされ、再び月に対する関心が盛り上がってきました。推定によれば、月の極地方の深さ約30cmの地下には将来の月コロニーの建設に十分な2億トン以上の氷が埋もれているということでした。
ルナー・プロスペクターは1998年1月に月上空約100kmで南北極を通る円軌道に乗り、月のマッピングを行いながら、水をはじめ有用な資源がどの程度存在するのかを調べ続けました。その後、1999年7月31日には氷があると考えられている南極近くのクレーターに衝突し、そのとき上がる水蒸気によって氷の存在を確認しようとしましたが、成功はしませんでした。ルナー・プロスペクターには、1997年に亡くなった有名な天文学者のユージン・シューメイカー博士の遺灰も積まれていました。
直径122cm、高さ137cmの円筒形で、長さ243cmのブームが3本伸びています。ブームの先には、磁力計が取り付けられています。ルナー・プロスペクターには他にも、月の元素の存在比を調べるガンマ線スペクトル計や、地殻活動の様子を調べるアルファ粒子スペクトル計、磁場を調べる電子反射計、中性子スペクトル計が付いています。打ち上げ質量は300kgです。
2.どんな目的に使用されたの?
クレメンタインの探査によって推測された、月の両極地方の浅い地表にある2億トン以上の水の氷の存在を調べることが最大の目的です。月の地質構造、月表面の水などの揮発性物質の分布、磁場、重力場の分布などを、1年以上かけて調べました。
3.宇宙でどんなことをし、今はどうなっているの?
打ち上げ後約105時間で月に到達し、1998年1月16日より月面から約100kmの高度の軌道上で月のマッピング調査などを行いました。1998年12月には高度を40kmまで下げ、より高分解能でマッピングを行っています。最後に1999年7月31日に、月の南極近くの永久に日の当たらない地表面に衝突し、水蒸気の発生を調べました。残念ながら水や氷の存在は確認できませんでしたが、月の地表の詳細な組成分布図などが作成されました。
4.打ち上げ・飛行の順序はどうなっているの?
パーキング軌道から月軌道に投入され、途中で2回の軌道修正を行った後、打ち上げから105時間後の1998年1月11日に月を南北に周回する軌道に入り、1月15日に高度約100km、傾斜角90度、周期118分の観測軌道に入りました。その後1998年12月19日に軌道高度を40kmまで下げ、1999年1月28日に15×45kmの長楕円軌道に移動しました。1999年7月31日には南緯87.7度、東経42度の南極近くのクレーターに衝突してその使命を終えています。
ルナ・プロスペクター
(ルナー・プロスペクター から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/05 22:14 UTC 版)
ルナ・プロスペクター | |
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ルナ・プロスペクター
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所属 | NASA |
国際標識番号 | 1998-001A |
カタログ番号 | 25131 |
状態 | 運用終了 |
目的 | 月探査 |
観測対象 | 月 |
打上げ場所 | ケープカナベラル空軍基地 |
打上げ機 | アテナII |
打上げ日時 | 1998年1月7日 2時28分44秒 (UTC) 6日 21時28分44秒 (EST) |
軌道投入日 | 1998年1月11日 |
運用終了日 | 1999年7月31日(衝突) |
消滅日時 | 1999年7月31日 9時52分2秒 (UTC) 5時52分2秒 (EDT) |
物理的特長 | |
本体寸法 | 直径1.36 m×高さ1.28 mの円筒形 |
質量 | 296 kg |
発生電力 | 太陽電池 186 W ニッケル・カドミウム蓄電池 4.8 A/h |
主な推進器 | 22N ヒドラジン1液スラスタ |
姿勢制御方式 | スピン安定制御 |
軌道要素 | |
周回対象 | 月 |
軌道 | 月周回軌道 |
近点高度 (hp) | 99.45 km |
遠点高度 (ha) | 101.2 km |
軌道半長径 (a) | 6,478.2 km |
離心率 (e) | 0.00046 |
軌道傾斜角 (i) | 90.55度 |
軌道周期 (P) | 117.9分 |
観測機器 | |
NS | 中性子線分光計 |
GRS | ガンマ線分光計 |
APS | アルファ線分光計 |
MAG / ER | 磁力計・電子反射計 |
DGE | ドップラー重力計測器 |
ルナ・プロスペクター (Lunar Prospector) は、アメリカ航空宇宙局 (NASA) のディスカバリー計画の一環として1998年から1999年にかけて行われた月探査ミッション、およびその探査機の名前である。計画の管理運営はエイムズ研究センターが担当した。
概要
1994年のクレメンタインによる探査から、月の極地付近に水が存在する可能性が注目されはじめた。もし月に大量の水があれば、月面基地を作った際に地球から運ぶことになる資源が大幅に減らせ、人類の月における活動の実現性を高める重要な発見となる。同様に月面の化学組成を調べて鉱物など資源の分布を知ることも現実的な調査目標となってきた。さらに放射性ガスを検出することで月の地殻活動についても調べることになり、これらの調査のため放射線センサーを主とした探査機としてルナ・プロスペクターは計画された。また、月の内部構造を知る手掛かりを得るため磁場・重力場センサーも搭載されている。
経過
1998年1月7日に打ち上げられ、105時間で月に到達した。その後、月の両極上空を通過する高度100kmの軌道に投入され、各種観測機器による月面マッピングを開始した。 3月、搭載した中性子線分光計で月の極地方に水素の存在を意味する観測結果が得られたことが発表され、さらに1998年9月4日、NASAは中性子線による観測結果に基づいて、月の両極地方に最大60億トンの水が存在し得ることをサイエンス誌上で発表した。
1999年7月31日、探査ミッションの最終段階として探査機を月の南極のクレーターに衝突させ、氷として存在する水を蒸発させてこれを直接観測しようとする実験が行われた。ハッブル宇宙望遠鏡および地球上の天文台が衝突のタイミングに合わせて観測を行ったが水蒸気は観測されずに終わった。
結局このミッションでは月面に水の氷が存在することを直接には確認できなかったが、中性子線の観測が水素の存在を示唆したことは間接的ながら水の存在を支持する結果となった。以後の月探査計画でも、水の存在は調査される予定である。また、22ヶ月の計画期間とわずか6300万ドルの開発予算は、ディスカバリー計画のミッションとしてふさわしいものとなった。
この探査機にはクレメンタイン計画の中心メンバーで1997年に逝去したユージン・シューメーカー博士の遺灰を入れたカプセルも搭載された。月面を歩くことだった彼の夢を、少しでも叶えようというものだった。
日程
(日付は米国時間)
- 1998年1月7日: ケープ・カナベラルより、アテナ II ロケットで打ち上げ。
- 1998年1月11日: 月の周回軌道に乗る。その後数日かけて高度100kmの極軌道に調整。
- 1998年3月5日: 極地で氷の存在の証拠らしきものを発見。
- 1998年12月19日: マッピング精度を上げるため高度を40kmに下げる。
- 1999年1月28日: さらに詳細な観測を行うため高度を下げ近月点10km×遠月点45kmの楕円軌道へ移行。
- 1999年7月31日: 南極のクレーター、モーソンへの衝突実験。ミッション終了。
観測機器
外部リンク
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