フェミナ賞 フェミナ賞の概要

フェミナ賞

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/05 10:03 UTC 版)

フェミナ賞
Prix Femina
フェミナ賞審査委員会 (1926年12月15日)[注釈 1]
受賞対象散文
開催日11月第1水曜
会場クリヨン・ホテル(パリ8区
フランス
初回1904年
最新回2019年
最新受賞者シルヴァン・プリュドムフランス語版, Par les routes
公式サイトPrix Femina

毎年、最も優れたフランス語の散文もしくは詩作品に贈られる。11月の第1水曜日に、パリのホテル・ド・クリオンで女性審査員10人(2019年時点)によって選出される。

歴史

この賞は、当初はアシェット・リーブル社の雑誌『ラ・ヴィー・ウールーズフランス語版(幸せな人生)』の名前から「ヴィ・ウールーズ賞」と呼ばれ、1904年12月4日に20名(ゴンクール賞の倍)の女性から成る審査員により初の授与が行われた[4]アンナ・ド・ノアイユ、カロリーヌ・ド・ブルテル(編集長)のほか、ピエール・ド・クールヴァン夫人、ジュリア・ドーデフランス語版アルフォンス・ドーデの妻)、ジャンヌ・メットフランス語版カチュール・マンデスの妻)、リュシー・フェリックス=フォール・ゴヨーフランス語版(ジョルジュ・ゴヨーの妻)、リュシー・ドラリュー=マルドリュスフランス語版ジャンヌ・デュラフォアフランス語版、マリー・デュクロー、クロード・フェルヴァル、ジュディット・ゴーティエフランス語版アルヴェード・バリーヌフランス語版テレーズ・バンゾンフランス語版ジャンヌ・ロワゾーフランス語版、ジャンヌ・マルニ、ジョルジュ・ド・ペールブリューヌフランス語版、マルグリット・パラドウスカ、ガブリエル・レヴァルフランス語版セヴリーヌマルセル・ティナイエールフランス語版ジュリエット・アダムフランス語版ジャン・ベルトロワフランス語版であった。

『ラ・ヴィー・ウールーズ』第1号(1902年10月15日)表紙

1901年に雑誌『フェミナ』を創刊したピエール・ラフィットとアシェット社が連携する。1922年に「フェミナ賞」に改称し、審査員は12名とした[4]

合衆国広場8番地(16区)のラ・ロシュフコー公爵家の邸宅は、数十年に亘ってそのサロンエドメ・ド・ラ・ロシュフコーフランス語版がパリ中の文学・思想の名士たちを集めたことから「アカデミー・フランセーズの控室」という評判を得る。サロンの女主人は自ら、フェミナ賞の審査員長を長年務めた。在任中の1953年には日本女性を主人公とした日系フランス人キク・ヤマタの『麗しの夫人』を候補に推薦している[5]。娘のソランジュ・ファスケルフランス語版も生涯審査員を務めた。

2019年現在の審査員は、カミーユ・ロランスクレール・ガロワフランス語版ポーラ・ジャックフランス語版クリスティーヌ・ジョルディスフランス語版モナ・オズーフダニエル・サルナーヴフランス語版シャンタル・トマフランス語版アンヌ=マリー・ガラフランス語版ジョジアーヌ・サヴィニョーフランス語版エヴリーヌ・ブロック=ダノフランス語版の10人である[6]

フェミナ賞受賞作家・作品一覧

画像 受賞作家 受賞作品 邦訳
1904 ミリアム・アリーフランス語版 La Conquête de Jérusalem
1905 ロマン・ロラン Jean-Christophe 『ジャン・クリストフ』豊島与志雄[7]岩波書店、(新版) 2003年。
1906 アンドレ・コルティスフランス語版 Gemmes et Moires
1907 コレット・イヴェールフランス語版 Princesses de science
1908 エドゥアール・エストニエフランス語版 La Vie secrète
1909 エドモン・ジャルーフランス語版 Le reste est silence 『子供は知っていた』江口清(リンク)訳、河出書房、1956年。
1910 マルグリット・オードゥー Marie-Claire 孤児マリー堀口大学訳、新潮社、1953年。
1911 ルイ・ド・ロベールフランス語版 Le Roman du malade
1912 ジャック・モレルフランス語版 Feuilles mortes
1913 カミーユ・マルボフランス語版 La Statue voilée
1914 (受賞なし)
1915 (受賞なし)
1916 (受賞なし)
1917 モーリス・ラルーイフランス語版 L'Odyssée d'un transport torpillé
1918 アンリ・バシュランフランス語版 Le Serviteur
1919 ロラン・ドルジュレスフランス語版 Les Croix de bois 「木の十字架」山内義雄[8]三笠書房『三笠版現代世界文学全集 第5巻』(1954年) 所収。
1920 エドゥモン・ゴジョンフランス語版 Le Jardin des dieux
1921 レイモン・エスコリエフランス語版 Cantegril
1922 ジャック・ド・ラクルテルフランス語版 Silbermann 『反逆児 ― シルベルマン』青柳瑞穂[9]、新潮社、1957年。
1923 ジャンヌ・ガルジフランス語版 Les Allongés
1924 シャルル・ドゥレンヌフランス語版 Le Bestiaire sentimental
1925 ジョゼフ・デルテイユフランス語版 Jeanne d'Arc カール・テオドア・ドライヤー監督映画『裁かるるジャンヌ』(1927年)
1926 シャルル・シルヴェストルフランス語版 Prodige du cœur
1927 マリー・ル・フランフランス語版 Grand-Louis l'innocent
1928 ドミニク・デュノワフランス語版 Georgette Garou
1929 ジョルジュ・ベルナノス La Joie 「よろこび」山崎庸一郎訳『ジョルジュ・ベルナノス著作集 第1巻』(春秋社、1976年) 所収。
1930 マルク・シャドゥルヌフランス語版 Cécile de la Folie
1931 アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ Vol de nuit 『夜間飛行』堀口大學訳[10]、新潮社、(改版) 1956年。
1932 ラモン・フェルナンデスフランス語版 Le Pari 『青春を賭ける』菱山修三訳、第一書房、1936年。
1933 ジュヌヴィエーヴ・フォコニエフランス語版 Claude
1934 ロベール・フランシスフランス語版 Le Bateau-refuge
1935 クロード・シルヴフランス語版 Bénédiction
1936 ルイーズ・エルヴィユーフランス語版 Sangs
1937 レイモンド・ヴァンサンフランス語版 Campagne
1938 フェリックス・ド・シャズルヌフランス語版 Caroline ou le Départ pour les îles
1939 ポール・ヴィアラールフランス語版 La Rose de la mer 『海の薔薇』柿本良平訳、時代社、1940年。
1940 (受賞なし)
1941 (受賞なし)
1942 (受賞なし)
1943 (受賞なし)
1944 深夜叢書 第二次世界大戦中の(地下)出版物に対して。
1945 アンヌ=マリー・モネフランス語版 Le Chemin du soleil
1946 ミシェル・ロビダフランス語版 Le Temps de la longue patience
1947 ガブリエル・ロワ Bonheur d'occasion
1948 エマニュエル・ロブレスフランス語版 Les Hauteurs de la ville
1949 マリア・ル・アルドゥーアンフランス語版 La Dame de cœur 『ハートの女王』小島輝正訳、ダヴィッド社、1951年。
1950 セルジュ・グルッサールフランス語版 La Femme sans passé 『過去のない女』水野亮(リンク)訳、岩波書店、1952-53年。
1951 アンヌ・ド・トゥールヴィルフランス語版 Jabadao
1952 ドミニク・ロランフランス語版 Le Souffle
1953 ゾエ・オルダンブールフランス語版 La Pierre angulaire
1954 ガブリエル・ヴェラルディフランス語版 La Machine humaine
1955 アンドレ・ドーテルフランス語版 Le Pays où l'on n'arrive jamais
1956 フランソワ・レジス・バスティードフランス語版 Les Adieux
1957 クリスチャン・メグレフランス語版 Le Carrefour des solitudes
1958 フランソワーズ・マレ=ジョリスフランス語版 L'Empire céleste 『春の訪れ』三輪秀彦[11]、ハヤカワ文庫(リンク)、1975年。
1959 ベルナール・プリヴァフランス語版 Au pied du mur
1960 ルイーズ・ベロックフランス語版 La Porte retombée
1961 アンリ・トマフランス語版 Le Promontoire 『岬 / 世捨て人』永井旦訳、白水社、1964年。
1962 イヴ・ベルジェフランス語版 Le Sud 『南』濱崎史朗訳 [12]、白水社、(新装復刊版) 2004年。
1963 ロジェ・ヴリニーフランス語版 La Nuit de Mougins
1964 ジャン・ブランザフランス語版 Le Faussaire
1965 ロベール・パンジェ Quelqu'un
1966 イレーヌ・モネジフランス語版 Nature morte devant la fenêtre
1967 クレール・エチェレリフランス語版 Élise ou la Vraie Vie 『エリーズまたは真の人生』佐藤実枝訳、白水社、1975年。
1968 マルグリット・ユルスナール L'Œuvre au noir 『黒の過程』岩崎力[13]、白水社、(新装版) 2008年。
1969 ホルヘ・センプルン La Deuxième Mort de Ramón Mercader 『ラモン・メルカデルの第二の死』榊原晃三訳、新潮社、1971年。
1970 フランソワ・ヌリシエフランス語版 La Crève
1971 アンジェロ・リナルディフランス語版 La Maison des Atlantes
1972 ロジェ・グルニエ Ciné-roman 『シネロマン』塩瀬宏訳 [14]、白水社、(新装復刊版) 2001年。
1973 ミシェル・ダールフランス語版 Juan Maldonne
1974 ルネ=ヴィクトル・ピーユフランス語版 L'Imprécateur 『呪い師』三輪秀彦訳、早川書房、1976年。
1975 クロード・ファラッジフランス語版 Le Maître d'heure
1976 マリー=ルイーズ・オーモンフランス語版 Le Trajet 『通勤路』岩崎力訳、早川書房、1979年。
1977 レジス・ドゥブレ La neige brûle 『雪が燃えるように』西永良成訳、早川書房、1984年。
1978 フランソワ・ソンカンフランス語版 Un amour de père
1979 ピエール・モワノー Le Guetteur d'ombre
1980 ジョスリーヌ・フランソワフランス語版 Joue-nous « España »
1981 カトリーヌ・エルマリ=ヴィエイユフランス語版 Le Grand Vizir de la nuit
1982 アンヌ・エベールフランス語版 Les Fous de Bassan
1983 フロランス・ドゥレフランス語版 Riche et Légère 『リッチ & ライト』千葉文夫訳、みすず書房、2002年。
1984 ベルトラン・ヴィザージュフランス語版 Tous les soleils
1985 エクトール・ビアンシオッティフランス語版 Sans la miséricorde du Christ
1986 ルネ・ベレットフランス語版 L'Enfer
1987 アラン・アプシールフランス語版 L'Égal de Dieu
1988 アレクサンドル・ジャルダン Le Zèbre 『妻への恋文』鷲見洋一[15]、新潮社、1996年。
1989 シルヴィー・ジェルマンフランス語版 Jours de colère
1990 ピエレット・フルティオーフランス語版 Nous sommes éternels
1991 ポーラ・ジャックフランス語版 Déborah et les Anges dissipés
1992 アンヌ=マリー・ガラフランス語版 Aden
1993 マルク・ランブロンフランス語版 L'Œil du silence
1994 オリヴィエ・ロランフランス語版 Port-Soudan
1995 エマニュエル・カレール La Classe de neige [16] 『冬の少年』田中千春訳、河出書房新社、1999年。
1996 ジュヌヴィエーヴ・ブリザックフランス語版 Week-end de chasse à la mère
1997 ドミニク・ノゲーズフランス語版 Amour noir
1998 フランソワ・チェン Le Dit de Tianyi 『ティエンイの物語』辻由美訳、みすず書房、2011年。
1999 マリリーヌ・デビオールフランス語版 Anchise
2000 カミーユ・ロランス Dans ces bras-là 『その腕の中で』吉田花子訳、新潮社、2002年。
2001 マリー・ンディアイ Rosie Carpe 『ロジー・カルプ』小野正嗣訳、早川書房、2010年。
2002 シャンタル・トマフランス語版 Les Adieux à la reine 『王妃に別れをつげて』飛幡祐規訳、白水社、2004年。
2003 ダイ・シージエ Le Complexe de Di 『フロイトの弟子と旅する長椅子』新島進訳、早川書房、2007年。
2004 ジャン=ポール・デュボワフランス語版 Une vie française 『フランス的人生』吉村和明訳、筑摩書房、2009年。
2005 レジス・ジョフレフランス語版 Asiles de fous
2006 ナンシー・ヒューストン Lignes de faille 『時のかさなり』横川晶子訳、新潮社、2008年。
2007 エリック・フォトリノ Baisers de cinéma 『光の子供』吉田洋之訳、新潮社、2014年。
2008 ジャン=ルイ・フルニエフランス語版 Où on va, papa ? 『どこ行くの、パパ?』河野万里子訳、白水社、2011年。
2009 グエナエル・オブリフランス語版 Personne
2010 パトリック・ラペイルフランス語版 La vie est brève et le désir sans fin 『人生は短く、欲望は果てなし』東浦弘樹訳、作品社、2012年。
2011 シモン・リベラティフランス語版 Jayne Mansfield 1967
2012 パトリック・ドゥヴィルフランス語版 Peste et Choléra 『ペスト & コレラ』辻由美訳、みすず書房、2014年。
2013 レオノラ・ミアノフランス語版 La Saison de l'ombre
2014 ヤニック・ラアンスフランス語版 Bain de lune
2015 クリストフ・ボルタンスキーフランス語版 La Cache
2016 マルキュス・マルトフランス語版 Le Garçon
2017 フィリップ・ジャエナダフランス語版 La Serpe
2018 フィリップ・ランソンフランス語版[6] Le Lambeau ルノードー賞「特別賞」[17]
2019 シルヴァン・プリュドムフランス語版 Par les routes
2020 セルジュ・ジョンクール Nature humaine

注釈

  1. ^ 前列向かって左から右へ(座席):マリー・デュクロー、ジュリア・ドーデフランス語版 (1844-1940)、ガブリエル・レヴァルフランス語版 (1869-1938)、レエオンティーヌ・ザンダフランス語版 (1872-1942)、リュシー・ドラリュー=マルドリュスフランス語版 (1874-1945)、ミリアム・アリーフランス語版 (1869-1958)。後列同:サン=ルネ・タヤンディエフランス語版 (1817-1879)、ジュディット・クラデルフランス語版 (1873-1958)、ジャン・ドルニフランス語版 (1870-1948)、アンドレ・コルティスフランス語版 (1882-1952)、不明、エレーヌ・ヴァカレスコフランス語版 (1864-1947)、コレット・イヴェールフランス語版 (1874-1953)。Agence Rol掲載写真。

出典

  1. ^ Les prix littéraires” (フランス語). www.actualitte.com. 2019年6月23日閲覧。
  2. ^ Femina” (フランス語). www.prixfemina.org. 2019年6月23日閲覧。
  3. ^ Contre un Goncourt misogyne : le Femina, un prix tour à tour militant, volcanique et collabo” (フランス語). France Culture (2017年11月7日). 2019年6月23日閲覧。
  4. ^ a b Claire Gallois (2004年12月7日). “Réception en l’honneur des 100 ans du Prix Femina au ministère de la culture et de la communication : L'histoire du Prix Fémina par Claire Gallois, présidente du jury 2004” (フランス語). Ministère de la Culture. 2019年6月23日閲覧。
  5. ^ 矢島翠『ラ・ジャポネーズ : キク・ヤマタの一生』筑摩書房〈ちくま文庫〉、1990年、276頁。ISBN 4480024956 
  6. ^ a b Le prix Femina 2018 récompense Philippe Lançon pour "le Lambeau"” (フランス語). L'Obs (2018年11月5日). 2019年6月23日閲覧。
  7. ^ Rolland, Romain『ジヤン・クリストフ』豊島与志雄訳、新潮社、1920年。NCID BN16002441
  8. ^ Dorgelès, Roland『戰争の溜息』山内義雄訳、新潮社、1931年。
  9. ^ Lacretelle, Jacques de『反逆兒』青柳瑞穂訳、新潮社、1951年。NCID BA33717525
  10. ^ Saint-Exupéry, Antoine de『夜間飛行 : 小説』堀口大学訳、第一書房、1934年。NCID BA52021277
  11. ^ フランソワーズ・マレージョリス『春の訪れ』三輪秀彦訳、早川書房〈ハヤカワNV文庫〉、1973年全国書誌番号:75079291
  12. ^ Berger, Yves『南』浜崎史朗訳、白水社〈新しい世界の文学〉第26号、1965年。NCID BN01882614
  13. ^ Yourcenar, Marguerite『黒の過程』岩崎力訳、白水社〈現代フランス小説〉第2巻、1970年。NCID BN01891047
  14. ^ Grenier, Roger『シネロマン』塩瀬宏訳、白水社〈新しい世界の文学〉第80巻、1977年。NCID BN01876418
  15. ^ Jardin, Alexandre『妻への恋文』鷲見洋一訳、新潮社、1993年。NCID BN08900601
  16. ^ Miller, Claude ; Carrère, Emmanuel ; Bergh, Clement Van den ; Nalcakan, Lokman ; Verhoeven, Yves「ニコラ」、東芝デジタルフロンティア : 日活 (発売)、日活 (販売) 、2000年。NCID BA56925634
  17. ^ Lauren Provost (2018年11月7日). “Le prix Renaudot 2018 récompense Valérie Manteau et "Le Sillon"” (フランス語). Le HuffPost. 2018年11月8日閲覧。






固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「フェミナ賞」の関連用語

フェミナ賞のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



フェミナ賞のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのフェミナ賞 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS