液晶ディスプレイ 歴史

液晶ディスプレイ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/21 15:28 UTC 版)

歴史

1888年オーストリアのF.ライニッツァー (Reinitzer) らにより、コレステロール安息香酸エステル化合物からなる結晶を加熱することで液体状となるサーモトロピック液晶が発見された。1964年には米国で最初の液晶表示装置が考案され、1968年には米RCA社のハイルマイヤー (R. Heilmeir) 達の手で最初のネマティック液晶を使用した表示装置が作られた。これ以降、多様な装置が作られたがいずれもモノクロのものであった。1973年には日本で電池駆動可能な電卓の表示装置[注 63]として採用された。しばらくはTN型による低消費電力で薄く小型のものが主体となって、電卓や腕時計、ワープロ電子手帳、携帯型ゲーム機など、そのころ登場しはじめたデジタル機器の表示部として普及した。また1976年には英国ハル大学のグレイ教授が安定な液晶材料(ビフェニール系)を発見し、それは現在のLCD材料の基礎となっている。1983年には日本のエプソンから世界最初のTFT型液晶カラーテレビ「ET-10」が発表され、翌年に発売された。1988年には14型のTFT型液晶カラーTVが発表された。

1990年代になるとそれまでのセグメント表示からドット・マトリクス表示に、モノクロ表示からカラー表示に変わり、TFTによるアクティブ・マトリクス駆動によって高精細な表示が可能になった[注 64]。1990年代半ばに低温ポリシリコンによるTFT層が実用化された。用途も静止画だけのスチルカメラの表示部のようなものから、動画が扱えるデジタルビデオカメラの表示部へと広がり、ノートパソコンの表示や小型テレビ、カーナビへと広がった。20世紀末ごろにはブラウン管TVを駆逐する勢いで、大型平面TVでの採用が大きな広がりを見せてきた[注 65]。1990年代に日本メーカーのそれまでの基礎研究や技術開発の実用化・製品化が進み、世界市場を開拓していった。1990年代半ばに韓国メーカーが、1990年代後半には台湾メーカーが世界市場に本格的に参入してきた。

2000年代になると、小型の表示器としては携帯電話やPDA、携帯音楽プレーヤー等の多様な携帯型電子機器に使用されるようになり、大型では大画面TVや普及型TVなど、広くTV用途で採用されている。2000年代には中国メーカーが世界市場に本格的に参入してきた[5][1][9]


注釈

  1. ^ なお、「液晶ディスプレイ」(LCD) が指すものは様々であり注意を要する。例えば、コンピューター等の表示のためのモニター装置を指す場合、部品としての表示装置(表示用部品)を指す場合、表示領域を指す場合、そして、液晶ディスプレイ技術一般を指す場合まである。また、液晶ディスプレイを英語にて略記するとLCDとなるが、この場合には、液晶ディスプレイを用いる表示用モニター装置ではなく、部品としての「液晶モジュール」あるいは「液晶パネル」を指すことや、それらによる表示領域を指す場合が多い。普及に伴い、これらは、いずれも単に「液晶」と呼ばれることも多い。
  2. ^ 液晶パネルは「液晶セル」や「液晶アレイセル」とも呼ばれる。
  3. ^ 入射側の偏光フィルタが完全なもので、液晶層の偏光解消性が全く無い場合には、ここでの光は、偏光度1の完全な偏光となっている。この偏光は直線とは限らない。
  4. ^ 偏光素子にはヨウ素分子と二色性染料があるが、主にヨウ素分子が使用される。
  5. ^ ヨウ素の吸収は分子の長軸方向の偏光がほとんど吸収される。
  6. ^ 液晶自体は偏光を変化させるが、積極的に光を遮断する訳ではなく、液晶の多くは有機物であるため多少の光の吸収はあるが、表示原理にそれを用いているわけではない。また、偏光フィルタを通過した光は直線偏光しているが、ヒトの目は偏光を検知することがほとんどできないので、それを意識することはまずない。
  7. ^ 一般にヒトの眼では偏光方向を感知できないが、ハイディンガーのブラシ という方法によってわずかに知ることが可能である。
  8. ^ 液晶表示方式の中には配向層を必要としないものもある。
  9. ^ IPS方式では面内方向に電界を加える。
  10. ^ 光シャッターは2次元の「空間光変調器」として働く。
  11. ^ 偏光フィルムが不要な方式では2つのモードは存在せず、いずれか片方のものがある。
  12. ^ この節では構造の説明のために製造工程で使用される用語を使い、「液晶パネル」は、駆動用回路等が実装されて「液晶モジュール」となる前のものとする。
  13. ^ プラスチック球はアレイ基板の完成後にガスなどでスプレーされてランダムに撒かれる。散布量は1画素当り2-3個程度としている。サブ画素の上にその球が乗ればコントラスト比をわずかに悪化させるが微小なスペーサそのものは肉眼では判別できない。特に大画面液晶パネルでは、わずかな振動でプラスチック球が移動して配向膜を傷付ける事がある。そこで、最近では、スペーサとしてパネルの製造工程において事前にフォトスペーサと呼ばれる樹脂製の柱を作成しておくことも行われるようになっている。カラーフィルタ基板の作成時に表示のための光が透過しないブラックマトリックス部分にフォトスペーサによって柱を形成して、コントラストの低下や配向膜への傷を避ける。フォトスペーサはカラーフィルタの着色層を積み重ねることで作られることもあったが、専用の樹脂で作るものが多くなっている。
  14. ^ 多くの場合、基板が互いに接着されているのは基板周囲のシール部分のみであり、画面の中央部は液晶材料の内圧とスペーサの支持力が外部圧力と平衡してセルギャップが維持される。
  15. ^ セルギャップは極めて狭く、3μm程であり、使用される液晶材料も42型で1.5g程とわずかである。
  16. ^ 必要に応じて透明電極が表示すべき模様に応じたパターンに形成されるものもある。
  17. ^ 実際のTFT液晶パネルでは、高い平面性、液晶材料等の汚染を防ぐ低イオン汚染性等の厳しい基準に適合する必要があるため、液晶パネル用途に特別に作られた無アルカリガラス(ホウケイ酸ガラス)が用いられる。STN液晶パネルでは、二酸化珪素をコーティングしたソーダガラスも利用される。
  18. ^ インジウムは例えば20型液晶パネルでは0.2グラムほどが使用されている。
  19. ^ この金属配線としては、種々の金属配線が用いられるが、通常はアルミニウム系の材料が用いられる。大画面高精細化つまり表示面積を大きくして表示容量を増大させるには、信号線の抵抗と浮遊容量による信号波形のナマリが問題となる。例えば、4096×2048画素級の液晶パネルでは従来以上に抵抗の低い金属配線が必要となるため、アルミニウム系の金属配線に代わって例えば銅系などの低抵抗の材料によって金属配線を実現する開発が行われている。(日経エレクトロニクス 2009年2月9日号 P.53)
  20. ^ 古典的な反射型の液晶パネルでは、外部から入射した光が反射板に反射して外へ戻るまでの、液晶パネル内を往復する間に液晶が光を遮蔽する効果が2度加えられるので、厚みのある基板類では表示が2重に見え、精細な表示には向かなった。
  21. ^ カラーフィルタを用いずにカラー表示を行う方式として、直視型の液晶ディスプレイにおいて、R、G、Bの光を順次発光させるように構成したLEDバックライトに、高速で書き換え可能な液晶パネルを組み合わせてカラー表示を行うフィールド・シーケンシャル・カラー表示方式のものも試作されている。これは、カラーフィルタを用いないため、必要な画素数が3分の1となり開口率が上がるために光の利用効率が良くなる利点がある。一方で、必要な応答速度が単純計算でも3倍になるために、一般に応答速度で劣る液晶表示素子では実現に難しさがある。また、色を順次表示するために色割れという問題も起きる。
  22. ^ ソース電極線にはCrMo-Ta、Ta、TiAlが使われる。ゲート電極線にはCrやTaよりもAlやAl-Nb合金が主に使われ、Alでは絶縁膜も陽極酸化によるAl2O3(酸化アルミニウム)層が利用される。絶縁膜を2層にすることで製造工程でのピンホールの問題を回避することもあり、その場合には、Al2O3の上にSiNXを使う。また、40型以上といった大きなパネルではAlやAl-Nb合金でも抵抗値が充分ではないため、Cuを使った配線も開発されている。低抵抗なアルミニウム合金の比抵抗はAlで3μΩcm、Al-Nbで6μΩcm、Al-Cuで4μΩcm程度である。アモルファス・シリコンでは金属配線から直接、電子を受け渡しするのに問題があり、オーミック層としてn+アモルファス・シリコン層を両者の間に加える。アモルファス・シリコンに直接、光が当たると光電変換効果による光電流が生まれるため、アモルファス・シリコン層は50nm以下にされるとともに、アモルファス・シリコンの部分は金属配線やBMによって遮光される。表示輝度を高めるためには開口率を上げるのが良く、配線やTFT、コンデンサの配置を工夫したりTFTそのものの性能を上げて縮小して少しでも開口率を上げるよう工夫されている。20型パネルで開口率は70%程度である。
  23. ^ TFTがスイッチング動作で非選択状態になっても、トランジスタ回路の寄生キャパシタ成分が蓄積コンデンサの電荷を奪う「突き抜け現象」を起こして電位差は少し減少する。
  24. ^ なお、TFT型の他にもMIM型 (Metal Insulator Metal) というアクティブ素子を用いる方式もある。この方式では、金属 / 絶縁膜 / 金属という配置を備えることで双方向のダイオード特性を持たせたアクティブ素子が画素ごとに配置されている。この場合、単純マトリックスのように対向電極側もストライプ状の列を作る必要がある。素子自体はTFTに比べ簡素化した工程で作製されるが、TFTの一般化につれて利用されなくなっている。
  25. ^ 低温ポリシリコンは東芝が開発した
  26. ^ 交流による駆動電圧はプラスとマイナスの両電圧が総体として等しくなるように印加されなければならない。いずれかの電圧に偏っていると液晶に直流成分が加えられることになり、同じ画像を長時間表示すると焼き付き現象となって現われる事がある。
  27. ^ 液晶表示では、各フレームごとの画像を次のフレームの画像で書き換えるまで静的に保持し続ける仕組みのものが多く、これを「ホールド駆動」と呼ぶ。このホールド駆動では、たとえ液晶分子の反応時間が無限小にまで高速化できても、ヒトの視覚には残像感があるため、動画表示の画像切り替え例えば蛍光管であるブラウン管でのほとんど瞬間的な「インパルス発光」に比べれば遅く感じられる。
  28. ^ 本文に示した代表的なものの他に、ECB、FLC(強誘電性液晶)、GH(ゲスト・ホスト)、DS(動的散乱)、PC(相転移)、熱光学、熱電気光学のそれぞれの表示方式がある。
  29. ^ TN型は早くから実用化され、液晶といえばTN型が用いられているという時代が長く続いた。現在でもセグメント表示などの簡易な液晶表示部はTN型が主流である。構造が簡易で簡易な用途に限れば表示品位も十分である。印加電圧に対する透過率変化が緩やかであり、多数の画素表示を行うためにはアクティブ・マトリクス駆動を行う必要があるが、画素数が少なければデューティー駆動による単純マトリクス駆動で使用されることもある。
  30. ^ この配向処理は、ラビングという。配向膜上を布でこする(rubする)ことによって、その基板に接する液晶配向がその方向を向くようになる。液晶配向には方向性があり、一方が、基板からわずかだけ(数度程度)持ち上がる。例えば基板上に適当に取った時計文字盤によって方向を表して12時から6時の方向に向かって配向膜を布でこすると、液晶配向は、6時の側が持ち上がる。これをプレチルト角という
  31. ^ 無印加時に偏光が回転する角度は、屈折率異方性に液晶層の厚みを乗じたものと、伝播する波長との間の比率などといった液晶層の設計パラメータに依存する。
  32. ^ 正しく旋光させるためには、液晶が螺旋構造をとるときの1周期の長さであるヘリカルピッチが、入射光の波長に比べて十分長い必要があり、この限界条件はモーガン条件、又はモーガン限界と呼ばれる。モーガン条件はで表される。通常の液晶材料には光の波長に対してが2.5-5倍のものが使われている。
  33. ^ NBモードでの電圧が無印加の場合には、原理的には光がすべて遮断されるが、実際にはパラレルニコルの間の液晶による90度の旋光では波長依存性によってすべての光が正しく90度に旋光するわけではなく、若干の光の漏れが生じて真っ暗にはならず、また黒に近い表示では着色が生じる
  34. ^ 現在でも、表示部のバックグラウンドを暗表示として数値を明表示にする数値表示を実現したいというデザイン上の必要性がある場面では、時計など簡便な表示を用いる機器の表示部にTN型のNBモードが利用されることもあるが稀である。
  35. ^ DSTNやFSTNを含むSTN型が開発された背景として、1990年代初頭までは、TN型液晶でアクティブ・マトリクス駆動をおこなってドット数を増やすために必要なアクティブ素子(TFT素子)の量産性が低く、家電製品として普及させるには課題があった。また、多様な携帯機器の登場によってTN型のアクティブ・マトリクス駆動に代わる量産性の高い低コストの液晶表示器に対する要求も高まっていた。そういった中で、STN型が開発され、ハイデューティ駆動が可能であり、能動素子が不要なことから一時期広く利用された。特に、FSTN型では、色づきが低減できてカラーフィルタを組み合わせるとカラー表示が可能なことから、アクティブ・マトリクス駆動のTN型ディスプレイがまだ高価な期間に採用された。廉価である利点があったが、TFT液晶の低価格化や視野角特性、応答特性がTN型に比べて劣るなどの理由により採用は減っている。TN方式と比較するとアクティブ素子を作る難しさはないが、その一方で、液晶層の厚みの均一化、プレチルト角の精密な制御など、液晶パネルの製造技術としては高度な生産管理技術が求められる。
  36. ^ TN型はアクティブ・マトリクス駆動でも利用されているが、単純マトリクス駆動と比べると要求される表示品位が異なるため、設計パラメータは異なる。
  37. ^ 液晶パネルのサブ画素を透過部と遮光部とに分けた場合の全体に占める透過部の面積比。
  38. ^ 電圧印加時の画素内の配向が1つの回転方向にある場合には、視野角が広いものの、傾斜方向からの観察を行うと傾斜方位(画面に向かって傾斜させるときの傾斜の方位)に依存するような色づき(色度変化)が残ってしまうが、これは、液晶の回転する方向が互いに逆となる領域を画素内に設けるような電極構成をとることにより、互いに相殺しあって小さくされている。
  39. ^ IPS型の派生形式には日立のS-IPS (Super-In Plane Switching) 型、NECのSA-SFT型がある。IPSは日立ディスプレイの登録商標である。
  40. ^ 日本のシャープ社では新たにUV2Aという液晶表示モードを開発し、2009年10月から堺工場と亀山第2工場で従来のASV型の生産を全面的に切り替えると発表した。このUV2A型は配向膜に特殊な高分子材料と紫外線を使うことでリブやスリットが不要になり、紫外線照射設備は新たに必要とするものの全体で生産効率が向上するだけでなく、開口率が20%拡大、光漏れが低減しコントラスト比が1.6倍、応答速度が4ms以下と従来の2倍と性能も大きく向上するとしている。
  41. ^ MVA型には、ディスプレイ・メーカーによってそれぞれの工夫が加えられて名称も異なるものが付いている。例えばシャープはCPA (Continuous Pinwheel Alignment) 型とASV (Advanced Super View) 型、MVA (Multi-domain Vertical Alignment) 型(MVA型は元は富士通のものだったが事業部がシャープに吸収された)、サムスン電子はPVA (Patterned Vertical Alignment) 型と呼んでいる。CPA型ではMVA型の特徴であり問題点でもあるドメインを形成せずディスクリネーションも発生させないように、従来は列状だった電極突起「リブ」を円錐形にすることで液晶分子の傾斜方向を360度全方向に均等に配向させている。応答速度も25ms程度と良好である。ただし、液晶分子が360度均等になると分子の長軸と偏光フィルムの偏光軸とが平行になる部分が生まれて光を透過しなくなるので、その方向だけが十字状に黒くなる。これを避けるために、カイラル剤によって配向に捩れを作り十字状の影を低減している。
  42. ^ Πセルと呼ばれるOCB用液晶分子の液晶材も2枚のガラス間に注入直後はスプレイ配向と呼ばれるほぼ面内方向を向いて整列しているが、最初に2V程度の電圧を1分ほど掛けると分子が弧を描いて並ぶOCB型の特徴的なベンド配向になり、以後は電界がなくともこれが維持される。
  43. ^ OCB型では、2009年7月現在で民生品では32型での試作段階である。
  44. ^ OCB型の高速応答性を利用して、フィールド・シーケンシャル・カラー (FSC) 方式の液晶ディスプレイが作られることもある。例えばサムスン電子は2005年10月にLEDバックライトを使うことでOCB型でFSC方式の32型カラーTVを発表している。
  45. ^ 液晶は固体と液体の中間的な状態を維持しているが、高温では液体状、低温では固体状になり、その中間の温度域では粘性流体となる。液晶の中で室温程度の温度範囲で液晶状態をとるサーモトロピック液晶と呼ばれるものが液晶表示に使用される。サーモトロピック液晶にはネマティック液晶(コレステリック液晶が含まれる)、スメクティック液晶(リエントラント液晶が含まれる)、高分子液晶、ディスコティック液晶が存在するが、液晶表示にはネマティック液晶の一種で光学活性を持つカイラルネマティック液晶の使用が多い。液晶表示では、液晶材料に電界を掛けることで光の異方性を示す電気光学的カー効果を利用してフレデリクス転移と呼ばれる液晶分子の再配列を行い、偏光の制御によって画像を表示している。
  46. ^ 液晶の「長軸」とはディレクタ(director、ダイレクター)と呼ばれる分子の統計平均的な配向方向を指す。
  47. ^ ネマティック液晶による交流駆動の各電圧の変化に追従してすべての液晶分子が特定の方向に向きを整然とそろえて並び終えている訳ではない。すべての分子は熱的揺らぎによって振動や多少の回転運動を起こしており、室温近辺である限り電界の有無にかかわらずこの運動は常に起こり、必ずしもすべてが正しく並ぶのではなく無数の分子を集合的に見れば、全体としては平均化されることで特定の方向にきれいに並んでいるのとほとんど同じ効果が得られている。また、分子の長軸を大きく振り回して180度回転するよりも、長軸を軸にしてコマのようにその場で回転する方が、熱的揺らぎにしても電界による駆動にしても変化が早く行え、また周囲との相互作用もあるため、こういった運動方向や種類の違いで液晶の反応時間が3桁ほども変わってくる。
  48. ^ 一方の偏光を吸収するため透過率が50%、実用的なものでは約42%しかない。
  49. ^ 第10世代のマザーガラスはシャープの大阪堺工場の新たな製造ラインで2009年10月から稼動した。
  50. ^ シャープ社が開発したUV2A型では、配向膜に特殊な高分子材料を使い、表示面に対して斜めから照射された紫外線に向けてこの高分子の主鎖が配列することで斜め方向に傾いた精密な配向膜が作れる。リブやスリットが省け性能も向上するとしている。UV2AはUV(紫外線)を使用したVAという意味である。
  51. ^ ベース基板のTACの代わりにポリエチレンテレフタレート (PET, Polyethylene terephthalate) やポリカーボネート (PC, Polycarbonate) を使うことも検討されている。
  52. ^ 通常の流通では、液晶テレビ、液晶モニター、携帯電話端末などの製品に取り付ける部品として流通するのは液晶モジュールであり、液晶テレビにおいては、液晶パネルは製造原価の6割から7割を占める主要な部分である。
  53. ^ ACF (Anisotropic Conductive Film) は熱硬化型の樹脂フィルムであり、エポキシ樹脂アクリル樹脂の基材に熱硬化反応材が混ぜられ、内部にはニッケルをメッキした直径3-5μm程の樹脂ボールが無数に分散されている。TABモジュールは液晶パネルの接続部との間にACFが挟まれ精確な位置合わせの後に、加圧・加熱される事で樹脂ボールの金属によって導通が得られた状態で樹脂の硬化が進み、そのまま液晶パネルの端部にTABモジュールが固定される。
  54. ^ TABモジュールと液晶パネルを取り付ける部分の端子間隔は広くても0.4mmピッチのOLB (Outer lead bonding) により通常はACFで接続され、TABモジュールと駆動用プリント基板は端子間隔が1.0-0.3mmのILB (Inner lead bonding) により通常はACFかハンダで接続される。"Outer"と"Inner"はTABモジュールから見た名称である。
  55. ^ 駆動用プリント基板はガラスエポキシ製であり、耐熱温度130℃程度と高熱に弱く、接続端子は分厚く柔らかな銅箔製でTABモジュールの実装時のACFをそのまま使えば微小な樹脂ボールが銅の内部へとめり込んで圧接できない。このため、プリント基板用には低温で硬化する樹脂と樹脂ボールに加えてニッケルや半田などの金属粒子も加えられている。
  56. ^ 熱陰極蛍光管は始動電圧が低いが寿命が連続点灯で3,000時間と短く、CCFL(冷陰極管)はフィラメントを持たないので始動に高電圧を必要とするが振動に強く寿命は連続点灯で20,000時間と比較的長い。CCFLは細くできるので、直径が2mm程度のものまで使用されている。
  57. ^ 「フロート」はAGCの商標である。
  58. ^ オリエンテーション・コーナーでは1つの角を5mm程、3角形に欠け落とす。
  59. ^ TFTパネルの製造工程では半導体製造工程に近い環境の清浄度が求められる。半導体ではほとんど全面が微細な回路で構成されているため、またTFTパネルのトタンジスタ回路よりさらに微細な回路であるために、許容されるゴミの大きさはより小さく、例えば0.1μm以下でも故障の原因となるので、TFTパネルよりもさらに厳密な管理が求められるが、半導体の製造では1つのゴミは1個のダイ(半導体の小片)を不良にするだけで済むのに対して、TFTパネルの製造工程では1つのゴミは1枚の大きなパネル全体を不良にする危険があり、例えば20型ディスプレイでは1.3m平方以上の面積のどこにも1μmのゴミがあってはならない。同様に温度管理も重要であり、1m程の基板では温度が1℃変わるだけで約5μm収縮して露光位置がずれる。
  60. ^ 金属クロムは遮光性は十分だがディスプレイ表面から浸入する入射光はガラス面も含めると約60%も反射してしまうため、酸化クロムも含めた2層以上に積層することで層間での反射光同士を逆位相にして打ち消し合わせる工夫も行われる。金属クロムは有害物質であるため、電気製品一般に使用されるハンダの鉛と同様にヨーロッパ圏では避けられる。このため、カーボンブラックなどを樹脂に混ぜた「ブラックレジスト」と呼ばれる材質に変える動きがあり、極めて低反射になる点でも有利となる。
  61. ^ 「ラビング」は三洋電機の登録商標である。
  62. ^ 液晶の充填方法には「真空注入法」と「滴下注入法」があるが、真空注入法では圧力と毛細管現象で内部に吸い込むが、狭い平面に粘度のある液晶を流動するのに時間がかかり、15インチで半日以上、大画面では十数時間から最大1日以上かかるなど生産性に問題が生まれたため、片面に規則的に等間隔に数滴落としてからもう片面を張り合わすという滴下注入法(ドロップフィーリング)が開発された。滴下注入法では基板切断工程を注入後に行うことも可能になった。
  63. ^ 日本のシャープが作った「EL-805」が最初の小型液晶電卓である。これはDSM (Dynamic Scattering Mode) で15-20Vの電圧を必要とするものだった。
  64. ^ 1999年には20型のTFT型液晶カラーTVが発売された。
  65. ^ 2005年には65型のTFT型液晶カラーTVが発売された。
  66. ^ 第十世代のマザーガラスは4畳半の床面積になる。
  67. ^ 大型パネルの生産に大きな設備投資が求められる例としては、シャープの亀山第一工場(第6世代、マザーガラス6万枚/月)で1,650億円、同亀山第二工場(第8世代、マザーガラス9万枚/月)で3,500億円、サムスン-LCDの牙山工場(第7世代、マザーガラス7.5万枚/月)で2,100億円相当、LGフィリップスのは坡州工場(第7.5世代、マザーガラス9万枚/月)で5,300億円相当、台湾のAUOの台中工場(第7.5世代、マザーガラス6万枚/月)で3,000億円相当である。
  68. ^ 亀山第二工場は2009年8月よりマザーガラス10万枚/月に引き上げた。
  69. ^ 「クリスタルサイクル」としては、1994年と1997年は好調だったが1995年、1998年、2002年には低迷した。
  70. ^ 液晶それ自体が発光しないという光学的な特徴は、構成部品数が増えることで液晶パネルの多様性の一因となっている。
  71. ^ これ以外に、液晶の表示モード(TN型、VA型、IPS型など)にも依存する。いずれにしても、光学的特性や製造の容易さ等の他の要因があるため、応答速度の観点のみからこれらのパラメータを決定できるわけではない
  72. ^ 特に、液晶の応答時間が完全に0であっても、ホールド駆動をする限り残像は避けられないため、近年はむしろ駆動方法の改良が進められている。実際、液晶パネルの種類によっては、物理的な配向変化による応答時間は全く問題がなく、その速度を利用して専用メガネと組み合わせて別々の映像を左右の眼に対して与える3D映像を実現できるほどになりつつある
  73. ^ これに対して、ブラウン管の駆動では、電子の衝突位置を掃引(スキャン)するように動作する。このため、瞬間的には、画面全体のうちで発光しているのは、ある走査線の一部(電子の衝突後、蛍光体の残光によって発光している範囲)のみである。このような駆動を(ホールド駆動と対比させて)インパルス駆動という。インパルス駆動で画面全体が表示されるのは、人の目における残像効果が寄与している
  74. ^ このためには、表示する映像データにおいて得られる画像フィールドデータ(例えば1/60秒に1枚の割合のデータ)から、中間の画像フィールドデータを生成する必要がある。その処理には、画像処理のための高速なプロセッサと大量のメモリ、そして動画の画像フィールドデータから中間の画像(倍速では、前後の画像フィールドデータから1つの画像フィールドデータ、4倍速ではさらに中間の画像フィールドデータ)を適切に生成できる洗練された画像処理技術を必要とする。このような「力技」的な技術が実用化された背景には、単に液晶ディスプレイが巨大産業になったばかりではなく、半導体の低価格化が大きく寄与している。
  75. ^ 液晶表示の電卓やデジタル時計を、様々な角度から眺めるとモノクロ表示の場合は、単にコントラストの問題だが、カラー表示の場合は3色のコントラストの組み合わせによりカラーを表示しているので、見やすい角度と見えにくい角度が色毎に異なる(屈折率の波長依存性)。
  76. ^ VA方式の例にはASV液晶がある。
  77. ^ VA方式の例にはASV液晶がある。
  78. ^ 通常は暗室で測定されるため、「暗所コントラスト」とも云う。
  79. ^ コントラスト比を大きくできない詳しい要因は、偏光フィルタの偏光度が完全に100%ではないこと、液晶層やカラーフィルタ等により偏光が若干解消されるため、視野角によっては表示光が漏れてきてそれが見えるため等である。このため、液晶ディスプレイで映画などの暗い画面を映すと、「漆黒の闇」の表現が難しくなり、テレビなどの映像用途に液晶パネルを用いる場合の技術課題となっている。
  80. ^ 携帯機器では小型軽量化への要求と電池容量のトレードオフの関係が年々厳しくなっている事情があり、また、大画面の用途では、ブラウンTVの買い替え時により大きな画面の液晶TVが選ばれる傾向があり、液晶TVとプラズマTVの消費電力競争という背景もある。
  81. ^ 原理は全く異なるが、メモリー性液晶表示機に似た動作が可能な物に電子ペーパーがある。
  82. ^ 明暗のダイナミックレンジの向上とは、例えば闇夜の映像では真っ暗な画面が求められるため、光源も輝度を落とせばより黒がはっきりすることで、画面上の明暗の表現幅が広がることを云う。
  83. ^ エリア制御の中には、部分的な明暗だけでなく色調まで変化させることで、例えば真っ赤なリンゴの背後のLEDでは赤色だけを発光させるといった制御を行うことで色純度を向上させるものが現れている。
  84. ^ コレガは2007年に衝撃に強い光沢硬化ガラス保護フィルタ付き液晶モニターを発売した。ASUS社の液晶モニターLS201はダイヤに近い9hの硬度をもち、ボウガンで射撃されても鉄製の矢尻のほうが損傷するほどである。
  85. ^ 液晶モジュールの表示性能は、バックライトユニットの発光特性と組み合わせて設計されていて、液晶モジュールの品種だけの各種のバックライトを補修目的でそれだけで保有することが現実的でないこと、実際の作業の際にも、バックライトユニットの大きさは画面と同じ大きさであり、特に大型の液晶テレビなどではバックライトを輸送すること自体が本体の輸送と変わらないこと、液晶パネルとバックライトの間に異物(ホコリ)が進入すると表示欠陥につながり、設置場所での作業は大型になればそもそも難しいこと、バックライトが寿命となるような段階で、上記の費用をかけるだけの価値がその他の部分に残存している状況はデジタル機器では考えにくいこと、などのためである。なお、バックライトが冷陰極管を光源とするものの場合には、冷陰極間を点灯させるためのインバータ回路が動作不良となることもあり、外観上正常なのに画面が突然全く点灯しなくなるような故障ではその確率が高い。インバータ回路は、液晶モジュールとは別部品であることが多く、液晶モジュールの交換などに比べて安価に修理できることがある(なお、通電時に高電圧となる部位があり危険なので専門家に依頼すること)
  86. ^ ノングレア表示では、外光が表面でわずかに反射する。このため映り込みの像が消失するものの、画面全体のコントラストを悪化させ、色純度を低下させる。これに対し、光沢表示では、コントラストが高く色純度の高い表示が可能であるものの、テキスト処理が主体のパソコン一般作業では、映り込みが表示に重なり疲労を増大させる欠点がある。なお、PDPにおいてノングレア処理のフィルムを表面に配置して映り込みの抑制が検討されたが、うまくいかなかった。厚いガラス等のために表示層から遠く離れている最表面の散乱が、表示内容にも影響してしまった。

出典

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  17. ^ a b LCDドライバ内蔵マイコン
  18. ^ 松川文雄著 『ディスプレイデバイス』、森北出版、2008年2月29日初版第1刷発行 ISBN 9784627773417
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  20. ^ 『ニュースランキング』 「日経エレクトロニクス」 2009年3月9日号 P.101
  21. ^ トランジスタ技術編集部編 『小型液晶ディスプレイの選び方と使い方』、CQ出版社、2006年5月15日初版発行、ISBN 4789841219
  22. ^ 『参加者激減のSID』日経エレクトロニクス2009年6月29日号






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