コイ 保全状態

コイ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/23 05:10 UTC 版)

保全状態

アレクサンダー・フランシス・ライドンによるコイ。

野生種本来の分布域に生息する個体群は、河川の改修にともなう生態系の破壊や、他地方からの移入個体との交雑による遺伝子汚染による在来個体群の絶滅が危惧されており、2008年に国際自然保護連合により危急(Vulnerable)に指定されている。

文化

食材

コイの栄養価の代表値
コイ(生)
100 gあたりの栄養価
エネルギー 531 kJ (127 kcal)
0 g
糖類 0 g
食物繊維 0 g
5.6 g
飽和脂肪酸 1.083 g
一価不飽和 2.328 g
多価不飽和 1.431 g
17.83 g
トリプトファン 0.2 g
トレオニン 0.782 g
イソロイシン 0.822 g
ロイシン 1.449 g
リシン 1.638 g
メチオニン 0.528 g
シスチン 0.191 g
フェニルアラニン 0.696 g
チロシン 0.602 g
バリン 0.919 g
アルギニン 1.067 g
ヒスチジン 0.525 g
アラニン 1.078 g
アスパラギン酸 1.826 g
グルタミン酸 2.662 g
グリシン 0.856 g
プロリン 0.631 g
セリン 0.728 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(1%)
9 µg
(0%)
0 µg
0 µg
チアミン (B1)
(10%)
0.115 mg
リボフラビン (B2)
(5%)
0.055 mg
ナイアシン (B3)
(11%)
1.64 mg
パントテン酸 (B5)
(15%)
0.75 mg
ビタミンB6
(15%)
0.19 mg
葉酸 (B9)
(4%)
15 µg
ビタミンB12
(64%)
1.53 µg
コリン
(13%)
65 mg
ビタミンC
(2%)
1.6 mg
ビタミンD
(165%)
988 IU
ビタミンE
(4%)
0.63 mg
ビタミンK
(0%)
0.1 µg
ミネラル
ナトリウム
(3%)
49 mg
カリウム
(7%)
333 mg
カルシウム
(4%)
41 mg
マグネシウム
(8%)
29 mg
リン
(59%)
415 mg
鉄分
(10%)
1.24 mg
亜鉛
(16%)
1.48 mg
マンガン
(2%)
0.042 mg
セレン
(18%)
12.6 µg
他の成分
水分 76.31 g
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)
コイ(100g中)の主な脂肪酸の種類[17]
項目 分量(g)
脂肪 5.6
飽和脂肪酸 1.083
一価不飽和脂肪酸 2.328
16:1(パルミトレイン酸 0.655
18:1(オレイン酸 1.15
20:1 0.071
22:1 0.402
多価不飽和脂肪酸 1.431
18:2(リノール酸 0.517
18:3(α-リノレン酸 0.27
18:4(ステアリドン酸 0.058
20:4(未同定) 0.152
20:5 n-3(エイコサペンタエン酸(EPA)) 0.238
22:5 n-3(ドコサペンタエン酸(DPA)) 0.082
22:6 n-3(ドコサヘキサエン酸(DHA)) 0.114

コイは漁・養殖が共に盛んで、世界中の多くの地域で食べられている。

日本

食材としての鯉は、福島県からの出荷量が最多[18]で、鯉こく(血抜きをしない味噌仕立ての汁)、うま煮(切り身を砂糖醤油で甘辛く煮付けたもの)、甘露煮にする。稀に唐揚げし、スナック菓子のように食べることもある。また、洗いにして酢味噌や山葵醤油を付けて食べる例もある。しかし、生食や加熱不完全な調理状態の物を摂食すると、肝吸虫[19]有棘顎口虫 (Gnathostoma spinigerum) による寄生虫病を発症する可能性がある[20][21]。捕獲した鯉は、調理に際しきれいな水を入れたバケツの中に半日-数日程入れて泥の臭いを抜く。さばくときは濡れた布巾等で目を塞ぐとおとなしくなる。

藍藻ゲオスミンや2-メチルイソボルネオールを作り、これが皮膚血合肉に濃縮される。このゲオスミンが、鯉やナマズなど水底に棲む淡水魚が持つ泥臭いにおいのもとでもある。ゲオスミンは酸性条件で分解するので、など酸性の調味料調理に使えば泥臭さを抑えることができる。

海から離れた地域では古くから貴重な動物性タンパク源として重用され、将軍天皇に出される正式な饗応料理や日常的にも慶事・祝事の席などでも利用されてきた[22]。卵をもつ真子持ちのうま煮やあらいの切り身の見た目から雌のほうが重宝される[3]

かつてサケブリの入手が困難であった内陸地域では、御節料理の食材などとして今日でも利用されている。山形県米沢市では米沢上杉藩政時代の9代藩主上杉治憲(鷹山)1802年に相馬から鯉の稚魚を取り寄せ、冬期間のタンパク源などとして鯉を飼うことを奨励した。各家庭の裏にある台所排水用の小さな溜めで台所から出る米粒や野菜の切れ端を餌にして蓄養した。同様の条件で養蚕が盛んだった福島県郡山市ではが餌とされ、やがては生産量日本一にまで成長した[23]。現在の養殖では、主に農業用の溜め池が利用されるほか、長野県佐久地域では稲作用水田も利用されている。食生活の変化から需要の減少[24]と共に全国の生産額は年々減少し、1998年には3億6000万円ほどであったが2008年には1億5000万円余りまで減少している[25]

中華人民共和国

中華料理では、山東省に鯉1尾を丸ごとから揚げにして甘酢あんをかけた料理「糖醋鯉魚」(タンツウリイユィ)があり、日本でも代表的な宴会メニューの1つとなっている。

中国では年始の供え物や食べ物として川魚を用いることが多く、最もポピュラーな魚が鯉である[26]

ヨーロッパ

鯉は中欧東欧では、古くからよく食べられている。特にスラヴ人にとっては鯉は聖なる食材とされ、ウクライナポーランドチェコスロバキアドイツベラルーシなどでは伝統的なクリスマス・イヴの夕食には欠かせないものである。東欧系ユダヤ教徒安息日に食べる魚料理「ゲフィルテ・フィッシュ」の素材としても、鯉がよく用いられた。しかし北米では、鯉は水底でえさをあさるために泥臭いとして敬遠されており、釣り(遊漁)の対象魚とはされても食材として扱われることは極めてまれである。ヨーロッパでは、鏡鯉から食用に品種改良され家畜化された鱗のない鯉、革鯉(Leather carp)と呼ばれる鯉が使われる。

食中毒

コイの胆嚢(苦玉)は苦く、解体時にこれをつぶすと身に苦味が回る。胆嚢にはコイ毒(毒性物質は胆汁酸の5-αチブリノールとスルフェノール)が含まれている場合があり、摂食により下痢嘔吐腎不全、肝機能障害、痙攣麻痺、意識不明を引き起こすほか、まれに死亡例もある[27][28]。その反面、視力低下やかすみ目などに効果があるとされ、鯉胆(りたん)という生薬名で錠剤にしたものが販売されている。

釣り

観賞魚・錦鯉

伝承

月岡芳年画:『金太郎捕鯉魚』

中国では、鯉が滝を登りきるとになる登龍門という言い伝えがあり、古来尊ばれた。その概念が日本にも伝わり、江戸時代に武家では子弟の立身出世のため、武士の庭先で端午節句旧暦5月5日)あたりの梅雨期のの日に鯉を模したこいのぼりを飾る風習があった。明治に入って四民平等政策により武家身分が廃止され、こいのぼりは一般に普及した。現在では、グレゴリオ暦新暦5月5日に引き続き行なわれている。 また比喩的表現として、将来、有能・有名な政治家・芸術家・役者になるため最初に通るべき関門を登龍門と指して言うこともしばしばある。

日本書紀』第七巻には、景行天皇美濃岐阜)に行幸した時、美女を見そめて求婚したが、彼女が恥じて隠れてしまったため、鯉を池に放して彼女が鯉を見に出てくるのを待った、という説話が出てくる。

日本では古くから女性が健康(体力作り)のために鯉を食したと言う伝説や伝承があり、妊婦が酸っぱい鯉を食べて健康になり、無事、安産できたと言う伝説もある。また、御産の後に鯉を食べると母乳がよく出ると言う伝承も見られる。こうした話は東西を問わず内陸地には多い伝承である。

脚注


注釈

  1. ^ 同様の問題はメダカ金魚に関してもいえることではある。

出典

  1. ^ a b c Freyhof, J. & Kottelat, M. (2008). “Cyprinus carpio”. IUCN Red List of Threatened Species 2008: e.T6181A12559362. doi:10.2305/IUCN.UK.2008.RLTS.T6181A12559362.en. https://www.iucnredlist.org/species/6181/12559362 2023年10月12日閲覧。. 
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p コイ”. 神奈川県. 2019年12月24日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g コイ”. 茨城県. 2019年12月24日閲覧。
  4. ^ Cyprinus carpio summary page”. FishBase. 2023年10月19日閲覧。
  5. ^ a b Jian Feng Zhou, Qing Jiang Wu, Yu Zhen Ye & Jin Gou Tong (2003). Genetic divergence between Cyprinus carpio carpio and Cyprinus carpio haematopterus as assessed by mitochondrial DNA analysis, with emphasis on origin of European domestic carp Genetica 119: 93–97
  6. ^ Craig, J.F., eds. (2015). Freshwater Fisheries Ecology. p. 297. Wiley-Blackwell. ISBN 978-1-118-39442-7.
  7. ^ Zhou, J., Wu, Q., Wang, Z. and Ye, Y. (2004). Molecular Phylogenetics of Three Subspecies of Common carp Cyprinus Carpio, based on sequence analysis of cytochrome b and control region of mtDNA. Journal of Zoological Systematics and Evolutionary Research 42(4): 266–269.
  8. ^ Taylor, J., R. Mahon. 1977. Hybridization of Cyprinus carpio and Carassius auratus, the first two exotic species in the lower Laurentian Great Lakes. Environmental Biology Of Fishes 1(2):205-208.
  9. ^ Photo of goldfish x common carp hybrid in Melton Hill Reservoir from the Tennessee Wildlife Resources Agency
  10. ^ The Wonder Nature 魚類”. tayouseinet-ngt.sakura.ne.jp. 生物多様性保全ネットワーク新潟. 2023年8月10日閲覧。
  11. ^ 森秀人『わくわくチャレンジブックス-1 川づり』株式会社フレーベル館、1997年、22ページ、ISBN 4-577-01818-7
  12. ^ 馬渕浩司、瀬能 宏・武島弘彦・中井克樹・西田 睦「琵琶湖におけるコイの日本在来mtDNAハプロタイプの分布」『魚類学雑誌』第57巻第1号、日本魚類学会、2010年4月26日、1-12頁、doi:10.11369/jji.57.1ISSN 00215090NAID 40017117020 
  13. ^ 馬渕浩司(2013年6月2日)「絶滅危機!日本のコイ」『サイエンスZERO』第427回。NHK教育テレビジョン
  14. ^ シーボルト『日本動物誌魚類』京都大学電子図書館。
  15. ^ a b c 日本魚類学会自然保護委員会、向井貴彦・鬼倉徳雄・淀大我・瀬能宏『見えない脅威“国内外来魚”』東海大学出版会、2013年7月10日。ISBN 978-4-486-01980-0 
  16. ^ “五大湖、コイから守れ=5州の訴え実らず-米”. 時事通信. (2012年3月2日). http://www.jiji.com/jc/c?g=int_date1&k=2012022800652 2012年3月2日閲覧。 [リンク切れ]
  17. ^ USDA National Nutrient Database
  18. ^ 内水面養殖業収獲量 都道府県別・魚種別収獲量 農林水産省[リンク切れ]
  19. ^ こんなに怖い寄生虫 厚生労働省検疫所
  20. ^ 口虫(1/11) ※平成 22 年度食品安全確保総合調査 食品安全委員会 (PDF)
  21. ^ 喉頭顎口虫症の1例 耳鼻と臨床 Vol.4 (1957-1958) No.1 p.61-64
  22. ^ 中澤弥子、鈴木和江、小木曽加奈、吉岡由美、コイ刺身の食味と物性 : 佐久鯉と福島産鯉の比較 長野県短期大学紀要 63 (2008): 25-31, NAID:40016621269
  23. ^ 産業・ビジネス・観光 > 農業・林業 > 農産物など > 郡山の鯉 郡山市
  24. ^ 【原著】霞ヶ浦における魚類および甲殻類の現存量の経年変化 陸水学雑誌 Vol.74 (2013) No.1 P1-14
  25. ^ 年次別統計 (平成10年〜平成20年)/魚種別生産額 - 内水面養殖業 農林水産省
  26. ^ 鷲尾紀吉, 劉明「中国と日本の正月行事」『中央学院大学人間・自然論叢』第29号、中央学院大学、2009年、3-22頁、2019年10月21日閲覧 
  27. ^ 神戸市:特集 マリントキシン”. 神戸市 保健福祉局 予防衛生課. 2016年5月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年12月24日閲覧。
  28. ^ 自然毒のリスクプロファイル:魚類:胆のう毒 厚生労働省






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