アルコール乱用とは? わかりやすく解説

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アルコール乱用

読み方あるこーるらんよう
【英】:alcohol abuse

アルコール乱用とは、家庭社会生活上、著明障害苦痛引き起こす飲酒仕方で、かつアルコール依存症ではないものです。

 アルコール乱用とは、米国精神医学会APA)の「精神疾患の分類と診断の手引第4版改訂版DSM-Ⅳ-TR)にもとづきわかりやすく解説すると、家庭社会生活する上で著明障害苦痛引き起こす飲酒仕方で、かつアルコール依存症ではないものといます。さらに同手引によると、以下のうち少なくとも1つが、12カ月以内起こりアルコール依存症ではない場合にアルコール乱用であるといえます

(1)繰り返し飲酒した結果仕事学校、または家庭重要な役割義務を果たすことができなくなる。
(例:飲酒関連した欠勤繰り返し仕事能率低下飲酒関連して学校欠席したり、停学退学になったりする。飲酒のために育児家事無視する。)

(2)身体的険のある状況繰り返し飲酒をする。
(例:飲酒により能力低下している時でも、自動車の運転機械操作をする。)

(3)飲酒関連した法律違反繰り返し起こす
(例:飲酒関連した不法行為により逮捕される。)

(4)持続的反復的な社会的または対人関係問題アルコール影響により引き起こされたり、悪化したりしているのにもかかわらず飲酒継続する
(例:飲酒のために起こったことで配偶者口論暴力を伴うけんかをする。)


アルコール乱用

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/15 08:51 UTC 版)

アルコール乱用
飲酒者が辿る過程("The Drunkard’s Progress"),1846年
概要
診療科 精神医学
分類および外部参照情報
ICD-10 F10.1
ICD-9-CM 305.0
MeSH D000437
薬物に関する専門家による、乱用薬物の有害性の順位付け。(デビッド・ナットら、薬物に関する独立科学評議会(ISCD)、『ランセット』、2010年、PMID 21036393。)

アルコール乱用(アルコールらんよう、Alcohol abuse)とは、有害なエタノール利用を繰り返す行為に対してのネガティブな精神医学的診断名である[1] 酒害 しゅがいともされ、「飲酒」に起因する身体的・社会的害悪を示す。 酒害者 しゅがいしゃは断酒会で用いられる言葉で、飲酒者本人、とりわけアルコール依存症であって断酒を目指す者をさす。

乱用者には二種類のタイプがあり、ひとつは反社会的で喜びを追い求める人、もう一つは不安を抱え長期間断酒しているが、しかし一度飲み始めると自分自身をコントロールできない人である[2]。また過度飲酒英語版も一つの乱用タイプであり、最も過度の飲酒をするのは英国の青年層である[3]

世界のアルコールによる死者は、WHOは毎年250万人(総死亡の5.9%)[4]、OECDは毎年約330万人[5]と推定している。またアルコールによる生産性損失は、EU全体においては590億ユーロとOECDは推定している[6]

定義

米国での単位(Standard drink)

過度飲酒(binge drinking)は、米国においては男性で5単位(Standard drink)以上、女性で4単位以上の飲酒と定義されている。それを超えると、ヴァンダリズム、喧嘩、暴力行動、怪我、飲酒運転、警察とのトラブル、健康への悪影響、社会経済的・法的問題をまねく確率が増加する[7]。さらに過度飲酒は、前頭葉処理の神経認知欠損、ワーキングメモリの不全、聴覚遅延、言語記憶障害らと関連づけられている[7]

月曜日は、過度飲酒および職場に出勤することへのストレスによって、心臓発作で死亡する要素の一つとなっている[8]。アルコール依存症となるリスクは、男性で毎週15単位以上、女性で12単位以上飲酒している場合に大幅に高まる[9]

過度飲酒を防止する一つの方法は、法的飲酒年齢を上げることと言われている[10]

症状

ジン横丁(ウィリアム・ホガース,1751年)

身体的害悪は飲酒者本人への害である。急性アルコール中毒死、酩酊状態における交通事故、身体の不調などがある。また習慣的な多量飲酒は、生活習慣病がんうつ認知症、消化器その他の内臓疾患などのリスクを高める。社会的害悪は、飲酒者周辺への害である。第三者に対しては飲酒運転、暴力、労働災害など、家族に対してはDV虐待などを引き起こし家族のストレス、トラウマ、労苦は大きい。

暴力

胎児

産婦の飲酒禁止を呼びかけるラベル

妊娠時の飲酒は胎児性アルコール症候群を引き起こす。

児童青年

社会と文化

世界

過去12か月に危険飲酒(Hazardous drinking)した確率[11]
性別 教育レベル 豪州 カナダ イングランド フィンランド フランス ドイツ ハンガリー アイルランド 日本 韓国 スペイン スイス 米国
男性 低学歴 15% 6% 18% 13% 2% 11% 7% 10% 25% 30% 16% 10% 13%
中学歴 18% 7% 21% 16% 3% 12% 7% 10% 24% 24% 12% 9% 10%
高学歴 12% 6% 23% 15% 2% 15% 4% 9% 20% 15% 13% 8% 8%
女性 低学歴 8% 1% 9% 3% 1% 4% 1% 2% 4% 5% 4% 3% 4%
中学歴 10% 2% 15% 4% 1% 5% 1% 3% 6% 4% 5% 3% 4%
高学歴 11% 3% 20% 6% 1% 9% 1% 3% 5% 2% 6% 5% 4%

日本

日本においては、飲酒による死亡者は3万4988人(2008年)で、総死亡の3.1%を占めており、その社会的費用は4兆1483億円と推定されている(2008年)[12]

アルコール依存者は80万人と推定されているが、うちその95%が未治療のままであった[12]

多量飲酒者
857万人[12]
アルコール依存者とその予備軍
440万人[12]
治療が必要なアルコール依存者
80万人(うち、治療につながった患者は5%)[12]

予防

アルコールの価格を手頃ではない価格に設定することは、アルコール問題を削減する最も適切な方法だとNICEは勧告している[13]。また、ある地域におけるアルコール販売店の店舗数と、販売時間帯を削減することも効果的な方法であると報告されている。さらにアルコールの広告への露出を減らすことで、子供や若者に影響を保護できるという証拠がある[13]

国民保険サービス (NHS) の従事者については、成人受診者に対しては日常業務としてアルコールのスクリーニング検査を行うことは不可欠であると勧告されている[13]

脚注

  1. ^ Diagnostic and statistical manual of mental disorders : DSM-5. (Fifth edition. ed.). (2013). pp. 490. ISBN 9780890425572 
  2. ^ Neil R.Carlson, C.Donald Heth. "Psychology: The Science of Behaviour". Pearson Canada Inc,2010, p.572.
  3. ^ McArdle, Paul (2008-02-27). “Alcohol abuse in adolescents”. BMJ 93 (6): 524–527. doi:10.1136/adc.2007.115840. PMID 18305075. 
  4. ^ WHO 2010, p. 3.
  5. ^ OECD 2014, p. 82.
  6. ^ OECD 2014, p. 75.
  7. ^ a b Courtney, Kelly E; Polich, John (January 2009). “Binge drinking in young adults: Data, definitions, and determinants”. Psychological Bulletin 135 (1): 142–56. doi:10.1037/a0014414. PMC 2748736. PMID 19210057. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2748736/. 
  8. ^ Phil Barker (7 October 2003). Psychiatric and mental health nursing: the craft of caring. London: Arnold. ISBN 978-0-340-81026-2. https://books.google.com/books?id=6qdoQgAACAAJ 2010年12月17日閲覧。 
  9. ^ Alcoholism and alcohol abuse”. PubMed Health. A.D.A.M., Inc.. 2012年12月3日閲覧。
  10. ^ Babor, TF.; Aguirre-Molina, M.; Marlatt, GA.; Clayton, R. (1999). “Managing alcohol problems and risky drinking”. Am J Health Promot 14 (2): 98–103. doi:10.4278/0890-1171-14.2.98. PMID 10724728. 
  11. ^ OECD 2014, Figure A.2..
  12. ^ a b c d e アルコール依存症者のリカバリーを支援するソーシャルワーク実践ガイド』(レポート)アルコールソーシャルワーク理論生成研究会、2014年http://www.alhonet.jp/ 
  13. ^ a b c PH24 :Alcohol-use disorders: prevention (Report). 英国国立医療技術評価機構. 2010年6月.

参考文献

臨床ガイドライン
国際機関・政府機関

関連項目

外部リンク


アルコール乱用

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 01:12 UTC 版)

産業精神保健」の記事における「アルコール乱用」の解説

「アルコール乱用」も参照 職場によっては、雇用者アルコール濫用依存リスクが高いことがある職種により様々ではあるが、建設業運送業は、ウェイター・ウェイトレス並みに高リスクであるとされる運送業においては大型トラック運転手荷物仕分人がとりわけリスクであるとされる。Epidemiologic Catchment Area studyECA)では、一年間隔のインタビューにてアルコール乱用・依存データ収集している。研究によれば調査対象男性のみであったが、コントロール性が少ないが大きな肉体的負荷のかかる職種労働者においてアルコール問題リスク増加するとしている。

※この「アルコール乱用」の解説は、「産業精神保健」の解説の一部です。
「アルコール乱用」を含む「産業精神保健」の記事については、「産業精神保健」の概要を参照ください。

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