アルコールと鎮静薬
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/10 01:53 UTC 版)
米国のデータでは、パニック障害患者の30%がアルコールを摂取し、17%がその他の向精神薬を使用している。これは米国では一般的に61%がアルコールを使用し、7.9%がその他の向精神薬を使用していることと比較してである。娯楽薬物の使用やアルコールの使用は、症状を悪化させる。カフェイン、ニコチン、コカインなどの覚醒作用を持つ薬物は心拍数などのパニック症状を増加させるので症状を悪化させる。 アルコールは初期のパニック症状を緩和させる一方、中長期のアルコール使用はパニック障害を引き起こしたり悪化させ、とりわけアルコール離脱症候群では顕著である。この現象はアルコールに限らず、同様の作用機序を持つ薬物でも同じである。とくにベンゾジアゼピンはアルコール問題のある患者に対し、精神安定剤として多く処方されている。慢性的なアルコール乱用が症状を悪化させるのは、脳内化学機能の変化のためである。 ベンゾジアゼピンの断薬時に患者の10%が遷延性離脱症候群を経験し、それにはパニック障害も含まれる。遷延性離脱症候群は、離脱時の最初の数ヶ月間の間に見られるものと似ている傾向にあり、たいてい離脱当初の2-3ヶ月の間に見られる症状に比べて亜急性の水準の重症度である。 精神保健サービスに参加する患者においては、彼らのパニック障害や社会恐怖などの不安障害は、アルコール乱用または鎮静薬乱用によるものであった。アルコールや鎮静薬は、元来の不安を継続させたり悪化させる。アルコール乱用者や慢性的な鎮静薬使用者は、そういった薬物乱用が根底にあるため、症状の根本原因に対応しなければ、その他の治療や薬物によって利益を得られていない可能性がある。鎮静状態からの回復は、アルコール離脱症候群やベンゾジアゼピン離脱症候群のため一時的に悪化する。世界不安評議会は、ベンゾジアゼピンによる長期の不安治療については、耐性、精神機能障害、認知や記憶障害、身体的依存、ベンゾジアゼピン離脱症候群のために推奨していない。
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