F-X開発
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「F-15 (戦闘機)」の記事における「F-X開発」の解説
海軍はTFX実用化断念後の1965年に、次期戦闘攻撃機VFAX(後に中止)や次期戦闘機VFX(後のF-14)の開発研究を開始していた。空軍もF-111どころかF-4さえ重すぎて制空戦闘に不適と考え、同年4月、F-Xの開発研究に着手した。 1966年3月、ノースアメリカン・ロックウェル、ロッキード、ボーイングの3社とTactical Support Aircraft(戦術支援機)に関する4ヶ月間の概念作成研究契約を締結した。同年9月3社の研究結果の評価を完了したが、開発方針の決定には至らなかった。その概要は以下の通りである。 機体重量約27トン(60,000lb+) 瞬間最大速度マッハ2.7、最大速度マッハ2.5 推力重量比0.75 F-111よりも良好な加速・上昇などの飛行性能を有し、可変後退翼を備える 中射程空対空ミサイル・爆弾を装備 この時期、1967年7月に行われたモスクワ・ドモジェドヴォ空港での航空ショーでMiG-25が突如出現し、上空を高速で通過していった。周到に演出されたこのフライパスのみならず、ソ連はこの航空ショーに、MiG-23・Su-15を初めとした試作機や実験機を含む多種の機体を第3世代ジェット戦闘機として出品し、これらに大きな衝撃を受けた西側の航空機専門家はソ連の意図通りにその実体以上の過大な評価を下した。アメリカ空軍首脳も公開された機体に対抗し得る機体を自軍に保有していないと考え、ソ連の爆撃機に加え、戦闘機にも危機感を募らせていった。 空軍での制空戦闘機の検討時期に、各方面のキーマンからファイター・マフィアと呼ばれる少人数のグループが出現していた。その中の一人、ジョン・ボイドは、自らのF-100による戦技教官としての経験の体系化とエネルギー保存則に基づいた空中(空戦)機動の理論であるエネルギー機動性理論を基にした判断により、F-Xの最初の提案要求(RFP)を却下し、最終版に改定した。 空軍は1967年8月にマクドネル・ダグラスおよびジェネラル・ダイナミクスの2社と戦闘機に関する6ヶ月の概念作成契約を締結した。 モスクワ航空ショーの翌年の1968年9月に、アメリカ空軍は国内の航空機メーカー8社と研究契約を結びRFPを出した。RFPの主な内容は以下の通りであった。 マッハ0.9、高度30,000フィートにおける高G機動で異常振動を生じない 上記空力特性を持つ翼を使い、広い飛行速度高度域で充分なエネルギー/運動能力を持つ 空中給油、または増槽のみで大陸間の長距離回送飛行が可能 搭載兵器は全任務に対して一人で操作可能 現実的な空対空戦闘を想定して4,000飛行時間の疲労寿命の安全係数を4として試験で証明する 最新の技術を利用した操縦席艤装を行い、特に近接格闘戦ではヘッドアップディスプレイを利用する 理論整備工数は1飛行時間あたり11.3人・時 構成機器の平均故障時間は上記整備工数内で対応 操縦席の視界は360°確保すること 主エンジンは機内設備のみで起動できること 機体構造、電気、油圧、操縦装置は戦闘状況下で無事に基地に帰投できる高度の生存性を持つ 対戦闘機戦闘装備状態の総重量は40,000ポンド(約18.1トン)級 サブシステム、構成部品、装備品は少なくとも試作品による実証済みのものに限る 最大速度は高空においてマッハ2.5 自機よりも低高度の監視能力を持つ長距離パルス・ドップラー・レーダーを備える これらに加え、試作競争は実施しないこととしていた。 1968年12月、提出された各社案を基にマクドネル・ダグラス、フェアチャイルド、ノースアメリカン・ロックウェルの3社を選出して、詳細提案のための6ヶ月の研究契約を結び、各社は期日通り設計案を提出した。フェアチャイルド社案は、胴体の両側の変形デルタの主翼の半幅にエンジンナセルを置き、二次元型空気取入口から排気口を一線上に配置した、双発一枚垂直尾翼の機体であった。ノースアメリカン・ロックウェル社案は、オージー翼を持つブレンデッドウィングボディ構成の胴体下に二次元型空気取入口を付けた、胴体内並列双発一枚垂直尾翼の機体だった。 これらに対しマクドネル・ダグラス社案の機体は、前縁45度というそれほど大きくない後退角を持つ、広い面積の主翼を持っていた。これは当時の超音速戦闘機には、まず採用されることのないものだった。この時、マクドネル・ダグラス社は37,500ページにも及ぶ文書を提出、設計には大型計算機を用いて数千種類の機体形状を検討していた。
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