2代目(1985年-1990年)JT150/190/600型
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「いすゞ・ジェミニ」の記事における「2代目(1985年-1990年)JT150/190/600型」の解説
3代目は1990年3月登場。ボディサイズは2代目よりも拡大された。燃費は10モードで13.6 - 14.8 km/L。 形式名は、1,500 cc ガソリン車がJT151F型、1,600 cc DOHCガソリン車がJT191F型、1,600 cc DOHCガソリンインタークーラー付きターボ4WD車がJT191S型、1,700 cc ディーゼルターボ車がJT641F型、同4WD車がJT641S型。 これらにホットモデルとして「イルムシャー」仕様および「ZZハンドリング・バイ・ロータス」仕様がラインナップされている点は先代と変わらない。その中でもハイパワーエンジン+フルタイム4WDを搭載したJT191S型は「イルムシャーR」を名乗る最上位ホットモデルである。 デビュー当初4ドアセダンのみの設定だったが、1990年9月にクーペが、翌1991年3月に3ドアハッチバックが追加されている。 セダンは北米市場において「いすゞ・スタイラス (STYLUS)」の名称で1990年12月より販売が開始された。 また、派生車種として、米GM社のGEOブランド向けに、フロントフェイスが異なる2ドアクーペ「ジオ・ストーム(日本ではヤナセで販売されていたPAネロと同デザイン)が販売されていた。いすゞ・ジェミニクーペ、ハッチバックはこの「ジオ・ストーム」をフェイスリフトしたモデルとなっている。またストームはその後、2代目ピアッツァのベースになっている。 3代目は技術的に特徴が多く、販売当時ジェミニシリーズが使われたラリーフィールドを意識した設計が施されている。1,500 cc ガソリン車の動力性能は著しく向上し、「カプセルシェイプ」と銘打った一体型ボディ構造を持ち、強度重視で厚い鉄板を使用したため、当時の1,600 ccクラス車としては車重は重い部類に入る。 足回りでは「ニシボリック・サスペンション」の採用が挙げられる。多くの評論家が酷評したニシボリック・サスペンションであったが、国内ラリーシーンにおいては"FF車ベースなのにFR車的なドリフトが出来る"という好評もあった。1991-92年の全日本ラリー選手権では連続でクラス優勝に輝いている。 デザインは中村史郎を中心に(チーフデザイナー本多卓夫、セダンエクステリア中村史郎、クーペエクステリア前田克紀、中村がブラッセル駐在となった為セダンも前田が引継ぐ)いすゞ社内でまとめられたものであるが、GMの意向が強く影響した点は否めず、欧州車の味わいが売りであったいすゞ車では異例の、アメリカンなデザインとなった。4ドアセダンにはリアのドアフレームがCピラーを覆い隠すように閉じるなど、他に例を見ない斬新なデザイン手法も使われていた。 販売面では、フルモデルチェンジ後、旧型モデルからの買い替えが順調に進んだことやCM効果によって、日本国内月販目標5千台に対し1990年4月21日時点における受注台数が6,602台と目標を超えて達成したものの販売可能台数が4,300台と品不足状態になったり、重視した米国市場で月間販売台数が一万台を超える販売好調状態であるなど、新車効果が大きく作用した出足であったが長くは続かず、バブル景気の終焉もあいまって、1991年4月には「乗用車販売の不振に苦しむいすゞ」と伝えられるなど、世界的な自動車不況などの影響によってジェミニは極度の販売不振に陥った。 この事実は1991年10月期決算におけるいすゞの大幅な経常赤字の要因となっており、次期ジェミニの開発延期を決定するなどの再建計画を実施したが、1992年10月期決算においても再び大幅な経常赤字を記録したことによって、資金回収の目処が立たない乗用車生産から撤退し得意分野の商用車事業とSUVに経営資源を集中化させる等の内容が1992年度中期経営計画にて決定したことに伴い、ジェミニの自社生産も1993年7月限りで終了し、日本国内では翌8月までに販売終了となった。 3代目の総生産台数は 406,625台(いすゞHPより)、米国販売数は17,754台(Ward's Automotive Yearbook[要文献特定詳細情報]より)。 機構 駆動方式は前輪駆動を基本とし、イルムシャーRと一部のターボディーゼル車には四輪駆動(4WD)仕様も設定される。 また、イルムシャーRの4WDにはLSDが組み込まれ、前後トルク配分可変機構が備わっている。 エンジンは1,500 cc SOHC 12バルブの4XC1型、1,600 cc DOHC 16バルブの4XE1型、同インタークーラーターボ付の4XE1-T型、1,700 cc ディーゼルインタークーラーターボ付の4EE1-T型の4種類が搭載された。 特に4XE1-T型 (180 PS) は、ホンダ・シビックタイプRのB16Bエンジン (185 PS) が登場するまで1,600 ccクラス最強のエンジンであった。 組み合わされるトランスミッションは5速MTと電子制御式4速AT。 サスペンションは四輪独立操架で、前輪がマクファーソンストラットコイル、後輪にはパラレルリンク・ロアアームのストラット形式をベースにナチュラル4WSと称したトーコントロール機構の一種であるニシボリック・サスペンションを装備する。 ステアリングはパワーステアリング付ラック・アンド・ピニオン式。ブレーキにサーボが標準装備されている点は先代と同様だが、本車はこのクラスではめずらしく全グレード前後輪ともディスクブレーキとなっている。 そのほか、ガソリン車の排気系パイプ類にステンレス材を採用したり、「C/C-X」以上のグレードにヒーター付きドアミラーを標準装備するなどコストを掛けたつくりとなっている。シートは先代のJT0型を踏襲した「ファニチャーシート」と呼ばれるヨーロピアンテイストのデザインだが、クッション硬度を上げたり、前後部別のハイトアジャスターを装備するなどより人間工学に配慮したものとなっていた(「C/C」シリーズのみ)。スポーツ系グレードの前席には先代同様、レカロ社製のセミバケットシートを標準装備していた。 歴史 1990年3月 フルモデルチェンジで3代目が登場。当初はセダンの1,500 cc ガソリン車(JT151F型)、1,600 cc ガソリン車(JT191F型)、1,700 cc ディーゼル車(JT641F型)がラインナップされた。グレード名は1,500 cc ガソリン車と1,700 cc ディーゼル車が「C/C」、「C/C-L」、「C/C-X」。1,600 cc ガソリン車が「ZZハンドリング・バイ・ロータス」。 5月 1,600 cc ガソリン車に「イルムシャー」とフルタイム4WD(JT191S型)の「イルムシャーR」が追加。 9月 2ドアクーペの1,600 cc ガソリン車(JT191F型)が追加登場。グレードは「OZ」、「OZ-G」。 1991年3月3ドアハッチバックの1,500 cc ガソリン車(JT151F型)、1,600 cc ガソリン車(JT191F型)が追加登場。グレードは「OZ」、「OZ-G」。 1,600 cc ガソリン車のクーペにフルタイム4WD(JT191S型)の「イルムシャーR」 1,700 cc ディーゼル車のセダンに「T/T」が追加。 5月 1,600 cc ガソリン車のハッチバックにフルタイム4WD(JT191S型)の「イルムシャーR」が追加。 6月特別仕様車「ジョイフルサマー・ジェミニ」を限定発売。 特別仕様車「イルムシャーRS」(車体色はミスティックブルーマイカのみ)を100台限定で発売。 9月 特別仕様車「ジョイフルオータム・ジェミニ」を限定発売。 10月 セダンの1,700 cc ディーゼルターボ車にフルタイム4WD(JT641S型)を追加。 1992年1月 初売りの特別仕様車として「初売り仕様車」(一部地域では「初売り・ジェミニ」や「お年玉・ジェミニ」等の名称)を限定発売。 2月特別仕様車「エンジョイスプリング・ジェミニ」を限定発売。 特別仕様車「イルムシャーDSP」(車体色はトーチレッドとエボニーブラック)を135台限定で発売。 3月 マイナーチェンジ。 6月 特別仕様車「エンジョイサマー・ジェミニ」を限定発売。手組エンジンでバランス取りされ,各部にオプションパーツを装備した,特別仕様車「イルムシャー・タイプコンペティション」(車体色はトーチレッドのみ)を50台限定で発売。内訳は,4WDが30台,FFは20台。助手席側ダッシュボードにシリアルナンバープレートがリベット留めされているほか,各部にType Competitionの刻印やロゴが入っている。 9月 特別仕様車「ジョイフルオータム・ジェミニ」を限定発売。 11月 マイナーチェンジ。フロントグリルの追加とテールレンズのデザインを変更。同時にクーペとハッチバックの「イルムシャーR」を廃止。 12月 いすゞ自動車がワンボックスおよびSUV以外の乗用車の自社開発・生産から撤退を表明し生産打ち切りが決定。この報道により、在庫車もほとんどが即完売状態になった。 1993年4月 量販グレード以外は全て受注生産へ。 7月 生産終了。 8月末 初代ホンダ・ドマーニのOEMとなった4代目モデルの登場に伴い販売終了。そのため、この3代目が、最後のいすゞオリジナルジェミニとなる。自社開発のジェミニは3代19年の歴史に幕を下ろした。また、1962年(昭和37年)4月登場のベレルから始まったいすゞの自社開発乗用車も31年4か月の歴史に幕を下ろした。 スタイラス RS(フロント) スタイラス RS(リア)
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