閣僚の靖国神社参拝
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「第2次安倍内閣」の記事における「閣僚の靖国神社参拝」の解説
2013年4月、靖国神社の春の例大祭に、副総理兼財務大臣の麻生太郎・総務大臣の新藤義孝・拉致問題担当大臣の古屋圭司・官房副長官の加藤勝信が参拝し、安倍は真榊を奉納した。さらに「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」からは168人が参拝した。 これに対して中国は外務省報道官の華春瑩が「日本は歴史を直視し戦時中の侵略行為による犠牲者の感情を重んじるべきだ」とする見解を発表。またアジア開発銀行年次総会に合わせて例年5月に行なわれている日中韓財務大臣・中央銀行総裁会議の中止を議長国として決めた。公式の理由は「当事国間で調整を要する重大な課題はない」。その一方で日本政府は、中韓との関係悪化を踏まえて中国や韓国の財務相と中銀総裁も参加する従来の枠組みとは別の取り組みを東南アジア諸国連合との間で始めている。 韓国も政府高官が「極めて不快」と批判し、月末に予定されていた尹炳世外務大臣の訪日中止を決定したが、官房長官の菅義偉は「(外相会談を)やる、やらないさえ決まっていなかった。調整はしていたが、韓国側から何も聞いていない」と述べ、外相会談が中止になったという見方については否定した。訪日中止の背景には、麻生が2月の大統領・朴槿恵との会談で「同じ国、民族でも歴史認識は一致しない。それを前提に歴史認識を論じるべきではないか」などと歴史問題で強い立場を示したことがあるとも言われている。また参拝の2日後である23日の参議院予算委員会で安倍が「侵略という定義は学界的にも国際的にも定まっていない。国と国の関係でどちらから見るかで違う」と答弁したため、24日付の韓国各紙が一面で強く反発。外務第1次官の金奎顕は24日、国会での答弁中で「安倍内閣の歴史認識を遺憾に思う。日本の指導者の時代錯誤の発言は残念だ」と批判した。さらに民主統合党議員の洪翼杓が靖国神社を参拝した麻生・新藤・古屋の3閣僚に関して上陸拒否者に指定するよう要求するなど、「大使の召還」まで含めた外交的対応が検討されているという。29日には韓国国会も、「(日本の軍国主義回帰の動きについて)あらゆる外交的手段を動員して強力な措置を取ることを求める」とする決議を圧倒的多数(賛成238 棄権1 反対0)で可決した。 他の国では、ニューヨーク・タイムズが24日付け紙面で『日本の要らぬ国家主義』と題した社説を掲げて“安倍氏は歴史的な傷を悪化させるのではなく、長く停滞している経済の改善と、アジアと世界での指導的民主国家としての役割強化に重点を置いて、日本の将来を構想することに集中すべきだ”と主張ワシントン・ポストは27日付社説で『安倍晋三は歴史を正視できない』と題して批判。フィナンシャルタイムズは「天皇崇拝の国粋主義的カルトと分かち難く結び付いた靖国神社は間違った場所だ」と述べ、宗教色のない国立慰霊施設の建立などを促した。またバラク・オバマ政権が外交ルートで非公式に、東アジア情勢の不安定化に対する懸念を表明したと日米外交筋が明らかにした。さらに25日には、オバマ政権が「日米関係はもはや全世界で最も重要な同盟関係ではない」と韓国外交筋に語っていたことが分かっている。2013年6月2日には、国連事務総長の潘基文が「過去の歴史への正しい理解」を求めるとし靖国神社参拝への懸念を表明した。 安倍は24日の参院予算委員会においても、「わが閣僚はどんな脅かしにも屈しない。尊い英霊に尊崇の念を表する自由を確保していくのは当然のことだ」と参拝容認の姿勢を示し、中国や韓国の反発に対しては「国益を守り、歴史や伝統の上に立った誇りを守ることも私の仕事だ。それを削れば関係がうまくという考え方は間違っている」「靖国の抗議を始めたのは盧武鉉(政権)時代が顕著になったが、それ以前はほとんどない。なぜ急に態度が変わったかも調べる必要がある」と述べた。 「みんなで参拝する会」会長の尾辻秀久は、参拝に関して「国会議員が英霊を参拝するのはどこの国でも行っているごく自然な行為だ。反発はよく理解できない」と述べた。一方で25人が参拝したとされる日本維新の会共同代表の橋下徹は、政権与党は靖国参拝について外交上の配慮が必要との認識を示した。4月28日には、行政改革担当大臣の稲田朋美が例年通り参拝を行っている。 2013年5月1日に米議会調査局が「安倍内閣の一部の閣僚は極端に国家主義的な見方を持っており、閣僚の選択は安倍氏の(歴史問題での)考えを反映している」「集団的自衛権の行使を巡る憲法解釈を変更しようとしたことについては米政府から歓迎されたが、その他の発言は、日本の侵略やアジアの犠牲といった歴史を否定する、修正主義者の見方を持っていることを示唆している」「(首相の言動は、)韓国や中国だけでなく、米国からも常に監視されている」といった内容の日米関係に関する報告書を出していたことが8日に公表された。これについて、官房長官の菅義偉はレッテル貼りや誤解であるといった反論を行っている。その後、10日には菅が村山談話を「全て」踏襲すると明言し、安倍の4月22日の答弁を事実上撤回。さらに幹事長の石破茂も「首相自身は、戦前の肯定や美化は夢にも思っていない。」と述べ、政府・与党としてこの問題の対応に乗り出す考えを示唆した。12日には政調会長の高市早苗が「(東京裁判に関して)歴史観は安倍晋三首相自身、違った点もあるかと思う」とNHKの番組で述べたが、菅は「首相ももちろん受け入れている」とこれを否定し、「(高市に対して)政府の見解をしっかり説明したい」と述べている。米議会事務局はその後に『(「ナショナリストやウルトラナショナリスト(超民族主義者)で知られる人物を(閣僚に)起用した」などの)表現を使っただけだ。』という釈明をし、慰安婦問題に対しての明言は避けた。 2013年5月10日の衆議院内閣委員会では民主党最高顧問の岡田克也が『植民地支配』『侵略』といった言葉を使用するよう官房長官の菅義偉に求めたが、菅は「(侵略の定義に関する)学問的論争はともかく、内閣としての侵略の事実を否定した発言はないのだから村山談話は政治的に引き継いだことになる」といった趣旨の主張をしている。
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