視聴層の二極化とパッケージ販売(ビデオソフト化)による制作費回収システム
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「テレビアニメ」の記事における「視聴層の二極化とパッケージ販売(ビデオソフト化)による制作費回収システム」の解説
1995年の『新世紀エヴァンゲリオン』の商業的成功によりコアなファン対象の作品が多数制作され、放映権料の高いゴールデンタイムではなく、夕方の放送を中心に多数の制作会社が参入し、放送枠が不足すると深夜枠の開拓が始まった。大量生産に有利なデジタルアニメが普及し、テレビ東京や独立局、BS局やCSアニメ専門チャンネルなどで放送作品も増加したが、過剰な数の作品制作と負担の増加により、作画やシナリオを崩壊させる品質の低下、更には制作スケジュールの遅延による放送スケジュールの破綻に至る事例が続出、1クールの放送枠を「完走」すら出来ない事態まで至る作品まで出た。 一方で小・中学校の週休2日制度導入で視聴が可能となった土・日曜日の午前枠の玩具会社・出版社がスポンサーの「子供向け」作品と、アニメブームで誕生したアニオタというコンテンツ自体に消費指向を向ける層にパッケージ販売・ソフトのレンタルなどで多数の作品を供給し、収益をあげるための深夜枠(主に三大都市圏の独立局で放送される通称UHFアニメやBS/CSチャンネルで放送される作品を含む)での「マニア向け」の商品宣伝をする製作委員会方式作品 の二極化が進行している。 「テレビアニメ放送作品のメディア化」という形でパッケージ販売を行い、利益を回収することが2000年代までの「テレビアニメの経済」の主流の一つであり、テレビアニメとして見た場合、かつての作品と比べて販売計画の企画段階から「目的」と「手段」が逆となるタイトルも少なくない。 スポンサー料の安い、視聴率が低い放送枠のターゲットはアニメの関心が強いおたく層であり、パッケージ販売のためのプロモーションの性格も強い。そのため製作委員会各社がスポンサーとなり、番組枠を買い取って放送するケースも多い。特に深夜枠放送作品は、DVDおよびBlu-ray Discなどのパッケージ販売が主な収益だったことから、付加価値を高めて購買意欲を刺激する必要があり、以下の事情により本放送とは異なる改訂・増補がなされる場合もある。 放送の修正(リテイク)制作スケジュール破綻、またはそれに近い状態になったエピソードが多発した作品に多く見られる。クレジットやテロップの修正も含まれる。 表現規制を制作意図に戻す。お色気や流血など刺激の強い表現で、テレビ放送時に規制されたものを本来の状態に戻すために、追加もしくは差し替えが行われる。また「自主規制音」の部分が、別音声として収録された作品もある(『ハヤテのごとく!』・『生徒会役員共』など)。逆に版権・著作権の問題などからソフト化の際に規制が追加されたり、内容が一部改変されるケースも少ないながら存在する。例として『銀魂』ではテレビ放送版で流れたパロディ元の原曲が、映像ソフト版では別の曲に差し替えられることも多い。 画面枠(アスペクト比)の変更。2009年9月期までのTBS製作作品や、かつてのテレビ東京製作作品の一部では、「16:9」の画面サイズマスターを地上波での放送時には画面の両端をカットし、「4:3」のサイズで放送する例がほとんどであった(2009年当時は地上デジタル放送が普及途上にあり、受信できない地域が多かったため)。パッケージ化の際には元の「16:9」として販売される。 全バージョンの収録CMなどの放送用の素材を特典として収録。 パッケージ版の販促を意図して、放送地域別(衛星放送を含む)に一部シーンの別バージョンを放送する作品では、全バージョンが収録されている。 未放送部分の収録本編の一部・結末を放送せず、またその部分を別売りにする手法に対して視聴者の不満は大きいが、パッケージ販売に制作費を大きく依存する深夜アニメ制作の難しさが浮き彫りになっている。本編のエピソードの一部を放送しない - 作品全体の内容の理解には支障がないが、パッケージ版で背景や人間関係がより深く理解できるといった内容になっている。未放送回の存在は事前にウェブサイトなどで告知されていることが多い。 本編の結末を放送しない - 2003年〜2004年のフジテレビやテレビ朝日の深夜アニメで顕著に見られ、地デジ放送準備工事に伴う放送終了時間繰り上げや特別番組やスポーツ中継などによる放送スケジュールの都合で最後まで放送できない作品が続出し、パッケージ版か衛星放送などでしか結末を視聴することができなかった。2011年には東日本大震災による影響(報道特番による休止・災害描写への配慮、放送枠の不足など)から最終回が放送できなくなった作品もある。 『かしまし 〜ガール・ミーツ・ガール〜』のラストシーンがDVDに収録される真の最終回への露骨な誘導であったことから、ラストシーンのセリフをとって「あのね商法」などと呼ばれている。 新規の映像の追加収録番外編・後日談・短編アニメで、本編からやや離れたパロディ色が強い内容のものを収録する作品が多い。従来の人気作品の続編や番外編をOVA、劇場版を制作するという手法の延長線上にある。一部はリリースの後日ないし先行の特別番組の形でテレビ放送するケースもある。 主題歌などの音源CDを同梱主題歌や挿入歌・サウンドトラック・ドラマCDなどを単品として発売せず、映像ソフトの特典として同梱させる事例も増えている。一部は後日単体のアルバムとして発売されるケースもある。 関係者出演の特典映像・音声を収録アニメ本編とは別に、オーディオコメンタリー、出演声優や制作スタッフのトーク、その作品制作の裏側に密着したドキュメンタリー、イベント、ライブなどの映像、出演声優によるバラエティ番組的な内容などを映像特典として追加収録する例も多い。関連イベントやライブ映像を単品ソフトとして制作・販売する事例も少なくない。 また販促の一環として作品関連のグッズ類や、各種イベント参加整理券もしくは応募券(さらに2010年代以降、チケット優先販売申込券を同梱する事例も増えている)を同梱することもある(一部店舗もしくは通信販売限定のものもある)。 「アニメ#映像媒体のパッケージ販売」も参照 2020年代にはインターネット配信による配信料が収益の柱となっており、パッケージは収益よりもグッズや特典と組み合わせるファン向けのグッズとなっている。
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