朝ラッシュ・夜ラッシュ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 05:17 UTC 版)
「ラッシュ時」の記事における「朝ラッシュ・夜ラッシュ」の解説
どの都市圏であっても、朝は郊外から都心へ、夕・夜間は都心から郊外へ向かう列車やバスが混雑する。東京圏の鉄道路線では、朝のラッシュ時は上り線が、夜のラッシュ時は下り線が混雑する。 都心方向は出勤・始業時間が集中する平日の7時台 - 9時台に、郊外方向は帰宅時間が集中する18時台 - 20時台に混雑のピークを迎え、それぞれラッシュ時と呼ばれる。朝のラッシュ時と夕・夜間のラッシュ時を区別し、前者を「朝ラッシュ時」、後者を「夜(よる)ラッシュ時」と分けて呼ぶこともある。 朝ラッシュ時は、企業の出社時刻や学校の始業時刻が短い時間帯に集中するため、通勤・通学客が集中して混雑度が激しい。一方で夕ラッシュ時は退社時刻や終業時刻が分散するため、朝ラッシュ時より混雑度は下がるものの、時間帯は朝ラッシュ時よりも長くなる。特に金曜日の深夜は、宴会やコンパ等などにより終電間際でも激しく混雑することが多い。 ラッシュ時は乗降人員が格段に多く、必然的に停車時分を平常時より長く設定する必要があり、表定速度は低下する。輸送力を確保するために運転間隔を平常時より短縮していることから、駆け込み乗車や扉挟みによる再開閉の対応等で生じた僅かな遅延が後続列車に波及しやすい。遅延が生じた場合、先行列車との運転間隔が広がることによって次駅の乗車人員と停車時分が増加し、当該列車の混雑率が上昇するのは避けられない。運転本数が多いラッシュ時では、停車時分の増加は更なる遅延を招くだけでなく、後続列車の駅間停車を発生させる原因にもなり、最悪の場合ダイヤ乱れが生じることになる。 東京メトロでは遅延が生じた時の対策として、先行列車を駅に長時間停車させる運転間隔の調整を行い、既に遅延している後続列車に乗客が集中するのを防止している。バスについても、渋滞が生じることを前提としたラッシュ時のダイヤでは、路外に設置された停留所で時間調整を行う路線がある。 ラッシュ時以外の混雑しない時間帯については、朝ラッシュ時より前の時間帯を「早朝(時間帯)」、朝ラッシュ時と夕ラッシュ時の間の時間帯を「日中(時間帯)」または「データイム」、夜ラッシュ時の後の時間帯を「夜間・深夜(時間帯)」と呼ぶことが多い。アーバンネットワークでは、大阪駅基準で22時以降を「深夜時間帯」と定義している。 欧米では朝ラッシュ時でも畳めば新聞が読める程度なのに対し、高度経済成長期の日本の鉄道(特に東京大都市圏の鉄道)は乗車率300%を超えることが日常であった状況から「寿司詰め」「通勤地獄」「殺人的混雑」と評され、特に新宿駅の朝ラッシュは世界的にも有名であった。鉄道会社ではドアから乗客がはみ出さないように車内に押し込む『押し屋』と呼ばれる職員を配置するなどの対応を取っていた。2005年に東急田園都市線でパナソニックがノートパソコンの耐圧性テストを行った際に100kgの圧力を記録するなど、乗客に大きな負荷がかかっている。 現在は輸送力増強はもとより、時差通勤や在宅ワークの促進等の各種対策、さらには団塊の世代の引退をはじめとする労働人口の減少によってラッシュ時の混雑は緩和されており、東京圏でも2009年度以降は平均混雑率が170%を下回っている。しかし、ピーク時の混雑率が200%程度になる路線も未だ現存している。このような日本のラッシュ時の様子について、海外から写真家が撮影に訪れることもある。 東京圏31区間、大阪圏20区間、名古屋圏8区間の最混雑区間における平均混雑率の推移は下表のとおりである。 年度別平均混雑率年度東京圏大阪圏名古屋圏1975年(昭和50年) 221 199 205 1980年(昭和55年) 214 188 204 1985年(昭和60年) 212 187 192 1989年(平成元年) 202 168 175 1990年(平成02年) 203 171 183 1991年(平成03年) 200 168 182 1992年(平成04年) 201 167 182 1993年(平成05年) 197 166 173 1994年(平成06年) 194 1995年(平成07年) 192 157 165 1996年(平成08年) 189 151 163 1997年(平成09年) 186 149 162 1998年(平成10年) 183 147 157 1999年(平成11年) 180 144 153 2000年(平成12年) 175 144 150 2001年(平成13年) 175 142 149 2002年(平成14年) 173 138 147 2003年(平成15年) 171 137 146 2004年(平成16年) 171 134 147 2005年(平成17年) 170 134 146 2006年(平成18年) 170 136 145 2007年(平成19年) 171 133 146 2008年(平成20年) 171 130 139 2009年(平成21年) 167 127 137 2010年(平成22年) 166 124 135 2011年(平成23年) 164 123 127 2012年(平成24年) 165 122 130 2013年(平成25年) 165 124 131 2014年(平成26年) 165 123 131 2015年(平成27年) 164 124 134 2016年(平成28年) 165 125 130 2017年(平成29年) 163 125 131 2018年(平成30年) 163 126 132 2019年(令和元年) 163 126 132 2020年(令和02年) 107 103 104 年度別路線混雑率都市圏鉄道事業者路線1970年1980年1990年2000年2010年東京圏 JR東日本 東海道線 261 256 225 208 188 横須賀線 311 224 245 190 193 中央線快速電車 256 259 255 218 194 京浜東北線 251 250 277 233 195 常磐快速線 - 269 221 205 171 総武線各駅停車 257 263 247 215 203 東武鉄道 伊勢崎線(スカイツリーライン) 236 185 195 152 140 西武鉄道 池袋線 224 234 209 169 165 京王電鉄 京王線 224 202 192 168 165 東急電鉄 田園都市線 - 231 197 196 182 小田急電鉄 小田原線 232 205 201 190 188 東京メトロ 銀座線 234 236 196 173 160 丸ノ内線 277 201 216 160 153 日比谷線 243 223 211 173 154 東西線 - 230 196 197 196 有楽町線 - 210 209 176 168 千代田線 - 255 217 192 179 大阪圏 JR西日本 大阪環状線 274 232 177 175 129 片町線 225 246 172 144 129 近畿日本鉄道 奈良線 194 192 172 151 137 南海電気鉄道 南海本線 215 183 174 134 117 京阪電気鉄道 京阪本線 223 186 173 145 113 阪急電鉄 神戸本線 208 191 159 145 137 Osaka Metro 御堂筋線 221 222 206 156 143 名古屋圏 名古屋市営地下鉄 東山線 239 265 236 184 147
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