場所の感覚
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人間が特定の土地に対して抱く心情や身体反応をまとめて「場所の感覚」と呼ぶ。芸術は、経験に可視性を与えて場所の感覚を育むことがあるため、エコクリティシズムで重要とされる。場所の感覚は必ずしも定住が必須とはされない。エコクリティシズムが場所を重視するのは、それまでの文学研究がプロット、登場人物、イメージ、シンボルなどを重視して環境を軽視してきたことを訂正するという目的もある。 場所の感覚については、自然との親密な関係を重視する初期の研究から、土地の占有や剥奪などの政治面も含める方向に変化していた。場所に対する研究はポストコロニアル理論(後述)とも結びついており、この種の研究に、ウルズラ・K・ハイザ(Ursula K. Heise)の『場所の感覚、惑星の感覚』(2008年)やカレン・ソーンバー(Karen Thornber)の『環境的多義性』(2012年)がある。 定住による場所の感覚を重視する作家として、ウォレス・ステグナー(英語版)やゲイリー・スナイダーらがいる。スナイダーはアメリカ西部に自力で家を建てて暮らし、『野生の実践』(1990年)で場所についての思想と実践を書いた。こうした人間と土地の関係は、作家自身を人間と人間以外の両者を包括するコミュニティー作家と見なすきっかけともなる。他方で移住を重視する作家として、ジョン・ミューアやエドワード・アビーらがいる。定住は占有に結びつくため、それを避ける意図がある。 ウィルダネスと呼ばれる未開拓の自然空間、パストラルと呼ばれる田園、日本の里山、そして都市も研究される。産業化によって拡大を続ける都市は、田舎や田園との対比において論点とされており、レイモンド・ウィリアムズの『田舎と都会(英語版)』(1973年)が先駆的な研究とされる。経済格差をもとにする住み分けとして、近年ではゲーテッド・コミュニティがアメリカをはじめとする世界各地で建設されている。その研究としてマイク・デイヴィスの『要塞都市LA(英語版)』(1990年)などがある。郊外や住宅地などの見慣れた景色を異化する試みも作品化されている。
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場所の感覚
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「思い出のキャロライナ」の記事における「場所の感覚」の解説
「思い出のキャロライナ」は地理的な場所に強く結びついており、ノースカロライナ州の非公式な州歌として何度も言及されている。テイラーは父親がノースカロライナ大学医学校で教えていたチャペルヒルの隣のカーボロで育った。テイラーは「チャペルヒル、山麓、郊外の丘は静かで、田舎風で、美しいが「静か」だ。赤い土、季節、あの場所の香りを思うと、私を大人にした経験は、人々よりも風景や気候だったのかもしれない」と後に振り返っている。より広い意味では、この歌は南部と結びついている。著述家のジェイムズ・L・ピーコックは「南部の場所の感覚」を確立すると言う点では、たとえその動きが投影されたノスタルジアだとしても、スティーブン・フォスターの「ケンタッキーの我が家」や、その他の歌や文学作品と同種のものとみなしている。著述家のケン・エマーソンはまた、テイラーの曲がフォスターの "Sitting By My Own Cabin Door" と、個人的および文脈的な混乱の中で家に憧れると言う意味でに似ていることから、アメリカのソングライターとのつながりも感じてる。州との関係についての認識から、チャペルヒル博物館では2003年にこの地域でテイラーが過ごした年月の記念品とビデオドキュメンタリーを含む継続的な展示「思い出のキャロライナ:ジェームス・テイラー物語」を開催した。 「思い出のキャロライナ」はまた、ノースカロライナ大学チャペルヒル校の非公式の歌となっている。この曲やスポーツイベントや応援集会など演奏されており、すべての大学入学時に卒業生によって歌われている。2019年に学生新聞The Daily Tar Heel はこの曲がどのようにして、キャンパスでの年数を超えて学生の中に残るのかを詳しく書いた記事を掲載した。この曲は、クレフ・ハンガーズをはじめとするUNCキャンパスの人気のあるア・カペラグループによっても頻繁に歌われている。クレフ・ハンガーズの2007年の秋コンサートでの演奏では、将来の『アメリカン・アイドル』第8シーズンで決勝に進出したアヌープ・デサイ(英語版)が曲の最後でリードボーカルを担当した。クレフ・ハンガーズは2009年3月に、ホールデン・ソープ(英語版)学長と共に殺害された学生会長のエヴァ・カーソン(英語版)の1年目の慰霊祭で再びこの曲を演奏した。2019年、ある元クレフ・ハンガーズのメンバーは「かなりすぐに……この曲には多くの意味があることに気が付きました。それに毎年の卒業式ではなむけの歌として歌うので、その背後にはさらに意味があります……私たちはプライベートなイベントや卒業式のような状況でも、この曲を私たちの特別なもののように扱っています」と語った。 2006年10月、テイラーは学校からのカロライナ・パフォーミング・アート生涯功労賞を受けるためにキャンパスに戻った。ジェイムズ・メーザー(英語版)学長はテイラーに「私たちはあなたを愛しています。私たちはあなたがしていること、どのようにしてこの大学を代表しているのかを愛しています」と語った。テイラーは「不思議なことだけど、故郷に帰って歌うのはどこか説得力がある。これは私の個人的な歴史の中で一線を引き、夢の中で行く場所、永遠に私の一部となる風景に再び私を結び付けてくれるのです」と述べた。 「思い出のキャロライナ」はカロライナ・クラウン鼓笛団の団歌でもあり、団ではすべてのパフォーマンスの前にこの歌を歌っている。ノースカロライナのフォートブラッグに駐留するアメリカ陸軍第82空挺師団は第82空挺師団オール=アメリカン・コーラスとして知られる歌う兵士のグループを後援している。彼らは2009年のアルバム A Soldier's Heart にこの曲のカバーを録音し、この曲は彼らのコンサートレパートリーの一部となっている。 歌詞の一部はCelebrate the States シリーズのノースカロライナ巻と1983年の参考図書America the Quotable でエピグラフとして使われた。ニュース配信社は「思い出のキャロライナ」を州の政治、経済、屋外活動についての記事の主題歌として使っている。この歌の地理的な関連はカーリー・アレクサンダーの2004年の小説 The Eggnog Chronicles やノースカロライナ人のシャーリン・マクラムの2006年の小説St. Dale などでも取り上げられている。 曲にインスピレーションを与えたのはノースカロライナ州だが、この曲はサウスカロライナ州でも人気があり、サウスカロライナ州情報ハイウェイの州に関するサウンドトラックの構築で1位となった。この曲は毎年サウスカロラナナ州で開かれるテニス大会、ボルボ・カーズ・オープンのテレビ報道のテーマ曲としても使われている。 「思い出のキャロライナ」はカロライナを離れた人々によっても言及されている。受賞歴のあるマサチューセッツ州在住のノースカロライナ人作家ジル・マコークル(英語版)はこの歌を「場違いな場所にいるカロライナ人が選んだ州の歌」と言っている。キャシー・ライクス(英語版)のテンペランス・ブレナン(英語版)シリーズの一作目、『既死感(英語版)』では主人公が(作者同様に)ノースカロライナ州出身だが、モントリオールで法人類学者として働いており、恐ろしい殺人事件の真っ只中で、カロライナ人の回想の一部としてこの歌を暗示している。カリフォルニア州に移住したある人物は「今でもラジオでこの曲を聞くたびにノスタルジックな気分になる。ノースカロライナで育った人なら誰でもホームシックになる曲だよ。ある意味、州を離れた人たちのための賛歌になっている」と語った。
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