より広い意味で
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/12/27 05:33 UTC 版)
上記のように素朴な前成説は成り立つ余地がない。しかし、生殖細胞に子供の構造そのものが無いとは言え、なんらかの構造のようなものがあり、それが発生に影響を与えるとすれば、ある意味で前成説的であると言えよう。その場合、直接に子の体の元になる卵細胞のそれが問題になる。 19世紀には物理化学分野の進歩から、生物学にも機械論的風潮が強まった。それが発生学に反映した形が、新たな前成説論争のもとになっている。アウグスト・ヴァイスマンはデテルミナントという粒子によって遺伝と発生を論じた。これはこの粒子が発生の段階で分割されて行くことで最終的に各部分の分化が決定するというもので、一種の前成説である。これを実証的に検証するため、ヴィルヘルム・ルーはカエルの二細胞期に一方の細胞を熱した針で焼き殺すことを行い、そのまま育てたところ片側半身だけの胚を得た。この結果はヴァイスマンの説を支持するものと考えられた。そのため、これをヴァイスマン・ルーの前成説ということがあった。 この説そのものは現在では認められるものではないが、実験発生学はこれを実証しようとして大きな発展を見た。そこで見いだされたモザイク卵は、ごく初期の胚を分割すると、分割に応じた不完全な胚しか成長しないというもので、明らかに前成説的な現象を示している。また、動物極と植物極の間に見られる所謂極性も発生に重要な役割を演じている。誘導現象にせよ、その誘因因子やその元になる要素が卵細胞の中に不均等に分布することなどに由来が求められつつある。古くは極葉なども卵の細胞質に部分的に特殊な役割があることを示すものとして知られてきた。明らかに前成説な構造は多くの例があり、発生の全般にわたってその様子が見える。 極端には、発生を遺伝子に含まれる情報が展開する過程と見なし、これを前成説的と見る向きもある。
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