上映中止と上映館削減?とは? わかりやすく解説

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上映中止と上映館削減?

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 14:35 UTC 版)

樺太1945年夏 氷雪の門」の記事における「上映中止と上映館削減?」の解説

1974年3月7日モスクワ開かれた東宝モスフィルム合作映画モスクワわが愛』の完成披露パーティー席上モスフィルム所長ニコライ・シゾフが東宝劇場での『氷雪の門の上映にクレームをつけ、なりゆき次第では『モスクワわが愛』の「公開にも支障出そう気配になっている」と、3月12日東京新聞夕刊報じられた。さらに、3月14日の同紙夕刊では、東宝松岡功営業本部長、越塚正太郎興行部長らが12日協議結果、「ソ連との友好関係損ねる恐れがある」と判断、「JMPへの劇場賃貸を断ることにした」と報じられた。 この東京新聞スクープ後追いする形で、各紙報道始まっている。たとえば読売新聞取材対し松岡ソ連からの圧力否定しそもそも公開決定したわけではなく検討段階だったが、「観客動員問題などで、こちらと条件かみ合わないから断った」とコメントした。しかし実際東宝公開スケジュール発表されており、JMPも宣伝ポスター5万作成各地プレイガイド単価700円の一般前売券販売始まっていた。また松岡は「日ソ友好の『モスクワわが愛』もあることですし、自主的にやめたということです」と含みのある説明もしている。『モスクワわが愛』のソ連ロケ参加した関係者の話では、ソ連では『氷雪の門』が話題になっており、「公開好ましくない」という声が出ていたという。 (これらの記事多くは、「東宝配給予定だった」としているが、すべて誤りである。一連の東京新聞スクープ記事では、「『氷雪の門』は東宝配給するわけではない」「公開配給形式ではなく、JMPが東宝系の映画館借りて行う興行形式だ」と関係者繰り返し述べている。その一方、「劇場賃貸」「映画館借りて行う」という表現不正確で、賃借料定額貸館興行のように受け取られるおそれがある現実には着券した製作協力券の枚数によって、興行側の取り分増減する通常興行企図していたことは、前節製作協力券の配分方式により明らかである。製作会社JMPと東宝興行部の間で上映に関する内諾があった、と解すべきであろう。なお正式の上契約には至っていない) 3月23日には、日本向けモスクワ放送が、「ソ連国民ソ連軍中傷しソ連に対して友好的」という論評流している。タス通信も「ソ連国民ソ連軍中傷する反ソ映画」と論評した。 『氷雪の門』の監督村山三男は、この件の真相究明への協力日本映画監督協会3月20日依頼、同協会事務局は関係方面事情聴取行なっており、その要点をまとめた記事が『日本映画監督協会の五〇年』(柿田清二1992年)に載っている。事の焦点である圧力については、望月・守田は「ソ連当局から、この映画上映すれば、「双方友好関係壊れる」旨の書簡が来たので上映出来なくなった、と(東宝から)言われた」と言い、それに対して東宝興行部の越塚らは「JMPは勘違いしている。上映中止したのは、契約条件が整わなかったからだ。ソ連への配慮もあったが、文書など来た事実はないし、東宝自発的にしたことだ。最終的には、JMPの方から白紙戻したいとのことだった」と言う。また同書には、外務省東欧第一課の話として、2月14日在日ソ連大使館より「『氷雪の門の上映は、日ソ関係発展資するものではない。何等かの措置をとるよう要請する」との申し入れ同課にあったとあるが、その申し入れ文書によってなされたものか、それとも担当者限り口頭申し入れであったか、またその内容東宝側に伝わってたかどうかは同書記述では判然としないその後、『氷雪の門』の東映パラス公開決定した時点で、「問題解決」とみて監督協会による調査終了している。 4月5日には国弘威雄や、『モスクワわが愛』の日本監督吉田憲二らが集まって座談会行ない、その模様は「月刊シナリオ1974年6月号に掲載されている。この中で吉田は、「東京ソ連大使館内容反ソ的とみているという話が当地伝わってきており、代わりにモスクワわが愛』の封切りさしとめの声も出ている」とする東京新聞モスクワ特派員報告3月12日夕刊)のうち、『モスクワわが愛』の封切りさしとめ部分誤報指摘している。そして、シゾフが『氷雪の門』について情報得たのは、(大使館外務省ルートではなく在日ソ連通商代表映画部からの連絡に基づくものだろうと述べた。 さらに吉田は、3月7日モスクワ時間)のパーティ様子についても触れた。このパーティは、将来合作友好関係について話し合う席であったが、シゾフの発言はその流れの中で、「一方でこうやって友好的に映画出来上っていくかたわら、非常にソビエトにとっては面白くない映画日本上映されようとしている。それも東宝配給するという。私たちはそれが本当だとしたら、ちょっと理解に苦しむところがある」との趣旨であったという。これを聞いたモスクワわが愛』の東宝プロデューサー安武龍は、『氷雪の門に対して知識がなかったことから、「至急調べまして」回答します答えている。ところが、このことを聞きつけた東京新聞モスクワ特派員が、シゾフの「疑問表明」を「圧力」だとして本社報告、これを受けて東京新聞本社東宝本社取材、「東宝営業部驚いてモスクワ電話をかけ」、安武帰国して現状報告する答えたが、先行して10日帰国した吉田に「ワンサワンサ取材が」きて、翌々日スクープ記事つながった、としている。 ここで吉田は、「日本の映画会社対す上映中止要請だとすれば当然、ソビエト映画委員会通して文書で云ってこなければ正式の効力もないわけでしょう」と指摘、国弘も「東宝に対してソビエトから外務省通じて正式な中止要請あったかどうか今以って明確ではありません」と言っている。これに対して、「月刊シナリオ編集長松本孝二は、3月12日東京新聞夕刊には東宝営業本部副本部長後藤進のコメントとして「ソ連側神経質になっているのは確か。11日営業会議でもその件を話し合ったが、私としては先方刺激与えるのはまずいと思う」とあることを指摘、「ソ連側」から何らかの意志表示はあったと結論づけている。この座談会は、東宝興行としての見識不足を批判して何らかの処置を取るべきということでは一致している。 なお、「月刊シナリオ1974年6月号には、親ソ派知られる映画評論家山田和夫映画監督山本薩夫が『氷雪の門』への見解寄せている。このうち山本は、「作品は観ていない」と断ったうえで、シゾフが安武話した言葉を「ソビエト側からの正式見解とするのは明らかに間違いだ」としている。そして、JMPが「30万人なりの観客動員東宝約束しておいて、それが出来なかったというから、東宝としては渡りに舟というと悪いが、「氷雪の門」の配給をよす」気になって手を引いた思われるので、この問題外国からの侵害という視点捉えるのは不適切であり、映画不出来による商業的判断解すべきと口頭によりコメントした山本は『氷雪の門』について東宝とJMPの間に配給契約があったと誤解しており、「30万人なり」という情報出所明らかにされていない。「前売券」の保証めぐって東宝とJMPの間で争いがあったことは、国弘威雄認めているが、この山本コメントに対して国弘は「作品見ていないのに」と激怒した後述)。 この後松岡らは、東映岡田茂社長訪ね、「東宝社内事情公開できないので宜しく」と依頼した東映側は決定に先がけて、事前に在日ソ連大使館参事官に話を通したところ、「たいへん結構ですと言われ、その報告受けたソ連本国」からも岡田あてに感謝メッセージ届いたという。岡田は、「営業面もひとつメドがついたので東映洋画配給ということでJMPとの間で話がまとまった」と説明している。6月25日東映とJMPの間で正式調印が行われ、同日東映本社記者会見があり、東宝金子操松岡功常務東映岡田社長池田静雄宣伝部長、畑種治郎営業部長鈴木常承洋画部長、JMP三池代表取締役会長望月専務近藤常務、守田常務村山監督らが出席7月27日から札幌東映パラスで、8月17日から新宿東映パラス浅草東映パラス名古屋東映パラス名古屋駅毎日地下福岡東映グランドで、9月上旬から大阪東映パラスと他一館でも公開決定した発表された。この時の発表では上映期間は説明がなかった。 ところが、公開直前になって興行規模大幅に縮小された。札幌東映パラスこそ7月27日から8月30日までの5週興行であったが、新宿東映パラスなど本州の上映館は全て削減され札幌以外の北海道九州では8月17日からの2週間ほどの劇場公開になった。だが、その理由は今だ明らかになっていない東宝による上映中止大きく取り上げた各紙も、東映による上映館削減理由については報じていない(その後の報道でも、東宝東映混同して配給会社ソ連圧力屈して全国公開阻まれた」とする不正確な論調が多い)。

※この「上映中止と上映館削減?」の解説は、「樺太1945年夏 氷雪の門」の解説の一部です。
「上映中止と上映館削減?」を含む「樺太1945年夏 氷雪の門」の記事については、「樺太1945年夏 氷雪の門」の概要を参照ください。

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