三六協定
別名:36協定、サブロク協定、時間外労働協定
企業において労働者と使用者の間で取り交わされる、休日労働・時間外労働(残業)に関する協定(労使協定)。労働基準法第36条で規定されている。
三六協定では、労働者の過半数の意思を代表する者と使用者が休日労働・時間外労働について労使協定を結び、行政官庁(労働基準監督署)に届け出た場合、労働基準法が定める限度を超えて休日労働・時間外労働に使役することが認められる。
労働基準法では、労働時間を1日8時間、週に40時間までに制限している。ただし、使用者側が労働者に強いて使用者側に有利な内容の協定を結ばせる場合も少なくないとされ、過労死者を生む原因にもなっているといわれている。
関連サイト:
労働基準法 - e-Gov
労働時間・休日に関する主な制度 - 厚生労働省
三六協定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 08:06 UTC 版)
第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。 第36条は時間外・休日労働を無制限に認める趣旨ではなく、時間外・休日労働は本来臨時的なものとして必要最小限にとどめられるべきものであり、第36条は労使がこのことを十分意識したうえで三六協定を締結することを期待しているものである(昭和63年3月14日基発150号)。法改正を受けて、日本労働組合総連合会(連合)は三六協定の適切な締結を唱えるプロジェクト"Action!36"をスタートさせ、平成31年より3月6日を「36(サブロク)の日」として日本記念日協会に記念日登録をした。 三六協定には、以下の事項を定めなければならない(第36条2項)。平成31年4月の改正法施行により、それまで施行規則で定めていた事項を法本則で定めることとなった。 三六協定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができることとされる労働者の範囲三六協定の対象となる「業務の種類」及び「労働者数」を協定するものであること(平成30年9月7日基発0907第1号)。 対象期間(三六協定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる期間をいい、1年間に限るものとする。以下同じ)三六協定において、1年間の上限を適用する期間を協定するものであること。なお、事業が完了し、又は業務が終了するまでの期間が1年未満である場合においても、三六協定の対象期間は1年間とする必要があること(平成30年9月7日基発0907第1号)。 労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる場合時間外労働又は休日労働をさせる必要のある具体的事由について協定するものであること(平成30年9月7日基発0907第1号)。 対象期間における1日、1か月及び1年のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間又は労働させることができる休日の日数改正前の三六協定は、「1日」及び「1日を超える一定の期間」についての延長時間が必要的協定事項とされていたが、今般、第36条4項において、1か月について45時間及び1年について360時間(対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制により労働させる場合は1か月について42時間及び1年について320時間)の原則的上限が法定された趣旨を踏まえ、改正後の三六協定においては「1日」、「1か月」及び「1年」のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間又は労働させることができる休日の日数について定めるものとしたものであること(平成30年9月7日基発0907第1号)。1日、1か月及び1年に加えて、これ以外の期間について延長時間を定めることも可能である。この場合において、当該期間に係る延長時間を超えて労働させた場合は、第32条違反となる(平成30年12月28日基発1228第15号)。 労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするために必要な事項として厚生労働省令で定める事項(施行規則第17条1項、2項)三六協定の有効期間の定め(労働協約による場合を除く)対象期間が1年間に限られることから、有効期間は最も短い場合でも原則として1年間となる。また、三六協定について定期的に見直しを行う必要があると考えられることから、有効期間は1年間とすることが望ましい。なお、三六協定において1年間を超える有効期間を定めた場合の対象期間は、当該有効期間の範囲内において、当該三六協定で定める対象期間の起算日から1年ごとに区分した各期間となる(平成30年12月28日基発1228第15号)。 有効期間の定めのない協定は形式的に瑕疵がある協定と解され、労働基準監督署は受理しない取り扱いとなっている。なお労働協約による場合は労働組合法の適用を受けるので、必ずしも有効期間の定めをする必要はない(昭和29年6月29日基発355号)。 第36条2項4号の規定に基づき定める1年について労働時間を延長して労働させることができる時間の起算日三六協定において定めた、1年について労働時間を延長して労働させることができる時間を適用する期間の起算日を明確にするものであること(平成30年9月7日基発0907第1号)。時間外労働の上限規制の実効性を確保する観点から、1年についての限度時間及び月数は厳格に適用すべきものであり、対象期間の途中で三六協定を破棄・再締結し、対象期間の起算日を当初の三六協定から変更する対象期間の起算日を変更することは原則として認められない(平成30年12月28日基発1228第15号)。 第36条6項2号及び3号に定める要件を満たすこと。三六協定で定めるところにより時間外・休日労働を行わせる場合であっても、第36条6項2号及び3号に規定する時間を超えて労働させることはできないものであり、三六協定においても、この規定を遵守することを協定するものであること。これを受け、様式第9号及び第9号の2にチェックボックスを設け、当該チェックボックスにチェックがない場合には、当該三六協定は法定要件を欠くものとして無効となるものであること(平成30年9月7日基発0907第1号)。 限度時間を超えて労働させることができる場合三六協定に特別条項を設ける場合において、限度時間を超えて労働させることができる具体的事由について協定するものであること(平成30年9月7日基発0907第1号)。 限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置過重労働による健康障害の防止を図る観点から、三六協定に特別条項を設ける場合においては、限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置(以下「健康福祉確保措置」という。)を協定することとしたものであること。なお、健康福祉確保措置として講ずることが望ましい措置の内容については、指針第8条に規定していること。使用者は、健康福祉確保措置の実施状況に関する記録を当該三六協定の有効期間中及び当該有効期間の満了後3年間保存しなければならないものであること(平成30年9月7日基発0907第1号)。 限度時間を超えた労働に係る割増賃金の率三六協定に特別条項を設ける場合においては、限度時間を超える時間外労働に係る割増賃金率を1か月及び1年のそれぞれについて定めなければならないものであること。なお、限度時間を超える時間外労働に係る割増賃金率については、第89条2号の「賃金の決定、計算及び支払の方法」として就業規則に記載する必要があること(平成30年9月7日基発0907第1号)。 限度時間を超えて労働させる場合における手続限度基準告示第3条1項に規定する手続と同様のものであり、三六協定の締結当事者間の手続として、三六協定を締結する使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者(以下「労使当事者」という。)が合意した協議、通告その他の手続(以下「所定の手続」という。)を定めなければならないものであること。また、「手続」は、1か月ごとに限度時間を超えて労働させることができる具体的事由が生じたときに必ず行わなければならず、所定の手続を経ることなく、限度時間を超えて労働時間を延長した場合は、法違反となるものであること。なお、所定の手続がとられ、限度時間を超えて労働時間を延長する際には、その旨を届け出る必要はないが、労使当事者間においてとられた所定の手続の時期、内容、相手方等を書面等で明らかにしておく必要があること(平成30年9月7日基発0907第1号)。 三六協定は労使協定であるので、使用者と、その事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は事業場の労働者の過半数の代表者)とが時間外労働、休日労働について書面で締結しなければならない。また、労使協定は一般に締結した段階で効力が発生するものであるが、三六協定については行政官庁に届出なければ効力は発生しない。法定の協定項目について協定されている限り、労使が合意すれば任意の事項を付け加えることも可能である(昭和28年7月14日基収2843号)。 「過半数代表者」の要件については、労使協定#過半数代表を参照。 事業場に管理監督者しかいない場合は、割増賃金率の記載のみで足りる(管理監督者であっても深夜労働に対する割増賃金の支払いは必要なため)。 更新も可能であり、その旨の協定を届出ることで三六協定の届出に代えることができる(施行規則第17条2項)。協定に自動更新規定がある場合は、労使双方から異議の申し出がなかった旨の書面を届出れば足りる(昭和29年6月29日基発355号)。協定の更新拒否が業務の正常な運営を阻害する行為に該当する場合は、争議行為に該当する(昭和32年9月9日法制局一第22号)。 労使委員会が設置されている事業場(第38条の4第1項)においては、その委員会の5分の4以上の多数による決議によって、三六協定に規定する事項について決議が行われた場合において、これを行政官庁に届け出た場合は、当該決議は三六協定と同様の効果を持つ(第38条の4第5項)。 三六協定を締結していても、それだけでは監督官庁からの免罰効果しかなく、時間外労働をさせるには、就業規則や労働契約等に、所定労働時間を超えて働かせる旨の合理的な内容の記述があって初めて業務指揮の根拠となる(労働契約法第7条、最判平成3年11月28日)。さらに、三六協定を締結していない場合には、第33条第1項・第3項に該当する場合にのみ時間外労働が許される。こういった諸要件を具備した上で、指揮命令をうけた労働者が正当な事由なく時間外労働を拒否した場合、多くの企業の就業規則では当該労働者を懲戒に処する旨を規定している。なお派遣労働者を三六協定によって時間外・休日労働させるには、派遣元の事業場においてその旨の協定を締結しておかなければならない。 行政官庁への届出は、所定の様式(様式第9号)が用意されていて、届出時に必要事項を記入する。実際には様式第9号の労働組合又は労働者の過半数代表の欄に労働組合の押印や労働者自身に署名、又は記名押印させて、そのまま三六協定の書面としても使用することが多い。 なお、時間外労働が離職の日の属する月の前6月間において「いずれか連続する3か月で45時間」「いずれか1か月で100時間」又は「いずれか連続する2か月以上の期間の時間外労働を平均して1か月で80時間」を超える時間外労働が行われたことにより離職した労働者は、雇用保険における基本手当の受給において「特定受給資格者」(倒産・解雇等により離職した者)として扱われ、一般の受給資格者よりも所定給付日数が多くなる(雇用保険法第23条、雇用保険法施行規則第36条5号イ)。また特定受給資格者を発生させた事業主には、雇用保険法上の各種の雇い入れ関係の助成金が当分の間支給されなくなる。 厚生労働省「平成25年度労働時間等総合実態調査」によれば、三六協定を締結している事業場は、301人以上の事業場では96.1%であるのに対し、10人未満の事業場では46.8%となっていて、事業場規模が小さくなるほど締結率が低い傾向となっている。また延長時間は、限度基準上限(月45時間・年360時間)に集中化する傾向がある。また、特別条項付きの三六協定を締結している事業場は、301人以上の事業場では96.1%であるのに対し、10人未満の事業場では35.7%となっていて、事業場規模が小さくなるほど締結率が低い傾向となっている。また月80時間超の延長時間を定めている事業場は、301人以上の事業場では34.7%、10人未満の事業場でも21.5%となっている。月100時間超の延長時間を定めている事業場となると、301人以上の事業場では10.6%、10人未満の事業場でも5.5%となっている。概して、延長時間数は実労働時間数と比べても相当長めに設定されている。
※この「三六協定」の解説は、「時間外労働」の解説の一部です。
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