三六協定に関する指針
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 08:06 UTC 版)
厚生労働大臣は、労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするため、三六協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項について、労働者の健康、福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して指針を定めることができる(第36条7項)。これに基づき、「労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項等に関する指針」が告示されている(平成30年9月7日厚生労働省告示323号)。労使とも、三六協定で労働時間の延長及び休日の労働を定めるに当たり、当該協定の内容がこの指針に適合したものとなるようにしなければならず(第36条8項)、行政官庁はこの指針に関し、三六協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる(第36条9項)。この助言及び指導を行うに当たっては、労働者の健康が確保されるよう特に配慮しなければならない(第36条10項)。 指針は、三六協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項を定めることにより、労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとすることを目的とする(指針第1条、平成30年9月7日基発0907第1号)。指針は、時間外・休日労働を適正なものとするために留意すべき事項等を定めたものであり、法定要件を満たしているが、指針に適合しない三六協定は直ちには無効とはならない。なお、指針に適合しない三六協定は、第36条9項の規定に基づく助言及び指導の対象となるものである(平成30年12月28日基発1228第15号)。 労働時間の延長及び休日の労働は必要最小限にとどめられるべきであり、また、労働時間の延長は原則として限度時間を超えないものとされていることから、三六協定をする労使当事者は、これらに十分留意した上で三六協定をするように努めなければならない(指針第2条)。 使用者は、三六協定において定めた範囲内で時間外・休日労働を行わせた場合であっても、労働契約法第5条に基づく安全配慮義務を負うことに留意しなければならない(指針第3条1項)。また、使用者は、平成13年12月12日付け基発第1063号「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」において、1週間当たり40時間を超えて労働した時間が1か月においておおむね45時間を超えて長くなるほど、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が徐々に強まると評価できるとされていること、発症前1か月間におおむね 100時間又は発症前2か月間から6か月間までにおいて1か月当たりおおむね80時間を超える場合には業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強いと評価できるとされていることに留意しなければならない(指針第3条2項)。 労使当事者は、三六協定において労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる業務の種類について定めるに当たっては、業務の区分を細分化することにより当該業務の範囲を明確にしなければならない(指針第4条)。これは、業務の区分を細分化することにより当該業務の種類ごとの時間外労働時間をきめ細かに協定するものとしたものであり、労使当事者は、三六協定の締結に当たり各事業場における業務の実態に即し、業務の種類を具体的に区分しなければならないものであること(平成30年9月7日基発0907第1号)。 労使当事者は、三六協定において限度時間を超えて労働させることができる場合を定めるに当たっては、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合をできる限り具体的に定めなければならず、「業務の都合上必要な場合」、「業務上やむを得ない場合」など恒常的な長時間労働を招くおそれがあるものを定めることは認められないことに留意しなければならない(指針第5条1項)。労使当事者は、特別条項において1か月の時間外・休日労働時間数及び1年の時間外労働時間数を協定するに当たっては、労働時間の延長は原則として限度時間を超えないものとされていることに十分留意し、当該時間を限度時間にできる限り近づけるように努めなければならない(指針第5条2項)。 労使当事者は、三六協定に特別条項を設ける場合において、健康福祉確保措置を協定するに当たっては、次に掲げるもののうちから協定することが望ましいことに留意しなければならない(指針第8条)。労働時間が一定時間を超えた労働者に医師による面接指導を実施すること。 第37条4項に規定する時刻の間において労働させる回数を1か月について一定回数以内とすること。所定労働時間内の深夜業の回数制限も含まれるものである。なお、交替制勤務など所定労働時間に深夜業を含んでいる場合には、事業場の実情に合わせ、その他の健康確保措置を講ずることが考えられる(平成30年12月28日基発1228第15号)。 終業から始業までに一定時間以上の継続した休息時間を確保すること。「休息時間」は、使用者の拘束を受けない時間をいうものであるが、限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置として望ましい内容を規定しているものであり、休息時間の時間数を含め、その具体的な取扱いについては、労働者の健康及び福祉を確保するため、各事業場の業務の実態等を踏まえて、必要な内容を労使間で協定すべきものである(平成30年12月28日基発1228第15号)。 労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を付与すること。 労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、健康診断を実施すること。 年次有給休暇についてまとまった日数連続して取得することを含めてその取得を促進すること。 心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること。 労働者の勤務状況及びその健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署に配置転換をすること。 必要に応じて、産業医等による助言・指導を受け、又は労働者に産業医等による保健指導を受けさせること。
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