クリップスに関するトピックス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/21 03:59 UTC 版)
「クリップス」の記事における「クリップスに関するトピックス」の解説
「クリップス」という名称がどのようにして誕生したのか、未だに明確な答えは得られていない。現在では最初期のセットがすでにクリップスの名称を使用していた事と、レイモンド・ワシントンの遺族による「結成当初からすでに組織名はクリップスであり、他ギャングからの自身の周りの者への攻撃を警戒し組織名をぼやかした」とする証言から、1971年の結成時から組織名はクリップスであった説が最有力とされている。 その他名称の起源としては諸説あり、中でも先述したロサンゼルス・センティネル誌における記事がきっかけとなった説はクリップス・メンバー内でも長年信じられてきた有力な説の一つである。 レイモンド・ワシントンは、ホラー映画で有名なヴィンセント・プライスの出演作である「Tales From The Crypts」シリーズを好んでいた。そのため、クリプツ(Crypts)の持つ「墓場」という意味がギャングを連想しやすいという理由から、クリプツが転じてクリップスになったという説 この説は3番目に信憑性の高いものとして捉えられている。しかし、深刻な貧困や差別に抗う組織として付加された名称としてはそぐわない意味を内包しており、信憑性に欠ける部分があるとして、それほど重要視されていない。 「From Cradle to grave(ゆりかごから墓場まで)」と言うギャングの一生を象徴したフレーズに「Rest In Peace(安らかに眠れ)」を付加して誕生した名称であるとする説 この説は、特に日本国内において信憑性のあるものとして捉えられているが、当初のベイビー・アベニュースの創設理念を考慮すると後付けのバクロニムである可能性が高く、この名称由来についての信憑性は低いと見て良い。 ある地域のセットが「Community Revolution In Progress(進行中のコミュニティ革命)」のアクロニムであると主張した説 この説が囁かれた期間があったとされているが、これはクリップス以前の黒人ギャングがブラックパンサー党からの影響を受けていた事による単なるメンバー間の言葉遊びとされ、また、一般市民からのギャング活動に対する同情を得るための戦略であったことが報告されている。 クリップスは、Crip Walk(C-Walk)と呼ばれるステップを生み出した組織でもある。クリップス出身のラッパーの一人であるWC(ダブシー)のライブパフォーマンスやビデオクリップでの披露により、ラップ・ファンに認知されるようになった。 加えて、「80年代以降に表れたラップアーティスト達がギャングを気取り、過剰な表現をすることによって、事実ではない事でも、あたかも事実であるかの様に楽曲で表現していることも、ギャングに対する誤解を招いている」と、創設メンバーの一人であるマイクコンセプション(Mike Conception)は語っている。 前述の通り、クリップスは他の多くのストリートギャングと同じく頂点に君臨する指導者・本部を持たないため、各セットは独立して活動している。セットによってはネイバーフッド・クリップス同盟(NHC)のように同盟関係を結んでいるセットもあるが、そうでない場合クリップス同士であっても縄張り、麻薬取引のトラブル、過去からの関係などを理由に抗争に発展する事がある。特にロサンゼルスにおいてクリップスは総計1万人を超える大勢力であり、更にはその多くがサウス・ロサンゼルス地区に密集しているために内紛が起こりやすい状況にあるといえる。 主な内紛として、ローリン・60's・クリップスを軸としたNHC主体のデュース連合とエイト・トレイ・ギャングスターズを軸としたトレイ連合の抗争、グレープストリート・ワッツ・クリップスとPJ・ワッツ・クリップスなどワッツの各クリップスの抗争、イースト・コースト・クリップスとフーヴァー・クリップスの抗争などが挙げられる。クリップスの最盛期であった1980年代〜1990年頃までにクリップス同士の抗争は対ブラッズ以上の死者を出したと言われている。 ブラッズや他組織においても少なからず内紛は起こっているが、数に劣るブラッズは対クリップスにおいてある程度結束が取れており、スレーニョスにはメキシカン・マフィアという強力な指導部が存在するためにクリップスほどには内紛が起こらないとされる。 また、南カリフォルニア外のセットでは発祥地を遠く離れた土地ゆえにクリップスとしての誇りなど薄く、同じ状況下のブラッズのセットと合併した結果誕生した新たなギャング組織同士で抗争を繰り広げているケースも存在する。このようなケースはそれほど珍しくなく、実質クリップスとして機能していないセットが全米各地にあるという。 レイモンド・ワシントンらによる1969年のベイビー・アベニュースの誕生から、1990年代のロサンゼルスには約200ものセットが存在していた経緯がある。現在も1990年代当時の勢いは失いつつあるものの、数多あるギャング組織のうちアフリカ系アメリカ人によるギャング組織の多くを占めていたのがクリップスであり、残りの大半はブラッズ、ギャングスター・ディサイプルズ、ヴァイス・ローズと言われるロサンゼルス、シカゴのギャング組織である。 その他ではエイティーンス・ストリート・ギャングやラテンキングス、南カリフォルニアのヒスパニック系ギャングの連合体であるスレーニョスなどのラテン系で構成される大所帯のギャング組織や、カンボジア系アメリカ人やラオス系アメリカ人などの東南アジア系アメリカ人による組織、カリブ海諸国をルーツに持つ組織や白人ギャング組織なども少数規模だが存在しており、現在もこれらのギャング組織間での小競り合いは多少ながら続いている。 しかし、本来は抗争を行う為だけに作られたギャング組織ではない事を懸念する声も多く、「ギャングスタと呼ばれているのはギャングという意味ではなく、あくまで"コミュニティ"としての名称だ」とかつての創設メンバーの一人であるスタンリー・ウィリアムズは語っている。なお、ウィリアムズは獄中から子供たちへの「犯罪と命の尊さ」を題材に数々の児童書を発表。その功績により、過去に7度ノーベル平和賞候補に選ばれている。 本来ならば、手を取り合わなければならない同じ人種が抗争の激化を辿り、ギャングによる犯罪が増加した背景には、先に記述したように"ギャングスタ・ラップ"と呼ばれるヒップホップなどの音楽界での過剰な遇想と表現や、マスメディアによる一方的なギャング批判によって感化されてしまったこと等も挙げられる。ゲットーと呼ばれる地域は、再開発地区(プロジェクト)とも呼ばれ、貧困による将来への悲観とコミュニティ外の白人警察他からの脅威と戦わなければならない状況である。コンプトンやワッツ、スローソン等に代表されるサウスセントラル地区(現サウス・ロサンゼルス地区)に追いやった、白人の有色人種に対する人種差別が事件の根本的な背景になっている事も問題視されている。 また、ギャングの小組織にあたる地域集団をセット(Set)と呼んでいる。 これらは区画やコミュニティごとに設置されており、それらの集合体によってクリップスというギャング集団が構成されている。セットは「サブ・セット」と呼ばれるさらに小さな組織間の同盟や合併によって組織されており、結合や消滅を繰り返しながら各セットが維持され続けている。全米各地に点在するセットの中でもロサンゼルスの上部団体から承認を受けて設立されたセットは「レジット」、組織を脱退してもクリップスを名乗り続けるセットは「レネゲイド・セット」と呼ばれる。 また、セット毎に身に着ける衣服や「ハンドサイン」と呼ばれる象徴的な手信号、壁面やインフラ設備などに描かれる「ギャング・タグ」が異なり、それらの違いによって外見的にセットの相違を知る事が出来る。セットによって規則やルールが違い、あるチームでは麻薬関係の仕事が禁止されていたり銃などの発砲・密売が禁止されていたりする。 アメリカ国外においてはトンガに強制送還されたトンガン・クリップ・ギャングのメンバーが母国にてセットを設立し活動している。ベリーズにおいても元々ニューヨークにて活動していたベリーズ人ギャングが母国に強制送還された後にロサンゼルスにやって来て設立したローリン・30's・ハーレム・クリップスの人脈を通じてベリーズ国内にセットを設立、同様の経緯でベリーズ国内に根を張るブラッズと抗争を繰り広げ、治安悪化を招き問題になっている。 クリップス最初期から加入していたフーヴァー・クリップスはイーストコースト・クリップスとの抗争により1つのセットを除いて脱退、現在は独立した組織であるフーヴァー・クリミナルズとして活動している。千名近いメンバーを持っており、クリップスとの対立のみならずEBK(全方位敵対)を掲げている。かつては麻薬王"フリーウェイ"リック・ロスとも深く関わりがあった。 クリップスが使う用語。 Cuzz - クリップスに属する同志を呼び合う時に使う。トゥッキーの親友でありクリップスメンバーであったジェームズ・“カズ”・カニンガムに対するスタンリー・ウィリアムズの挨拶「What's Up Cuzz」が由来。 Slobz - 敵対組織ブラッズのことを悪く言う時に使う。 クリップスに属する主なセット(アルファベット順) Asian Boyz (ロングビーチのみ) Avalon Gangster Crips Country Boy Crips East Coast Crips East Dago Mob Crips Eight Tray Gangster Crips Diamond Crips Donna Street Crips Grape Street Watts Crips Harbor City Crips Hilltop Crips Hustler Crips Insane Crips Kelly Park Compton Crips kitchen Crips Lahu Pride Crips Mafia Crips Original Blocc Crips Park Village Compton Crips Palmer Blocc Compton Crips PJ Watts Crips Rollin' 20's Crips Rollin' 30's Harlem Crips Rollin' 40's Neighborhood Crips Rollin' 50's Neighborhood Crips Rollin' 60's Neighborhood Crips Rollin' 80's West Coast Crips Rollin' 90's Neighborhood Crips Rollin' 100's Neighborhood Crips Santana Blocc Compton Crips Schoolyard Crips Shotgun Crips Sons Of Samoa Tongan Crip Gang Tragniew Park Compton Crips Tre Tre Crips 52 Hoover Gangster Crips
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