ヒスパニック
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ヒスパニック(スペイン語: Hispano)は、スペイン語、スペイン文化、スペイン人、またはスペイン全般に関連する人、文化、国を指す。
概要
この用語は一般的に、アメリカ大陸、アジア太平洋地域の一部、アフリカの一部をスペインが植民地化した後、スペイン帝国の植民地支配下にあった国々に適用される。主に、現在のイスパノアメリカ の国々や、フィリピン、赤道ギニア、西サハラの国々を指す。
これらの国では、スペイン語が優勢な場合もあればそうでない場合もあり、またスペイン語が公用語である場合もあり、その文化は現地の土着や他の外国の影響に加えて、程度の差こそあれスペインから派生している。
ヒスパニック文化とは、スペインと歴史的なつながりのある文化、民族、国家、特にかつてスペインに植民地化された国、特にスペインに植民地化されたラテンアメリカの国々を指す言葉として、より広く使われている。
定義
ヒスパニックの語源はラテン語のヒスパニクス (Hispanicus) で、これはイベリア半島の地域を示すヒスパニア (Hispania) から派生したものである。現在のスペインの他、ポルトガルも含める場合がある。確認されている最古の使用例は1584年のものである[1]。
アメリカ合衆国ではヒスパニックはメキシコ、キューバ、プエルトリコ、ブラジル、コロンビアなどのラテンアメリカ出自の人を指し、ラテン系アメリカ人と表示される。米国(米語)におけるこの用法は1972年から広まってきた[2]。
新大陸のスペイン旧植民地ではヒスパニックに相当するスペイン語: Hispanoはスペイン本国に関連したものを示す[3]。
ヒスパニックの定義の古代からの変遷および地域差については英語版が詳しい。
ヒスパニック文化
ヒスパニック文化とは、ヒスパニック地域の人々が一般的に共有している習慣、伝統、信念、芸術形態(音楽、文学、服装、建築、料理など)の集合体であるが、国や地域によって大きく異なる場合がある。スペイン語は、ヒスパニック系の人々が共有する主な文化的要素である[4] [5]。
アメリカ合衆国における定義
Hispanic American | |
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総人口 | |
5427万8400人(18.5%)[6] | |
居住地域 | |
アメリカ合衆国 ニューメキシコ州、カリフォルニア州、テキサス州、アリゾナ州、ネバダ州、フロリダ州、コロラド州、ニューヨーク州、ニュージャージー州、イリノイ州[7] |
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言語 | |
アメリカ英語、スペイン語、メキシコ・スペイン語、キューバー・スペイン語、カリブ・スペイン語、アンデス・スペイン語、リオプラテンセ・スペイン語、ハイチ語(フランス語系クレオール言語)、ブラジルポルトガル語 | |
宗教 | |
ほとんどがカトリック、一部はプロテスタント | |
関連する民族 | |
スペイン系アメリカ人、ポルトガル系アメリカ人、メキシコ系アメリカ人、キューバ系アメリカ人、ブラジル系アメリカ人、ペルー系アメリカ人、チリ系アメリカ人、アルゼンチン系アメリカ人、ラテン系アメリカ人、プエルトリコ、メスティーソ、ムラート |
ヒスパニックは必ずしも移民の子孫ばかりではない。彼らの先祖には、テキサス併合や米墨戦争によってアメリカ合衆国領に組み入れられた旧メキシコ領の住民も含まれ、現在のヒスパニックは多くがメキシコ系である。
またラテンアメリカには多くのスペイン以外からの移民もおり、例えばフランス系のメキシコ人やドイツ系のアルゼンチン人はヒスパニック系には該当しないために米国の国勢調査ではヒスパニック系およびラテンアメリカ(地域を示す)と定義している[8]。
人口
近年[いつから?]は増加傾向にあり2010年のアメリカの国勢調査によると、5000万人超のヒスパニックが在住している。ヒスパニックはアメリカの人口の16.3%を占め、アメリカ黒人を抜いて米国最大のマイノリティとなっている。
さらに近年では[いつ?]、毎回の国勢調査で行われる「先祖の出身地」の自己申告では中南米(ヒスパニック含む)が断然の多数を占めるようになり、減少傾向にあるドイツ、アフリカ大陸(黒人)、アイルランド、イングランド[疑問点 ]がこれに次いでいる。
またヒスパニックは高い出生率と移民を背景に、将来的には白人を抜いて(少なくとも単純な人口比としては)マジョリティになることも予測されている[9]。少子化#各国における少子化の状況のアメリカ合衆国の項も参照。
彼らはその数の多さから、政治の分野においても無視できない存在となり、近年[いつ?]の大統領選挙においてもヒスパニック有権者の動向が注目されることが多い。商業的なニーズにおいても重点される傾向もある。
ヒスパニックが特に多く住む州としては、フロリダ州(主にマイアミなど)とニューメキシコ州やカリフォルニア州、テキサス州やアリゾナ州などが挙げられる。ラテンアメリカの中進国からアメリカ合衆国へ留学する者も多く、とくにアメリカ中南部や西部においてスペイン語が普及しつつある影響で、そのまま移住する傾向がある。また近年[いつ?]はベネズエラから、おもに政治的な理由で、高学歴者が移民する傾向がある。
しかし、2009年か2014年にメキシコから米国に移住したメキシコ人87万人に対して、米国からメキシコに移住したメキシコ人は約100万人と、初めて逆転した。
出身地域
ヒスパニック総人口のうち、全体の64%がメキシコ系である。次いでカリブ海諸島および沿岸諸国が約25%に達し、この両方で9割を占める。また中南米だけではなく、スペインからの直接の移民もヒスパニックに含まれる。下表はアメリカの国勢調査による。
ヒスパニックの出身地域(2007年) (出生国でなく自己のアイデンティティによる)[10] |
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ヒスパニックグループ | 人口 | % |
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29,189,334 | 64.3 |
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4,114,701 | 9.1 |
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1,608,835 | 3.5 |
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1,473,482 | 3.2 |
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1,198,849 | 2.6 |
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859,815 | 1.9 |
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797,195 | 1.8 |
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527,154 | 1.2 |
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523,108 | 1.2 |
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470,519 | 1.0 |
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353,008 | 0.8 |
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306,438 | 0.7 |
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194,511 | 0.4 |
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174,976 | 0.4 |
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138,203 | 0.3 |
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115,960 | 0.3 |
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111,461 | 0.2 |
![]() |
82,434 | 0.2 |
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48,234 | 0.1 |
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20,432 | 0.04 |
その他の中央アメリカ諸国 | 111,513 | 0.2 |
その他の南アメリカ諸国 | 77,898 | 0.2 |
その他 | 2,880,536 | 6.3 |
合計 | 45,378,596 | 100.0 |
ヒスパニックの出身地域(2018年) (出生国でなく自己のアイデンティティによる)[1] |
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ヒスパニックグループ | 人口 | % |
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36,986,661 | 61.89 |
![]() |
9,033,381 | 15.12 |
![]() |
2,363,532 | 3.95 |
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2,036,774 | 3.86 |
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2,082,857 | 3.49 |
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2,023,341 | 3.38 |
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1,524,743 | 2.55 |
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963,930 | 1.61 |
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717,995 | 1.20 |
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684,345 | 1.15 |
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484,445 | 0.81 |
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434,000 | 0.73 |
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286,346 | 0.48 |
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206,219 | 0.35 |
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172,062 | 0.29 |
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154,784 | 0.26 |
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116,646 | 0.20 |
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60,013 | 0.10 |
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25,022 | 0.04 |
その他 | 2,000,000 | 3.3 |
合計 | 62,000,000 | 100.0 |
言語
スペイン語か英語どちらか解さない人、またはバイリンガルと、言語面の背景も多様である。もっとも、元々はスペイン語しか解さない人でも、北アメリカに移住し生活していくため、英語を習得する人は多い。
特に、ヒスパニックの割合の高いカリフォルニア州やフロリダ州などでは、社会生活を営むための英語を十分に駆使できないヒスパニックのために、スペイン語による授業、公共施設の表示、説明書などの社会インフラ整備が進められており、スペイン語が英語に次ぐ第二言語になりつつある[11]。また、中学・高校などの外国語教育でスペイン語を選択するアメリカ人も多い。以前は、英語が十分に駆使できないという理由から差別を受けてきたヒスパニックもいるが、最近ではスペイン語表示が選択できるウェブサイトを用意している企業もあり、スペイン語の歌詞が含まれるポピュラー音楽もヒットチャートを賑わしている。
ラティーノ
ヒスパニックと同じように使われる言葉に「ラティーノ」(Latino / Latina) があるが、ヒスパニックが文字通り「スペイン語圏出身者」を指すのに対し、ラティーノはスペイン語圏に限らずラテンアメリカ全域の出身者を指す。たとえばハイチ(フランス語圏)やブラジル(ポルトガル語圏)出身者は、ラティーノではあってもヒスパニックではない。また、ヒスパニックとラティーノの単語が同時に使われる場合、ヒスパニックはアメリカ合衆国と国境を接するメキシコの出身者のみを指す事が多い。
呼称
アメリカ合衆国は、1995年に人種・民族の自称についての国勢調査を行っている。これは、彼ら自身を白人、黒人、ヒスパニック、インディアン、エスキモーであると特定した人々あるいは混血に対し、それぞれの人種・民族グループの呼称で定まった呼び名を好まない人や特に選ぶものがなかった人も含め、好きな呼称はどれか選んでもらったものである。ヒスパニックの場合、一番好まれている呼称は「ヒスパニック」であった[12]。
1. | 「ヒスパニック」 |
57.88%
|
2. | 「スペイン由来 (Of Spanish origin)」 |
12.34%
|
3. | 「ラティーノ (Latino)」 |
11.74%
|
4. | その他の呼称 |
7.85%
|
5. | 無回答 |
10.18%
|
脚注
- ^ a b en:Merriam-Webster Hispanic
- ^ en:Online Etymology Dictionary Hispanic
- ^ リンク切れのen:Hispanicの前書より。
- ^ “Archived: 49 CFR Part 26”. U.S. Department of Transportation. 2016年1月19日閲覧。 “"Hispanic or Latino" refers to a person of Cuban, Mexican, Puerto Rican, South or Central American, or other Spanish culture or origin regardless of race."”
- ^ “SOP 80 05 3A: Overview of the 8(A) Business Development Program”. U.S. Small Business Administration (2008年4月11日). 2016年1月19日閲覧。 “"SBA has defined 'Hispanic American' as an individual whose ancestry and culture are rooted in South America, Central America, Mexico, Cuba, the Dominican Republic, Puerto Rico, or Spain."”
- ^ 2011年アメリカ国勢調査による人口統計学より。
- ^ ヒスパニックの人口分布(2006年)“Fact Sheet 2006 American Community Survey”. United States Census Bureau. 2008年6月24日閲覧。
- ^ Standards for the Classification of Federal Data on Race and Ethnicity
- ^ アメリカ合衆国のヒスパニック人口は2050年までに1億3,300万人に上ると予測されている。これは、2010年 - 2050年の間に増加する米人口のほぼ3分の2を占める確率となる([1]および[2]より)。
- ^ “Detailed Hispanic Origin: 2007” (PDF). Pew Research Center. 2009年4月13日閲覧。
- ^ もっとも、アメリカ合衆国では国家の公用語を法律で定めているわけではなく、州レベルで行っている。英語#アメリカ合衆国の英語事情も参照。
- ^ Bureau of Labor Statistics, U.S. Census Bureau Survey, May 1995.
関連項目
- スペインによるアメリカ大陸の植民地化
- ラテンアメリカ
- ラテンアメリカ人
- ラテン系アメリカ人
- ラティーノ
- イスパノアメリカ
- イスパニダードの旗
- ソニア・ソトマイヨール(初のヒスパニック最高裁判事)
- ヒスパニック系アメリカ人
- チカーノ - メキシコ系アメリカ人のこと。
外部リンク
ヒスパニック系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/18 00:37 UTC 版)
「アメリカ合衆国の人種構成と使用言語」の記事における「ヒスパニック系」の解説
詳細は「ヒスパニック」を参照 ヒスパニック系は現在の米国領土の南部や西部においては、非ヒスパニック系より先に16世紀には入植していた。米国(東部13州)独立時点では北アメリカの大半はスペイン、フランス、イギリス領土であった。その後、武力行使による割譲や領土購入などを経てきた。それに伴いヒスパニック系は退去か残留かの選択を強いられた。20世紀初頭のヒスパニック系の人口は50万人で全人口の0.7%であったが、当時の米国南西部の人口は約500万人で、南西部ではヒスパニック系の比率は10%であった。20世紀にはヒスパニック系の人口は10年毎に約60%増加しており、1950年には360万人、2000年には3530万人、2010年には5050万人となっていた。2045年には倍の1億人に達すると推定されている。 2005年の推定ではヒスパニック系の不法入国者は1000万人以上と見積もられており、国勢調査では市民か否かの質問はしていないが、これらの不法入国者が調査票を提出したかは不明である。 2000年までの国勢調査まではヒスパニック・ラテン系(Hispanic or Latino Origin)と人種(Race)はまとめて集計されていた。ヒスパニックには白人、黒人、先住民であるアジア系人種などや混血が含まれ、民族(国籍や文化圏)もさまざまであることから、ヒスパニック系とは人種の分類ではなく文化の分類と定義し、ヒスパニック系の集計を人種の集計から独立させた。 以下、ヒスパニック系またはラテン系(Hispanic or Latino Origin)か否かによる集計である。ヒスパニックには白人、黒人、メスティソなどが含まれ、出身国には非スペイン語圏を除く、ラテンアメリカ諸国およびスペインが含まれているが、スペイン語圏である赤道ギニアは含まれていない。広義のラテン系にはポルトガルさらにはイタリアやフランスも含まれるが、米国の国勢調査ではスペイン系のみを計上している。 なおプエルトリコの居住者の数(約380万人)は以下の記述には含まれていないが、米国本土(アラスカ、ハワイを含む)に居住するプエルトリコ人(460万人)は含まれている。 全ての人種を含んだヒスパニック系は5048万人で全人口の16.3%であった。非ヒスパニック系では、白人1億9682万人(76.2%)、黒人3769万人(14.6%)、アジア人1447万人(5.6%)、混血597万人(2.3%)などであった。2000年の調査ではヒスパニック系(12.5%)と非ヒスパニック黒人(12.3%)の比率はほぼ同じであったが、2010年にはヒスパニック系の増加率が非ヒスパニック黒人の増加率の4倍近く、単独2位の集団となった。 ヒスパニック系の可否による分類 2010年単位:百万人区分2010年2000年増減人口割合人口割合人口率全米人口 308.7 100% 281.4 100% 27 9.7% ヒスパニック系50.516.3%35.312.5%15.243.0%非ヒスパニック白人196.863.7%194.669.1%2.31.2%非白人合計61.520.0%51.618.4%9.93.7%黒人 37.7 12.2% 33.9 12.0% 3.8 11.2% アジア系 14.5 4.7% 10.1 3.6% 4.4 43.6% アメリカ先住民 2.2 0.7% 2.1 0.7% 0.1 4.8% ハワイ、大洋州 0.5 0.2% 0.4 0.1% 0.1 37.1% その他 0.6 0.2% 0.5 0.2% 0.1 27.7% 混血 6.0 1.9% 4.6 1.6% 1.4 30.4% ヒスパニック系の6割はメキシコ出身であり、ラテンアメリカ諸国では白人(コーカソイド)と先住民(モンゴロイド)さらには黒人(ネグロイド)間の混血が多く、メキシコでは6割は先住民とスペイン人の混血と言われているが、これも調査回答者の認識によるため、米国よりさらに古い歴史を考慮すると正確な人種間混血の計上は困難である。 ヒスパニック系の人種構成 2010年単位:百万人区分2010年2000年増減人口割合人口割合人口率ヒスパニック合計50.5100%35.3100%15.243.0%白人 26.7 53.0% 16.9 47.9% 9.8 58.0% 黒人 1.2 2.5% 0.7 2.0% 0.5 69.0% アジア系 0.2 0.4% 0.1 0.3% 0.1 75.0% アメリカ先住民 0.7 1.4% 0.4 1.1% 0.3 68.3% ハワイ、大洋州 0.06 0.1% 0.05 0.1% 0.0 24.4% その他 18.5 36.7% 14.9 42.2% 3.6 24.2% 混血 3.0 6.0% 2.2 6.2% 0.8 36.4% ヒスパニック系の5000万人の内訳は、白人2674万人(53.0%)、黒人124万人(2.5%)、その他の人種1850万人(36.7%)、混血304万人(6.0%)などであった。 ヒスパニック系の特徴はその増加率(1990年から2010年の間に倍増)の高さと若さである。ヒスパニックの平均年齢は27歳で、非ヒスパニック系白人は42歳、非ヒスパニック系黒人は32歳であった。
※この「ヒスパニック系」の解説は、「アメリカ合衆国の人種構成と使用言語」の解説の一部です。
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