その後の白蓮事件
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戦後間もない1946年(昭和21年)、白蓮事件をモデルとした原節子主演の映画・『麗人』が公開され、主題歌「麗人の歌」が大ヒットする。伝右衛門の会社がある中間市では、映画公開に反発する社員がピケを張って入場を阻止しようとする騒ぎがあったという。 大正9年に菊池寛によって書かれ一大ブームとなった新聞小説『真珠夫人』は、「白蓮事件」をモデルにしたものとする説があるが間違いである。時系列的に整理すれば、すでに連載が終了したあとも続いていた「真珠夫人」ブーム(演劇・映画化されていた)のなか、小説のストーリーをなぞるかのように「白蓮事件」がおき、小説と事件が次第に混同されてしまった考とえるのが妥当だろう。あるいはまた、当時の白蓮のなかにこそ、逆に「真珠夫人」のヒロイン瑠璃子が萌していたともいえるかもしれない。 戦前戦後と何度か映画・ドラマ化されている。多くの作品では、伝右衛門モデルの人物は卑しく粗野な悪役に脚色して描かれがちで、地元では今でも白蓮事件に関して複雑な思いがある。ただ、NHK連続テレビ小説「花子とアン」では、伝右衛門モデルの役(嘉納伝助)は男気のある人物として描かれ、創作の中での扱いにも変化が見られる。 1947年(昭和22年)12月、伝右衛門は事件後新たに妻を迎える事はなく、筑豊炭鉱一筋の生涯を閉じた。 戦争で長男・香織を失った燁子は平和運動家として全国を行脚し、1953年(昭和28年)夏、平和運動の講演会で九州へ向かう事になる。そむいた地である九州に行くことは、足が重いと案じる燁子に、京都での隠棲生活時代から親交の続いた宇城信五郎は、まずは妻・カ子創立の小倉の学校へ迎えるから心配いらない、と励まして各地の講演会に同行し、また「あなたが伊藤さんに可愛がられ、人のいうように甘やかされていたのなら、決して今日のあなたはないのです。伊藤さんこそ善知識であったと感謝しなければなりませんよ」と説いたという。 伝右衛門死去から6年後の1953年(昭和28年)10月、出奔事件以来32年ぶりに九州・福岡の地を訪れた燁子は、10月21日付の西日本新聞の取材で九州の地を捨てて30余年過ぎた年月を振り返り、「『あのときのことは許してね』とあやまりたい気持ち」と、ここは自分の人生道場であり、泣きも怒りも恨みも、すべては今日の自分のための土台となっている、と語っている。 翌1954年(昭和29年)、戦後に実業家の手に渡った別府の旧伊藤家別邸が別府銅御殿ホテルとして改装され、白蓮歌碑が建立されて除幕式に龍介・燁子夫妻が招かれた。夫妻は同年5月に宮崎兄弟追悼会のため熊本を訪れ、燁子は伊藤家出奔の際にすべてを知りながら記事を書かなかった熊本日日新聞論説主幹で事件当時は福岡日日新聞の駆け出し記者であった伊東盛一と再会している。この席には永畑道子が記者として同席している。 1967年(昭和42年)2月、燁子が死去した。龍介は『文藝春秋』の同年6月号に回顧録「柳原白蓮との半世紀」を寄せた。4年後の1971年(昭和46年)1月、龍介も死去した。 1985年(昭和60年)9月、NHKで永畑原作『恋の華〜白蓮〜』がドラマ化された。 1996年(平成8年)、燁子の長女・宮崎蕗苳が地元の有志の招きを受けて、初めて飯塚市の旧伊藤伝右衛門邸を訪れる。2001年(平成13年)、経済活動の停滞が続く旧産炭地・飯塚では地域活性化のため、空洞化が進む商店街で空き店舗に雛人形を飾る「筑前いいづか雛のまつり」が企画される。取り壊される寸前だった旧伊藤邸にも雛人形を飾りたいとの願いから、日鉄鉱業所有となっていた旧伊藤邸の保存運動が2002年(平成14年)から行われ、2006年(平成18年)に飯塚市所有となった。地元では伊藤家に配慮して90年近く沈黙が守られていた白蓮事件も前向きに再評価し、観光資源として旧伊藤邸を活用する準備が行われた。その活動の中、蕗苳から白蓮のレコードの寄贈などを協力を受け、福岡県から感謝状が贈られている。 旧伊藤邸は補修工事が行われた後、2007年(平成19年)に一般公開され、公開記念式典では来賓の伝右衛門の孫(静子の子)である伊藤傳之祐と、燁子の孫・宮崎黄石が対面して握手を交わしている。2011年(平成23年)にも伝右衛門邸で行われた柳原白蓮展に蕗苳が招かれている。飯塚には柳原白蓮歌碑が旧伊藤伝右衛門邸と嘉穂劇場の近くと、遠賀川河川敷の3か所に建立されている。九州観光推進機構では、2007年(平成19年)12月、広域観光ルート支援モデル第1号に白蓮・伝右衛門・龍介縁の飯塚市・東峰村・日田市・荒尾市が選定され、4地区合同で観光PRを行っている。
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