障害年金
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/26 01:45 UTC 版)
残された問題
特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律の新設によって、未加入者問題の救済が図られたが、なお、20歳前傷病者との区別に合理性があるか、日本国憲法第14条1項の定める平等原則との関連等で、議論が残されている。
また、年金制度全体についていえることだが、生活保護と比較しても、国民年金や障害基礎年金の額が、生活保護費より低い金額である事(生活保護制度との逆転現象問題)で、障害年金の支給金額が日本国憲法第25条の文化的で必要最低限の生活が出来る十分な金額であるかについても、医療費亡国論との兼ね合い議論がある。
障害年金は老齢年金と異なり、受給するには被保険者(であった者)の請求申請が必要である。このため、請求すれば障害年金を受給できるのに、請求手続きをしていない障害者が相当数いると見られている。厚生労働省の調査では、身体障害者手帳を持つ20歳以上の人のうち、障害年金を受給できるのに請求手続きをしていない人が、全体の0.4%程度に上ることが明らかになった[5][6]。
この調査では、精神障害者や知的障害者は対象になっておらず、両者を加えれば、障害年金全体の請求漏れは2万人を上回る可能性が高いと指摘されている。未受給の原因として、「疾病に起因するものは対象にならないと思っている」「初診日特定の問題」「認定基準がわかりにくい」との指摘があり、制度の周知が大きな課題となっている。
また平成17年以降、精神障害者でそれまでの基準の2級に該当する人が、3級に降格または不支給に認定となり、障害基礎年金3級は不支給となっている。なおこの措置は認定基準が変わらないで、現場判断で支給が厳しくなっている[7]。
それまで障害年金を受給していた人が、判断基準も明確に示されないまま、更新の際に障害年金の受給が却下されることに対する不服申立ては、年々増加傾向にある。背景には、日本国政府による社会保障費削減の流れの中で、障害年金支給判断の厳格化があると言われている[8]。
また2015年(平成27年)1月4日には、障害基礎年金の受給条件に著しいばらつきがあり、都道府県の日本年金機構都道府県事務センターによって、支給基準が緩やかな栃木県と厳しい大分県で6.1倍の格差があり、審査基準に都道府県間の地域間格差が存在することが、共同通信社の情報公開請求で発覚し[9]、全国一律の支給基準作成を検討する審議会が、厚生労働省年金局の審議会にて議論された。
その結果「障害基礎年金」は、障害厚生年金と同じく、東京都新宿区にある事務センターにて、全国一括で支給審査を行うことになった。
注釈
- ^ 条文上でいう「○○歳に達する(達した)日」とは、年齢計算ニ関スル法律の規定により、○○歳の誕生日の前日を指す。
出典
- ^ “平成27年9月以前に受給権が発生した共済年金 FAQ 障害共済年金は在職中でも支給されるのでしょうか。”. 国家公務員共済組合連合会. 2021年11月11日閲覧。
- ^ “[解説]被用者年金一元化” (PDF). 東京都職員共済組合. 2021年11月16日閲覧。
- ^ “年金の給付制限”. 全国市町村職員共済組合連合会. 2021年11月16日閲覧。“給付制限”. 日本私立学校振興・共済事業団. 2021年11月16日閲覧。
- ^ “特別障害給付金制度”. 日本年金機構 (2016年4月1日). 2016年4月4日閲覧。
- ^ 障害年金、請求漏れ2万人 厚労省調査 〜その対策は?
- ^ 衆議院議員長妻昭君提出障害年金に関する質問に対する答弁書
- ^ “障害年金判定に地域差 12年度不支給率、佐賀は最高”. 佐賀新聞 (共同通信). (2014年8月25日). オリジナルの2015年1月1日時点におけるアーカイブ。 2017年10月24日閲覧。
- ^ 千葉日報 2015年7月21日 1面
- ^ “【障害年金の審査に地域差】 「誤判定、確実に存在」 現場の医師、国に不満”. 47NEWS (共同通信). (2015年1月4日). オリジナルの2017年10月25日時点におけるアーカイブ。 2018年2月3日閲覧。
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