障害年金
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/26 01:45 UTC 版)
失権
障害基礎年金・障害厚生年金の受給権は、次のいずれかの場合に消滅する。
- 受給権者が死亡したとき
- 障害等級1~3級に該当する障害の状態にない者が65歳に達したとき。ただし、65歳に達した日において、障害等級1~3級に該当しなくなった日から起算して、該当することなく3年を経過していないときを除く。
- 障害等級1~3級に該当しなくなった日から起算して、該当することなく3年を経過したとき。ただし、当該受給権者が65歳未満であるときを除く。
- 1994(平成6)年の改正により、障害基礎年金等の受給権者が厚生年金保険法による障害等級(3級以上)に該当しなくなった場合、3年経過後に受給権が消滅する取扱いから、65歳に達するまでは受給権を消滅させない取扱いに変更となった(65歳に達しても、不該当後3年経過しなければ消滅しない)。これに伴い、改正法施行日(1994(平成6)年11月9日)前に障害等級に該当することなく3年経過により受給権が消滅した障害基礎年金のうち、同一の傷病により施行日以降65歳に達する日の前日までの間に障害等級(1級または2級)に該当した者については、その期間内に障害基礎年金の支給を請求することができることとなった。
- 併合認定により、前後の障害を併合した障害の程度による障害基礎年金・障害厚生年金の受給権を取得したとき(従前の年金の受給権が消滅する)
障害手当金
初診日において厚生年金被保険者であった者(当該初診日の前日において保険料納付要件を満たす者に限る)が、当該初診日から起算して5年を経過する日までの間におけるその傷病の治った日(症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至った日を含む)において、その傷病により政令で定める程度の障害の状態(要は3級よりも軽い程度)にある場合に、一時金として支給される。
支給額は以下のいずれか高い方である。ただし、国民年金・厚生年金・共済年金による年金たる保険給付の受給権者、労働基準法による障害補償・労災保険法による障害(補償)給付等を受ける権利を有する場合には、障害手当金は支給されない。
- 報酬比例の年金額の2倍
- 老齢基礎年金の満額の3/4の2倍
障害の程度と状態
1級・2級は国民年金法施行令別表(厚生年金と共通)、3級・障害手当金については厚生年金保険法施行令別表第一・第二による。なお、障害者手帳の交付要件となる障害等級とは根拠法令や等級表が異なるので、障害者手帳の等級と障害年金の等級とは一致しない場合がある。更に、障害者手帳のない者も該当する場合やその逆もありうるので注意が必要である。
- 1級
- 両眼の視力の和が0.04以下のもの
- 両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの
- 両上肢の機能に著しい障害を有するもの
- 両上肢のすべての指を欠くもの
- 両上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの
- 両下肢の機能に著しい障害を有するもの
- 両下肢を足関節以上で欠くもの
- 体幹の機能に座っていることができない程度又は立ち上がることができない程度の障害を有するもの
- 前各号に掲げるもののほか、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であつて、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
- 精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの
- 身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であって、その状態が前各号と同程度以上と認められる程度のもの
- 2級
- 両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの
- 両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの
- 平衡機能に著しい障害を有するもの
- そしゃくの機能を欠くもの
- 音声又は言語機能に著しい障害を有するもの
- 両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を欠くもの
- 両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の機能に著しい障害を有するもの
- 一上肢の機能に著しい障害を有するもの
- 一上肢のすべての指を欠くもの
- 一上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの
- 両下肢のすべての指を欠くもの
- 一下肢の機能に著しい障害を有するもの
- 一下肢を足関節以上で欠くもの
- 体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有するもの
- 前各号に掲げるもののほか、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
- 精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの
- 身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であって、その状態が前各号と同程度以上と認められる程度のもの
- 3級
- 両眼の視力が0.1以下に減じたもの
- 両耳の聴力が、40センチメートル以上では通常の話声を解することができない程度に減じたもの
- そしゃく又は言語の機能に相当程度の障害を残すもの
- 脊柱の機能に著しい障害を残すもの
- 一上肢の三大関節のうち、二関節の用を廃したもの
- 一下肢の三大関節のうち、二関節の用を廃したもの
- 長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの
- 一上肢のおや指及びひとさし指を失つたもの又はおや指若しくはひとさし指を併せ一上肢の三指以上を失つたもの
- おや指及びひとさし指を併せ一上肢の四指の用を廃したもの
- 一下肢をリスフラン関節以上で失つたもの
- 両下肢の十趾の用を廃したもの
- 前各号に掲げるもののほか、身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
- 精神又は神経系統に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
- 傷病が治らないで、身体の機能又は精神若しくは神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するものであつて、厚生労働大臣が定めるもの
- 障害手当金
- 両眼の視力が0.6以下に減じたもの
- 一眼の視力が0.1以下に減じたもの
- 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
- 両眼による視野が二分の一以上欠損したもの又は両眼の視野が10度以内のもの
- 両眼の調節機能及び輻輳機能に著しい障害を残すもの
- 一耳の聴力が、耳殻に接しなければ大声による話を解することができない程度に減じたもの
- そしやく又は言語の機能に障害を残すもの
- 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
- 脊柱の機能に障害を残すもの
- 一上肢の三大関節のうち、一関節に著しい機能障害を残すもの
- 一下肢の三大関節のうち、一関節に著しい機能障害を残すもの
- 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの
- 長管状骨に著しい転位変形を残すもの
- 一上肢の二指以上を失つたもの
- 一上肢のひとさし指を失つたもの
- 一上肢の三指以上の用を廃したもの
- ひとさし指を併せ一上肢の二指の用を廃したもの
- 一上肢のおや指の用を廃したもの
- 一下肢の第一趾又は他の四趾以上を失つたもの
- 一下肢の五趾の用を廃したもの
- 前各号に掲げるもののほか、身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
- 精神又は神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
- 備考
- 視力の測定は、万国式試視力表によるものとし、屈折異常があるものについては、矯正視力によって測定する。
- 指を失つたものとは、おや指は指節間関節、その他の指は近位指節間関節以上を失つたものをいう。
- 指の用を廃したものとは、指の末節の半分以上を失い、又は中手指節関節若しくは近位指節間関節(おや指にあつては指節間関節)に著しい運動障害を残すものをいう。
- 趾を失つたものとは、その全部を失つたものをいう。
- 趾の用を廃したものとは、第一趾は末節の半分以上、その他の趾は遠位趾節間関節以上を失つたもの又は中足趾節関節若しくは近位趾節間関節(第一趾にあつては趾節間関節)に著しい運動障害を残すものをいう。
精神の障害 (一部抜粋)
A 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害
- 1級
- 統合失調症によるものにあっては、高度の残遺状態又は高度の病状があるため高度の人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験が著明なため、常時の援助が必要なもの
- 気分(感情)障害によるものにあっては、高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の援助が必要なもの
- 2級
- 統合失調症によるものにあっては、残遺状態又は病状があるため人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があるため、日常生活が著しい制限を受けるもの
- 気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの
- 3級
- 統合失調症によるものにあっては、残遺状態又は病状があり、人格変化の程度は著しくないが、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があり、労働が制限を受けるもの
- 気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、その病状は著しくないが、これが持続したり又は繰り返し、労働が制限を受けるもの
- なお、最新の詳細情報は、外部リンク: 国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 - 日本年金機構 を参照のこと。
注釈
- ^ 条文上でいう「○○歳に達する(達した)日」とは、年齢計算ニ関スル法律の規定により、○○歳の誕生日の前日を指す。
出典
- ^ “平成27年9月以前に受給権が発生した共済年金 FAQ 障害共済年金は在職中でも支給されるのでしょうか。”. 国家公務員共済組合連合会. 2021年11月11日閲覧。
- ^ “[解説]被用者年金一元化” (PDF). 東京都職員共済組合. 2021年11月16日閲覧。
- ^ “年金の給付制限”. 全国市町村職員共済組合連合会. 2021年11月16日閲覧。“給付制限”. 日本私立学校振興・共済事業団. 2021年11月16日閲覧。
- ^ “特別障害給付金制度”. 日本年金機構 (2016年4月1日). 2016年4月4日閲覧。
- ^ 障害年金、請求漏れ2万人 厚労省調査 〜その対策は?
- ^ 衆議院議員長妻昭君提出障害年金に関する質問に対する答弁書
- ^ “障害年金判定に地域差 12年度不支給率、佐賀は最高”. 佐賀新聞 (共同通信). (2014年8月25日). オリジナルの2015年1月1日時点におけるアーカイブ。 2017年10月24日閲覧。
- ^ 千葉日報 2015年7月21日 1面
- ^ “【障害年金の審査に地域差】 「誤判定、確実に存在」 現場の医師、国に不満”. 47NEWS (共同通信). (2015年1月4日). オリジナルの2017年10月25日時点におけるアーカイブ。 2018年2月3日閲覧。
障害年金と同じ種類の言葉
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