色 文化における色

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/22 13:14 UTC 版)

文化における色

色鉛筆
美術において色は重要な要素である。
データ放送のコンテンツ選択時や双方向番組の視聴者投票などで用いる、4色のボタン

一般に、色は、生活文化産業商業デザイン視覚芸術の重要な要素であり、ある「様式」「作風」「文化」の特徴の一つに、特定の色の使用、特定の色の組み合わせ、色と結び付いた意味などが含まれている場合も多い。

色名

色名とは色の名のことである。基本色名、系統色名、固有色名などがある。あらゆる文化には、RGBCMY と同一視出来ない、それぞれの文化的な原色がある。それはその文化の背骨となっている言語の中での、最も古い色名からたどれる。そのような色名は基本色名と呼ばれる。特別な名前が付けられた色や、また名前の付けられていないような色もあるが、それらは全て基本色名で言い換える事ができる。例えば、「蘇芳色(すおういろ)」は基本色名の「赤」と言い換えることができるし、空の色や海の色などをまとめて「青」と呼べる。

色に対する一般的な印象

色彩は様々な感情を表現したり、事物を連想させることがある。国や文化などによって違いはあるが、一般的な印象は次のようなものである[14][15]。しかし、今日では喪服は黒が一般的だが江戸時代までは白が一般的だったように、時代や文化による影響も大きい。

保守真理清潔純粋無罪無知賛成など
権威防衛、武勇、汚濁、有罪、富裕層など
茶色
豊穣執着田舎など
生命左翼革命情熱危険、熱暑、勇気攻撃電気太陽日本)など
温暖、快活、陽気、幸福誇り、野心、忍耐など
太陽穀類電子注意臆病、活発、明快乾燥地下王位色欲など
植物自然安全健康希望幼稚平和新鮮湿潤嫉妬英語圏)、エコロジーなど
冷静知性内面右翼悠久未来誠実味方防御貧乏憂鬱寒冷安全など
王位、高貴、正義優雅神秘節制など
など
中立不潔陰鬱、不変、沈静など

青は男、赤は女を意味するという認識は日本のみならず世界の国々が有しているという調査結果がある[16]

職種、階層、貧富を言い表す際にも色が用いられることがある。例:ホワイトカラー(事務職)・ブルーカラー(肉体労働職)、ブルーブラッド(貴族。首筋が日焼けせず静脈が見える人間)・レッドネック白人の肉体労働者。屋外労働で首筋が赤く日焼けしていることから。アメリカ南部者)・ホワイトトラッシュ(貧乏な白人。ただしレッドネックが白人の男を指すのに対し、こちらは女を限定することもある)

政治における色

政治の世界においては、色が特定の政治的な立場を現すことがよくある。

左翼社会主義共産主義を形容する色としてよく使われ、党派的にも容共で政府資本家に反く側を表す。一説には、1848年革命パリ・コミューンの時に、革命軍が掲げていた三色旗に染まって赤くなったから、左翼的立場を形容するのに赤を使うようになったとされる。

右翼反共主義王党派・復古勢力を指す色として使われる。反共で政府資本家に親しい側を指す。フランスの王党派が使い始めたのが最初で、フランスのブルボン家の白百合紋章に由来する。以来、反革命軍は白旗を目印として、右翼的立場を形容するのに白を使うようになった。白系ロシア人白色テロなど。

アナキズム象徴する色として使われる。日本では、天皇の臣下を意味する色として利用される事があった。また、しばしばファシズムの象徴として使われる。ベニート・ムッソリーニファシスト党は、制服の色として使った。

保守主義を形容する。

黄色労資協調主義や自由主義リベラル派を形容する。御用組合は俗に「黄色組合」とも言われ、黄色は容共かつ政府・資本家に親しい党派を表す。

環境保護派や「緑の党」を形容する色として広く使われている。イスラムを象徴する色としても利用される。

茶色や褐色は独裁主義やナチズムを形容する。これは、ナチ党突撃隊(SA)の制服にちなむ。また、茶色の代わりに、赤と黒の組み合わせで示される場合もある(例:クメール・ルージュ)。

複数の色の組み合わせ

国旗には、アイルランドの国旗などのように、各色が意味を持っており、その組み合わせと配置で国家の在り方を示している場合がある。

また、レインボーフラッグのように、複数の色を組み合わせること自体で政治的主張を表わす場合もある。

商業における色

日本では、JAPAN FASHION COLOR ASSOCIATION (JAFCA) が毎年流行色を決めている。

自動車

自動車の外板色の好みには、その土地の気候風土文化が関わっており、自動車メーカーでは仕向地ごとの色の設定や生産割合を細かく決めている。近年はグローバル化が進んで均されて来てはいるが、地域的な差は高級車では少なく、大衆車で顕著であった。車種やカテゴリによっても傾向に違いはあるが、各仕向地の大まかな嗜好としては、

  • 北米 - 濃色、淡色を問わずメタリックが好まれ、赤や黄色などのソリッドカラーも常に一定の需要がある。日欧のメーカーは、自国内向けに設定が無い場合でも、北米向けには濃緑、濃赤、濃茶、水色、ベージュ、シャンパンゴールドなどを設定してきた。また、数は少ないが、ソリッドピンクに代表される、突飛なビバリーヒルズカラーの存在も特徴である。
  • 欧州 - 近年はグローバル化で地域的な特徴は薄れつつあるが、以前は大衆車を中心に、鮮やかなものから渋い色合いまで、多様なソリッドカラーが用いられていた。
  • オーストラリア中東 - SUVクロスカントリーカー、ピックアップトラックを中心にサンドベージュと白が好まれ、中東にはオプションフロントグリルエンブレムバッジ)にゴールド調めっきのものが用意されていることも特徴である。
  • 日本 - クラスやカテゴリの別無く白の需要が高い。

自動車業界では自動車メーカーの都合や広告代理店の仕掛け、塗料メーカーの技術開発などで、外板色の流行が繰り返されてきた。日本の販売統計(発売後のプレスリリースには、購入層別、グレード別などの他、色別の販売台数比率も掲載されている。)では、バブル期などの好景気にはパール、濃色系のマイカやメタリック、鮮やかなソリッドカラーを中心に非常に多様となり、ツートーンカラーの設定も多いが、不景気になると白と銀(灰色系メタリック)に偏る傾向があり、メーカーも白、銀、紺などに色数を絞る。この時期にはスポーツカーなどの趣味性が強く、特徴的な色が設定されることの多い車種も、生産を減らすか、廃止に追いやられる場合が多い。一方、軽自動車コンパクトカーのうち、可処分所得の高い女性層に向けた車種では、景気動向に影響されながらも(色の追加と廃止を頻繁に繰り返し、全体の色数を減らしてコストを抑える)多様な外板色が設定されている。

塗料としての性質は、カーボンを含む黒は耐久性・耐候性に優れ、焼付け時の熱吸収が良く、乾燥・硬化が速い(フォード・モデルTを参照)。顔料の粒子が大きい白はそれに次ぐ耐久性・耐候性を持つ。隠蔽力もこの順に高く、ソリッドカラーの場合、これらの色は低コストでもあり、公用車や社用車、商用車にこれらの色が多い理由にもなっている。ハイソカーブームで人気となったスーパーホワイトは、当初高額車のみに設定されていた。この場合専用の白い下地塗料を用意する必要はあるが、車両価格に対し、塗料と塗装のコストの割合は低くなり、利益率が増す。

逆に黄、橙、赤は隠蔽力が低く、発色を良くする場合には専用のサーフェーサーを用いる。これらの色は耐候性も低く、退色が目立ちやすい。

鉄道

ユニバーサルデザインの一環として、鉄道路線ごとに色を分けたラインカラーの導入が増えている。

車体色はその鉄道会社を表すものであったが、維持コスト低減に有利なステンレス車両の普及やアルミ車両の無塗装化が進み、多くの車両がフィルム帯を貼付けるのみとなっている。この帯色はラインカラーの表示を兼ねる場合もある。

玩具

企業・大学・音楽グループ

企業や団体などの組織を象徴する色をコーポレートカラーと言う。大学(その他学校法人)を象徴する色をスクールカラーと言う。音楽活動を行うグループのメンバー個々に定義づけられた色のことをメンバーカラーと言う。


注釈

  1. ^ JIS Z 8105:2000「色に関する用語」日本産業標準調査会経済産業省)11頁。
  2. ^ 他方で、日置隆一は『新編色彩科学ハンドブック』において、「物体という概念が付随」すると主張している。
  3. ^ 『新編色彩科学ハンドブック』などの参考文献を参照。ただし、著書の表題のように例外もある。
  4. ^ 錐体細胞の数が健常者よりも少ないために色が異なって見える。
  5. ^ ただし、完全な原色は実在しない。
  6. ^ 印刷技術で多用されるアゾ赤よりも色相的にマゼンタに近い。出典 :『有機顔料ハンドブック』 橋本勲 カラーオフィス 2006.5
  7. ^ 牛骨や石膏などの美術教材が良くないことや、市販の写真用のレンズが産業用レンズより良くないことに似ている。

出典

  1. ^ a b 『色彩学概説』 千々岩 英彰 東京大学出版会
  2. ^ 松本 英恵『人を動かす「色」の科学』サイエンス・アイ新書、2019年、21頁。 
  3. ^ a b c 松本 英恵『人を動かす「色」の科学』サイエンス・アイ新書、2019年、20頁。 
  4. ^ a b c d e 松本 英恵『人を動かす「色」の科学』サイエンス・アイ新書、2019年、26頁。 
  5. ^ a b c d 松本 英恵『人を動かす「色」の科学』サイエンス・アイ新書、2019年、30頁。 
  6. ^ 尾登誠一「3 色の世界を知る」『色彩楽のすすめ』岩波書店〈岩波アクティブ新書〉、2004年、34頁。ISBN 4-00-700101-4 
  7. ^ 『新編色彩科学ハンドブック』日本色彩学会 東京大学出版会
  8. ^ 『広辞苑 第六版』岩波書店
  9. ^ インクジェット用顔料インキにおける顔料分散
  10. ^ 色の恒常性 - 脳の世界:京都大学霊長類研究所・行動発現分野(旧URL)
    色の恒常性 - 脳の世界:中部学院大学 三上章允(新URL)
  11. ^ 目と健康 No,13 特集:色覚の異常
  12. ^ 色の組み合わせチェック - 読みやすい前景色と背景色
  13. ^ インテリアセミナーレポート「高齢者の視界と色の視認性」(東リ)(1999.02) - ウェイバックマシン(2010年10月19日アーカイブ分)
  14. ^ 日本色彩研究所『色の百科事典』丸善、2005年、124-127頁。ISBN 978-4621075425 
  15. ^ 清野恒介『色彩用語事典』新紀元社、2009年、136-137頁。ISBN 978-4775307113 
  16. ^ 男は青。女は赤。これって決まりごと?(Excite Bit コネタ) - エキサイトニュース 反面、「男は青、女は赤」というイメージは、万国共通らしい。武蔵野大学のある教授が世界20カ国、約5000人を対象に「男女のイメージカラー」について調査したところ、「男は青、女は赤」という回答が最も多く得られたというのだ。
  17. ^ レゴに緑が少ない理由とは? レゴブロックの“深イイ”世界 〈dot.〉 dot.ドット 朝日新聞出版


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品詞の分類

接尾語    色  荒らし  

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