アメリカ海兵隊 アメリカ海兵隊の概要

アメリカ海兵隊

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/09 14:37 UTC 版)

アメリカ海兵隊紋章

概要

「トイフェル・フンデン(デビル・ドッグズ)、ドイツでの合衆国海兵隊の仇名」。海兵隊の募集ポスター(1914年~1918年)。ピッケルハウベを被ったダックスフントがドイツ軍、追いかけるブルドッグが海兵隊である。
エジプトで上陸作戦の演習を行う第22海兵隊遠征隊

アメリカ海兵隊(本稿にてしばしばアメリカとつけず単に「海兵隊」とよぶ。アメリカ陸海空軍や他の機関についても同様)は、アメリカ合衆国の法律に基づき、海外での武力行使を前提とし、アメリカ合衆国の国益を維持・確保するための緊急展開部隊として行動する。また、必要に応じ水陸両用作戦(上陸戦)を始めとする軍事作戦を遂行することも目的とする。本土の防衛が任務に含まれない外征専門部隊であることから海兵隊は「殴り込み部隊」とも渾名される。

独自の航空部隊を保有することで航空作戦も実施でき、航空機をヘリコプターや艦載機とすることで海軍航空母艦強襲揚陸艦などを利用し、さらに活動範囲を広げることができる。地上戦用装備も充実しており、陸軍と同様の主力戦車も配備している。戦闘艦艇は保有しないが、独自の物資輸送船を保有する。

今でこそアメリカ海兵隊は「陸海空軍の全機能を備え、アメリカ軍が参加する主な戦いには最初に、上陸・空挺作戦などの任務で前線に投入され、その自己完結性と高い機動性から脚光を浴びている緊急展開部隊」と認識されているものの、後述するように第二次世界大戦の直前に海軍によるテコ入れがあるまでは、アメリカ軍部内で組織としてのアイデンティティや独自の存在価値を設立当初から問われ続けており、幾度となく消滅の危機に立たされた組織であった。

海兵隊の任務に関しては、在外公館を含む海外の拠点の警備も含むため、比較的戦闘に巻き込まれやすい要件を備えているが、海兵隊も陸海空軍と同じく戦争権限法による拘束を受け、海兵隊が戦闘を行ったことがそのまま「戦争」になるわけではない。つまり、議会の承認を受けずに大統領命令のみに基づいて出撃した場合、事後48時間以内に下院議長上院臨時議長宛の書面での報告が必要であり、議会が宣戦布告についての審議をする。宣戦布告が議決されない場合、開始した戦闘は議会への報告後60日以内のみが認められ、さらに30日以内の撤兵が義務付けられている[1]。このため、アメリカの法解釈上では、“海兵隊が警備している在外公館などの防衛のためにやむを得ず行う”戦闘行為は同法による拘束の下に行われる自衛行為といえる。

軍政面からみると海兵隊は海軍省下の部局であり、装備の調達などは海軍省が行う。軍令面では法律によって単独の軍としての独立性が保障されている[注 2] ことから、指揮系統において海軍省内では海軍と並列になっている[注 3]。海兵隊は海軍の艦船で共に勤務するなど、連携した活動を行っている[2]

海兵隊は、大統領搭乗時にマリーンワンのコールサインを使用する大統領専用ヘリコプターの運用をも担当している。

モットー

公式の標語は、ラテン語の "Semper fidelis"。英語では Always faithful. 直訳すれば「常に忠誠を」となり、通常口語体では Semper Fi! (センパーファーイ)と言う。この標語は、紋章のスクロールにも記されている。

"The Few, The Proud." (誇り高き少数精鋭)や Once a Marine, Always a Marine.(一度なったら、常に海兵)といった標語もあり、「一度海兵隊に入隊したなら、除隊しようとも一生『海兵隊員としての誇り』を失わず、アメリカ国民の模範たれ」とされている。


注釈

  1. ^ 従来は全部で5軍だった。21世紀に入って第6の軍隊「宇宙軍」が創設された。
  2. ^ 「Act for establishing and organizing a Marine Corps」という法律が1798年7月11日に連邦議会で可決されている。
  3. ^ 海兵隊総司令官 (Commandant of the Marine Corps) は、陸軍参謀総長、海軍作戦部長、空軍参謀総長たちとの間で指揮命令系統の上下関係はない。米大統領の下で戦略の立案といった軍事顧問の役を務める統合参謀本部 (Joint Chiefs of Staff) の長である統合参謀本部議長も、長年、海兵隊出身者からは出なかったので四軍の中で海兵隊だけが格下である印象を持たれていたが、2005年にピーター・ペース海兵隊大将 (Gen. Peter Pace) が第16代統合参謀本部議長に就任したことで、四軍が並列の関係とみなされるようになった。
  4. ^ 自らの組織を生き物だと捉えるアメリカ海兵隊では、毎年11月10日になるとバースデーケーキで誕生日を祝う。
  5. ^ 描写は海兵隊讃歌の歌詞「To the shores of Tripoli」に反映された。
  6. ^ 星条旗を立てた部屋の名前が海兵隊讃歌の歌詞に反映された。
  7. ^ 部隊だけでなく、世界中に散らばった物資輸送船(事前集積船)を持つ。派遣地域の近くにいる物資輸送船が保管していた重装備と、素早く輸送できる軽装備の人員を合流させることで、展開速度と重装備を両立する。
  8. ^ 従来は特定の海兵遠征隊 (MEU) のみが特殊作戦能力 (Special Operations Capable) を有していたのでその海兵遠征隊だけを特に "MEU (SOC)" と呼んだが、今ではすべての海兵遠征隊が特殊作戦能力を有しているので MEU (SOC) とは呼ばれなくなった。
  9. ^ 米海兵隊の人数は、2008年夏時点で195,000名ほどである。また、米海兵隊は将校の割合が他の軍種と比べ低く、米陸軍16%、米海軍18%、米空軍20%に比べて、約10%である。
  10. ^ 警察官など。一部の地方警察では元海兵隊員に、“同志の証し”として特別なバッジを作成し斡旋している。シカゴ市警察での
  11. ^ 2002年5月に、当時の海兵隊司令官ジェームズ.L.ジョーンズ大将によって一等軍曹(E-7)に名誉昇進した。アメリカ海兵隊の歴史上退役者が昇進したのはR・リー・アーメイが初めてである。
  12. ^ 兵卒として入隊したが選抜されて士官へ昇進した(最終階級は大尉)。

出典

  1. ^ 50 USC Chapter 33 - WAR POWERS RESOLUTION コーネル大学法学大学院・法学情報院
  2. ^ a b c 北村淳・北村愛子著 『アメリカ海兵隊のドクトリン』 芙蓉書房出版 2009年2月25日第1版発行 ISBN 9784829504444
  3. ^ Samuel Nicholas - Pennsylvania Center for the Book”. 2020年7月25日閲覧。


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