アメリカ法の体系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 03:50 UTC 版)
アメリカ法を理解するにあたっては、大陸法の国で当然とされている前提がそもそも異なる点に留意する必要がある。 大陸法では、公法と私法が区別されているが、アメリカ法では、そのような区別をするという発想がそもそもない。もちろん講学上の概念としては存在するのであるが、あくまで便宜上のものであるとされている。刑事法と民事法の区別、手続法、実体法の区別についても、全く同様のことがいえる。 また、アメリカ法において、制定法という場合、それらは単に無秩序な法律の集合体であり、第一次的法源である判例を補うものにすぎないとされており、これは制定法主義をとる大陸法において、判例が制定法のすき間にあたる部分を補充する機能を有するものとされていることと全く正反対の理解がなされている。したがって、アメリカの制定法を解釈するにあたっては、その条文を読んだだけでは理解できない暗黙の前提となる判例が存在する可能性がある。 例えば、アメリカ法には、日本でいう民法(Civil law)という概念は存在しない。民事法典(Civil code)という概念は存在するが、それは契約法典、不法行為法典、財産法典という雑多な制定法の集まりにすぎず、体系性をもった「法」(Law)といえるのは、その法域、つまりほとんどの場合にはその州の裁判が行われることによって日々変化する判例法である。そして、日本でいう民法にあたるその判例法には、不法行為法で懲罰的損害賠償が認められているように刑法と同じ制裁としての機能を有しており、刑事法と理論的に峻別されていない。同様に、商法とも区別されておらず、商事法典は存在するが、商法は存在しない。さらに、合衆国には、行政裁判所が存在せず、通常裁判所の法に従うのが当然とされており、公法と私法を区別する実益は全くない。加えて、合衆国には、民法を実現するための手段としての民事訴訟法、刑法を実現する手段としての刑事訴訟法という発想が存在せず、裁判所および裁判所における手続法の中の民事編、刑事編という規定のされ方がされているのである。
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