懲罰的損害賠償
英語:punitive damages
訴訟における損害賠償が、被害者の損害を補填するためだけでなく、非難・制裁・再発防止などの意味合いも加味した多額の賠償額になること。または、そうした損害賠償。
懲罰的損害賠償はイギリスやアメリカの法制度において適用されることがあり、特にアメリカの訴訟ではしばしば顧慮・適用される。日本の法制度の中には、懲罰的損害賠償に該当する概念は特にない。
懲罰的損害賠償が適用された典型的な判例としては、1990年代アメリカで提訴された通称「マクドナルドコーヒー事件」がしばしば挙げられる。ドライブスルーを利用して買ったコーヒーが、不注意により膝上にこぼれ、重度の火傷を負うことになった、という顛末の事件であるが、この訴訟ではマクドナルドに懲罰的損害賠償として270万ドルの支払いが命じられている。(最終的に減額されている)
アメリカでは懲罰的損害賠償が加味される訴訟はしばしば発生している。特に大企業が絡んだ訴訟では懲罰的損害賠償も含めて数億ドル単位の支払い命令が下される場合もままある。
ちょうばつてき‐そんがいばいしょう〔‐ソンガイバイシヤウ〕【懲罰的損害賠償】
懲罰的損害賠償
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/17 01:03 UTC 版)
懲罰的損害賠償(ちょうばつてきそんがいばいしょう、英語: punitive damages, exemplary damages)とは、主に不法行為に基づく損害賠償請求訴訟において、「加害者の行為が強い非難に値する」と認められる場合に、裁判所または陪審の裁量により、加害者に制裁を加え将来の同様の行為を抑止する目的で、実際の損害の補填としての賠償に加えて上乗せして支払うことを命じられる賠償のことをいう。英米法系諸国を中心に認められている制度である。
注釈
- ^ イギリスでは1933年の司法運営(雑則)法(Administration of Justice (Miscellaneous Provisions) Act of 1933)により、ほとんどの民事訴訟に関して陪審審理の保障がなくなっている。
- ^ マクドナルドのドライブスルーで購入したコーヒーをこぼして火傷をした女性が「熱すぎるコーヒーは欠陥商品だ」と主張し、造物責任訴訟を提起した案件において、16万ドルの補償的損害賠償の他に、270万ドルの懲罰的損害賠償が認められた。詳細は同項参照。
- ^ その一方で、下限額は一切明文化されていない
- ^ 法の適用に関する通則法17条、22条2項(旧法例11条1項、3項)
- ^ 例えば、米国カリフォルニア州を不法行為地とする不法行為に係る損害賠償請求訴訟が日本の裁判所に係属した場合、準拠法はカリフォルニア州法となり、日本の裁判所は同州法に基づいて権利の存否を判断することになるが、同州法のうち懲罰的損害賠償に関する部分は適用できないということ。
- ^ 現在の民事訴訟法118条3号に相当
- ^ ホンジュラスの学生が軍関係者とみられる武装した男たちに拉致され、行方不明になった事件。国内での捜査が十分になされなかったとして米州人権裁判所に提訴され、ホンジュラス政府の人権侵害と家族への賠償が認められた[16]。
出典
- ^ Huckle v. Money, 95 Eng. Rep. 768 (1763)
- ^ Wilkes v. Wood, 98 Eng. Rep. 489 (1763)
- ^ Rookes v. Barnard, 1 All Eng. Rep. 367 (1964), (1964) AC 1129[リンク切れ]
- ^ 望月礼二郎『英米法〔新版〕』(青林書院、1997年)、298頁
- ^ Genay v. Norris, 1 S.C.L. (1 Bay) 6 (S.C. 1784)
- ^ Coryell v. Colbaugh, 1 N.J.L. 77 (N.J. 1781)
- ^ 望月・前掲299頁
- ^ 例えば、米国不法行為法改革協会 (American Tort Reform Association) のウェブサイト参照。
- ^ 例えば、ジョージア州では、被告が原告に危害を与える意思をもって行った行為の場合を除いて、懲罰的損害賠償の上限は25万ドルとしている。Ga. Code Ann. §51-12-5.1
- ^ 例えば、コネチカット州は実損の2倍を上限としている。Conn. Gen. Stat. Ann. §52-240b
- ^ 例えば、ニュージャージー州では、懲罰的損害賠償は実損の5倍または35万ドルのいずれか大きな額を超えてはならない。N.J. Stat. Ann.§2A:15-5.14
- ^ 米国不法行為法改革協会のウェブサイトに、懲罰的損害賠償に立法的制限を加えている州の立法のリスト Archived 2008年9月29日, at the Wayback Machine.がある。
- ^ BMW of North America, Inc. v. Gore, 517 U.S. 559 (1996) Archived 2008年9月29日, at the Wayback Machine.、State Farm Automobile Ins. Co. v. Campbell, 538 U.S. 408 (2003)等。
- ^ 米国不法行為法改革協会のウェブサイトに、懲罰的損害賠償に立法的制限を加えた州法の合憲性に関する州裁判所の判断をまとめたリスト Archived 2008年11月20日, at the Wayback Machine.がある
- ^ 最二小判平成9年7月11日民集51巻6号2573頁
- ^ “Technical Data: Velásquez Rodríguez Vs. Honduras”. Corte Interamericana de Derechos Humanos. 2019年4月23日閲覧。
- ^ Corte Interamericana de Derechos Humanos Caso Velásquez Rodríguez Vs. Honduras: Sentencia de 21 de julio de 1989(スペイン語)、p10, para 38。2017年10月閲覧。現代国際法講義 2012, p. 353(執筆は臼杵知史)。
- 1 懲罰的損害賠償とは
- 2 懲罰的損害賠償の概要
- 3 国際法における懲罰的損害賠償の求め
「懲罰的損害賠償」の例文・使い方・用例・文例
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