25の旋律的練習曲とは? わかりやすく解説

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ヘラー:25の旋律的練習曲(25のやさしい練習曲)

英語表記/番号出版情報
ヘラー:25の旋律的練習曲(25のやさしい練習曲25 études mélodiques  Op.45出版年1844年  初版出版地/出版社Grus 

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 小川 No.1 Allegretto No Data No Image
2 なだれ No.2 Allegro vivaceNo Data No Image
3 まじめな練習  No.3 Allegretto No Data No Image
4 悲しみ喜び No.4 Allegretto No Data No Image
5 五月の歌 No.5 Allegretto comodo No Data No Image
6 憂うつダンス No.6 Allegro con moto No Data No Image
7 決心 No.7 Allegro con moto No Data No Image
8 舟歌 No.8 Allegretto No Data No Image
9 天使の声 No.9 Andante quasi Allegretto No Data No Image
10 夕ぐれの歌 No.10 Moderato No Data No Image
11 みぞれがふる No.11 Allegro No Data No Image
12 厳格 No.12 Con moto No Data No Image
13 かわいいワルツ No. 13 Allegro scherzando No Data No Image
14 船のりの歌 No. 14 Poco maestoso No Data No Image
14 船のりの歌 No. 14 Poco maestoso No Data No Image
15 戦士の歌 No.15 Poco maestoso No Data No Image
15 戦士の歌 No.15 Poco maestoso No Data No Image
16 ものを思う人 No. 16 Andatino con tenerezza No Data No Image
17 ノベレッテ No. 17 Allegro vivace No Data No Image
17 ノベレッテ No. 17 Allegro vivace No Data No Image
18 気みじか No. 18 Allegro No Data No Image
19 紡ぎ歌 No.19 Allegretto grazioso No Data No Image
20 バレエ No. 20 AllegroNo Data No Image
21 妖精人魚 No.21 Allegro vivaceNo Data No Image
22 ハープの歌 No.22 Allegretto con motoNo Data No Image
23 風との中を No.23 Allegro di moltoNo Data No Image
24 丘と谷をこえて No. 24 Allegro veloceNo Data No Image
25 終結 No.25 Allegro con brioNo Data No Image

作品解説

2011年7月 執筆者: 上田 泰史 

1.作品の成立背景
 本作は《全長短調による24の練習曲作品16Paris, M. Schlesinger, 1840、翌年フレージング技法》として再版)を演奏するまえに取り組む予備的練習曲集として、1844年パリリヨンベルリンミラノの各都市出版された。
 現在でもこの曲集は《旋律的練習曲集》などのタイトル知られているが、初版タイトルは単に《25の練習曲》であり、その後には「〈フレージング技法〉への導入として役立てるための、また、現代流派練習曲諸作品への準備としての」という一連の説明が続く。
ヘラーは、この作品出版する前年1843年リヨン有力なピアニスト教師ジェニー・モンゴルフィエに宛てた手紙で「この手紙を[リヨン出版者]ブナッキに送っていただけますか。この手紙を私は彼にしばかり仕事依頼しますが、それは気晴らしに「練習曲集」(これには満足しています)を書くためであり、それから、そう、お金を得るためです」(Cf. J.-J. Eigeldinger p.117)

 教育的実用的な側面を持つ練習曲は、実際作曲家多く利益もたらすジャンルだった。翌年ヘラーモンゴルフィエ宛てた手紙で再びこう書いている。「ブナッキは、次に書くことになっている作品のために、私に500フラン送ってくれるはずです。おかげで私は容易に旅にでることが約束されました。お金受け取り次第、私は出発し近く会いすることになるでしょう。」(Cf. J.-J. Eigeldinger pp.135-136)この「二作品」とは、作品45続いて出版された《30段階的練習曲作品46と《リズム表現センスを養うための25の練習曲作品47それぞれ1849年刊)のことと考えられるが、こうした背景からは、彼が演奏旅行などの活動資金を得るためにこの時期集中的に練習曲書いたことが窺われる練習曲書法という点から見れば各曲クレメンティ以来伝統的な枠組み収まっているものの(たとえば第7番は《パルナッソス山への階梯第一曲と類似した指の独立練習である)、各曲は短いながらも独特の性格持っており、きわめて繊細かつ入念に書かれている一曲一曲短く譜面一見平易に見えるが、演奏には非常に注意力要する。この点については、ヘラー生前ルモワーヌ社から出版され新しエディション序文で、作曲者自身によって述べられている(尤も、これは作品47初版掲げられ序文転載である)。以下にルモワーヌ版の序文引用する

 専ら指のメカニスムを鍛えることを目的とする練習曲集無数に存在いたします。私は、一連の性格的小曲書きながら全く別の目標定めました
 私は、生徒たちその作品特有の性格即して表情豊かに優美に優雅にエネルギッシュに曲を演奏することを望みました。私は彼らの内に、音楽的なリズム感目覚めさせ、最も正確で完璧な作曲者意図再現へと彼らを導くことを望みました
 私の目標達するために、どうか教師方々は、生徒たち注意深くあらゆるニュアンス付けて細やかに、曲に相応し感情抱いてこれら25の練習曲各曲演奏するよう注意を払って頂けますように。


 上に挙げた1840年代出版され4つの練習曲集は、ヘラー没後出版され続けたが、殊に作品45各曲には、おそらくヘラー自身とは関係のない描写的なタイトル各出版社によって加えられ広く普及している。少なくとも、ヘラー生前パリ出版された曲集には各曲タイトル見出すことはできない

J.-J. Eigeldinger. Stephen Heller―Lettres d’un musician romantique à Paris(Flammario, 1981     

2011年7月 執筆者: 林川 崇

2.エディションについて
 ヘラー活躍したパリでの初版1844年頃、グリュGrus社から《25の練習曲 25 Études》というタイトル出版された。第11番は、初版おいては4分の4拍子アレグロ・ヴィヴァーチェであったが、現行の版では4分の3拍子アレグロという全く別の曲が置かれている(調性はいずれヘ長調)。

パリ初版Grus, 1844)、第11番


現行版G. Schirmer, n.d. etc.)、第11番


 また、第17番現行版見られる主部中間部主部3部形式ではなく主部に当たる部分をそっくり2回弾く(楽譜末尾リピート記号書かれている)ものであった
 この曲集は後に誤植訂正した版がルモワーヌ社から出版されたが(ルモワーヌになって訂正されていない誤植幾つかある)、恐らく、この段階で第11番現行の曲に差し替えられたと思われる現行の第11番形式は、前奏主部中間部主部という構成をとるが、このルモワーヌ版では前奏主部終わっており、終わり方に相違みられる。この曲が差し替えられた理由定かではないが、初版のこの曲は、冒頭シューマンの《謝肉祭作品9の冒頭あまりにも似通ってたからかしれない或いはリズム同じくシューマンの《交響的練習曲作品13フィナーレ想起させる)。

R. シューマン 《謝肉祭作品9(1837)冒頭


 また、年代不明だが、ベルリンシュレージンガーから《25の旋律的練習曲 25 Études mélodiques》と改題され「作曲者によって見直され新版 Nouvelle Édition révue par l’auteur」と記され楽譜出版された。この段階で、第11番第17番中間部加わりそれに伴い主部にも若干改訂施されている。このシュレージンガー版は、恐らく決定稿思われその後世界各地出版されたこの練習曲集楽譜の殆どは、このシュレージンガー版のヴァージョン基づいている。
 わが国では、1965年全音から出版されており、各曲には、アメリカのシャーマーG. Schirmerから出た版に基づくと思われる副題添えられている。全音版で、校訂者は「特にペダル使用法習得にたいへん役にたつ」と序文述べており、楽譜には精緻なペダリング指示施しているが、実際には、ヘラー出版かかわった上記3種類の版において、ペダル指示控えめにしか記されていないまた、理由明かされていないが、全音版には殆どスラー書かれておらず、強弱記号に関しても(少なくとも筆者参照出来た限りの)他の全てのエディションとは方向性異な箇所多々見受けられる一例挙げると、第2番の、第8385小節で、他のエディションでは、クレッシェンドしていき、フォルテフレーズ終えるが、全音版では、ディミヌエンドリタルダンドをしてピアノフレーズ終える)。諸版における細部相違については、今後更なる詳細な調査待たれる

2011年7月 執筆者: 中村 純子

3.タイトルについて
 前述通り、この曲集はある時点でおそらく作曲者とは無関係なタイトル付され出版されるようになった。これらのタイトルは、自然や季節想起させる様々な性格彩られており、学習者具体的なイメージ持たせ作品への親しみ抱かせる一助となる一方第3曲「まじめな練習」や第12曲「厳格」などのタイトルは却って学習者ネガティヴ印象与えかねない。これらのタイトル向き合う際には、ヘラー文学的題材からインスピレーションを受けることはあっても、安易な描写的タイトル自作品に冠することを好まなかったということを常に念頭に置くべきであろう
 この曲集は後に誤植訂正した版がルモワーヌ社から出版されたが(ルモワーヌになって訂正されていない誤植幾つかある)、恐らく、この段階で第11番現行の曲に差し替えられたと思われる現行の第11番形式は、前奏主部中間部主部という構成をとるが、このルモワーヌ版では前奏主部終わっており、終わり方に相違みられる。この曲が差し替えられた理由定かではないが、初版のこの曲は、冒頭シューマンの《謝肉祭作品9の冒頭あまりにも似通ってたからかしれない或いはリズム同じくシューマンの《交響的練習曲作品13フィナーレ想起させる)。

R. シューマン 《謝肉祭作品9(1837)冒頭


 また、年代不明だが、ベルリンシュレージンガーから《25の旋律的練習曲 25 Études mélodiques》と改題され「作曲者によって見直され新版 Nouvelle Édition révue par l’auteur」と記され楽譜出版された。この段階で、第11番第17番中間部加わりそれに伴い主部にも若干改訂施されている。このシュレージンガー版は、恐らく決定稿思われその後世界各地出版されたこの練習曲集楽譜の殆どは、このシュレージンガー版のヴァージョン基づいている。
 わが国では、1965年全音から出版されており、各曲には、アメリカのシャーマーG. Schirmerから出た版に基づくと思われる副題添えられている。全音版で、校訂者は「特にペダル使用法習得にたいへん役にたつ」と序文述べており、楽譜には精緻なペダリング指示施しているが、実際には、ヘラー出版かかわった上記3種類の版において、ペダル指示控えめにしか記されていないまた、理由明かされていないが、全音版には殆どスラー書かれておらず、強弱記号に関しても(少なくとも筆者参照出来た限りの)他の全てのエディションとは方向性異な箇所多々見受けられる一例挙げると、第2番の、第8385小節で、他のエディションでは、クレッシェンドしていき、フォルテフレーズ終えるが、全音版では、ディミヌエンドリタルダンドをしてピアノフレーズ終える)。諸版における細部相違については、今後更なる詳細な調査待たれる




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