風 疹とは? わかりやすく解説

風疹

感染症の話 2001年第29週7月1622日掲載

風疹(rubella)は、発熱発疹リンパ節腫脹特徴とするウイルス性発疹症である。近年国内においてもその発生減少傾向にあるが、まれに見られる先天性風疹症候群予防のために、妊娠能年齢およびそれ以前女性対すワクチン対策重要な疾患である。

疫 学
我が国では風疹の流行は2~3年周期有し、しかも10年ごとに大流行がみられていた。最近では、1976、198219871992年大き流行がみられているが、次第にその発生数少なくなりつつあり、流行規模縮小しつつある。季節的には春から初夏かけてもっとも多く発生するが、冬にも少なからず発生があり、次第季節性薄れてきている。
感染症発生動向調査では全国約3,000カ所の小児科定点より報告なされているが、平成12年1~12月1年間でみると、累積報告数が3,123で、定点当たり累積報告数が1.05であった本年平成13年度については第28週までの時点で見ると、累積報告数が1,802で、定点当たり累積報告数が0.60である。

病原体  
風疹ウイルスTogavirus科Rubivirus属に属す直径60~70nmの一本鎖RNAウイルスで、エンベロープ有する血清学的には亜型のない単一ウイルスである。上気道粘膜より排泄されるウイルス飛沫を介して伝播されるが、その伝染力は麻疹水痘よりは弱い。


臨床症状
感染から1421日平均1618日)の潜伏期間の後、発熱発疹リンパ節腫脹(ことに耳介後部後頭部頚部)が出現するが、発熱は風疹患者の約半数みられる程度である。3徴候いずれかを欠くものについての臨床診断は困難である。溶血性レンサ球菌による発疹典型的ではない場合伝染性紅斑などとの鑑別必要になり、確定診断のために検査診断要することが少なくない

風疹
風疹

写真1. 風疹による発疹顔面および体幹全体見られる

多く場合発疹紅く小さく皮膚面よりやや隆起して全身にさらに数日間要することがある通常色素沈着落屑みられないが、発疹強度場合にはこれらを伴うこともある。リンパ節発疹出現する数日前より腫れはじめ、3~6週間持続する写真2)。カタル症状を伴うが、これも麻疹比して軽症である。ウイルスの排泄期間は発疹出現前後1週間とされているが、解熱すると排泄されるウイルス量激減し急速に感染力消失する
基本的に予後良好な疾患であり、血小板減少性紫斑病(1/3,000~5,000人)、急性脳炎(1/4,000~6,000人)などの合併症をみることもあるが、これらの予後もほとんど良好である。成人では、手指こわばり痛み訴えることも多く関節炎を伴うこともある(5~30%)が、そのほとんどは一過性である。
風疹に伴う最大問題は、妊娠前半期妊婦初感染により、風疹ウイルス感染胎児におよび、先天異常を含む様々な症状呈する先天性風疹症候群congenital rubella syndromeCRS)が高率出現することにある(詳細感染症週報IDWR2000年第7週参照)。これは妊娠中の感染時期により重症度症状発現時期が様々である。先天異常として発生するものとしては、先天性心疾患難聴白内障網膜症などが挙げられる先天異常以外に新生児期出現する症状としては、低出生体重血小板減少性紫斑病溶血性貧血間質性肺炎髄膜脳炎などが挙げられるまた、幼児期以後発症するものとしては、進行性風疹全脳炎糖尿病などがある。

病原診断
ウイルスの分離基本であるが通常行われず保険適応でもない血清診断保険適応にもなっており、一般的に用いられている。赤血球凝集抑制反応HI)、中和法(NT)、補体結合法CF)、酵素抗体法ELISA)などの方法があり、以前にはHI法が主流であったその場合、急性期回復期抗体価で4倍以上の上昇により診断する最近ではELISA使われるようになり、急性期特異的IgM抗体検出されれば、単一血清での診断も可能である。CF法は感染後比較早期陰性化するので、抗体保有有無をみるための検査としては不向きである。

治療・予防
特異的治療法はなく、対症的に行う。発熱関節炎などに対して解熱鎮痛剤用いる。
弱毒生ワクチン実用化され、広く使われている。MMR麻疹おたふくかぜ・風疹)混合ワクチンとして使用している国も増加している。我が国では平成6年以前中学生女子のみが風疹ワクチン接種対象であったが、平成6年予防接種法改正以来、その対象生後12カ月以上~90カ月未満男女標準生後12カ月以上~36カ月以下)とされた。また経過措置として、平成15年9月までの間は、12歳以上~16歳未満男女についてもワクチン接種対象とされた。現時点での予防接種率をみると、風疹の予防接種を受ける幼児の数は増加したが、逆に中学生での接種率減少し対策強化課題となっている。平成8年度の伝染病流行予測事業による調査では、我が国における風疹抗体保有状況をみると、小学校高学年から中学生年齢女子
抗体陽性率低く12歳女子における風疹抗体陽性率52%にすぎない。風疹の流行規模縮小しつつあるが、発生消えたわけではない。風疹に対す免疫有しない女性妊娠した場合に風疹の初感染を受ければ、先天性風疹症候群発生危険性が高いことは明らかであり、現時点では幼児期のみならず中学生に対して風疹ワクチン接種積極的にすすめる必要がある

風疹

感染症法における取り扱い2003年11月施行感染症法改正に伴い更新
風しんは5類感染症定点把握疾患定められており、全国約3,000カ所の小児科定点より毎週報告なされている。報告のための基準以下の通りとなっている。
診断した医師の判断により、症状所見から当該疾患疑われ、かつ、以下の3つの基準のすべてを満たすもの
1. 突然の全身性の斑状丘しん状の発しん(maculopapular rash)の出現
2. 37.5上の体温 
3. リンパ節腫脹
上記基準は必ずしも満たさないが、診断した医師の判断により、症状所見から当該疾患疑われ、かつ、病原体診断血清学診断によって当該疾患診断されたもの。

学校保健法における取り扱い
風疹は第二種伝染病定められており、登校基準としては、紅斑性発疹消失するまで出席停止とする。なお、まれに色素沈着を残すことがあるが、その段階で出席停止とする必要はない。


国立感染症研究所感染症情報センター





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