試験車とは? わかりやすく解説

試験車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/05 04:09 UTC 版)

試験車(しけんしゃ)とは、鉄道事業用車の一種。

概要

以下3種類の性質のものに大別できる。

技術開発の目的で各種の試験を行う、いわゆる試験用車両
高速車両の開発や、新技術の性能試験を目的とするもの。営業目的の車両ではないためにスタイルに全く気がかけられていない車両[1]もあるが、スタイリング自体や、形状の違いがもたらす特性の差異を検討する目的のために斬新な外観を持つ車両もある。著名な記録を残した車両などは保存される例もあるが[2]、必要なデータの収集後には廃車されることも多い。
大半は1編成のみの存在であるため、固有の愛称が付されることもある。
新型車両の量産の前に各種の試験を行う、いわゆる試作車
プロトタイプの記事も参照。「先行量産型」などとも呼ばれ、ほぼ同型の量産車が作られる前提で設計される。ただしこの車輛による試験や運用の結果をフィードバックし、量産モデルでは設計変更が入ることも多い。たとえば300系新幹線ではJ0編成がそれである。試験後にすぐ廃車となることは少なく、量産車投入後に構造を同一に改修されて(量産化改造)営業運転に入ることが多い。しかし、試験結果が良好でない(JR貨物ED500形電気機関車など)あるいはそれ以外の事情(近鉄3000系など)により量産化が行われない例もあるほか、量産車との違いで運用が変則的になるなどの理由から早期に引退することもある(JR西日本の500系681系など)。
鉄道設備の消耗状況や建築限界など、地上設備の測定を行う車両。
建築限界測定車軌道試験車、振動測定用試験車、架線試験車、電気検測・信号検測用試験車などが存在する。鉄道路線を保有する上で必須の車両であるが、あまり規模が大きくない鉄道会社などでは(また、専用の車輛を作るまでもなく可能な内容の試験であれば)、営業用車両やその他の事業用車両に検測装置を搭載して検測を行ったり、他社の車両を借り受けて検測を行う場合がある。

なお、日本国有鉄道JR在来線車両における車両形式記号は、職用車と同じ「ヤ」[3]であり、十の位の数字は「9」あるいは「4」が用いられる。また、(開業後の[4])新幹線車両では百位の数字が「9」の「事業用車」に含まれる(新幹線の車両形式を参照)。

日本の試験車両の一覧

車両技術試験を主とするもの

新幹線車両

電車

気動車

客車

貨車

地上設備検測を主とするもの

新幹線車両

電車

気動車

客車

貨車

  • 国鉄ヤ210形貨車(軌道検測用試験車)
  • 国鉄ヤ230形貨車(新幹線923形貨車の在来線版)

私鉄

脚注

  1. ^ 札幌市交通局・高速電車第4次試験車「すずかけ」など。
  2. ^ 米原の風洞技術センターにあるものなど。
  3. ^ 1928年(昭和3年)改定前は「ケン」。また、鉄道省所有の他に京都大学教授所有の試験車も存在した。
  4. ^ 開業前は「1000形」に代表されるように、別の規則だった。
  5. ^ 当初は鉄道ファンからの非公式愛称であり、JR西日本では愛称は特にないとしていた[1]が、2016年8月の京都鉄道博物館での期間限定展示の際にJR西日本側が「ドクターWEST」の呼称を使うようになった[2]

関連項目


試験車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/15 02:23 UTC 版)

国鉄10系客車」の記事における「試験車」の解説

マヤ10形 - 1968年 (2001)日本車輌製造された車両性能試験用の試験車。この種の試験車にはマヤ38形(0番台)があったが車両内外とも老朽化激しく、また新し技術導入し速度牽引性能を高めた車両には対応できなくなったことから製造された。 外観は、10系客車ベースとして12系準じた軽量構造広幅車体採用され電化区間以外へも回送での運転等を考慮し入線線区広げるため第1縮小限界設計されており、屋根は、交直流関連機器載せるため、1/3が低屋根構になっている。低屋根部分には電源パンタグラフ避雷器、交直流切り替え器、遮断器各種直流機器搭載されて交直流いずれも集電可能な構造となっている。パンタグラフからの電気車内電源40 kVA電動発電機駆動し屋根上に搭載されたAU12S形ユニットクーラー4基といった冷暖房機器には直接給電照明計測機器電源としては静止インバータ予備蓄電池を介して供給されている。測定装置はF級機関車牽引粘着試験常時使用されるものを主体装備しており、車端部には被測定車輌設置した各種計測機器からのケーブル接続するための端子多数用意されている。ブレーキ中継弁付電磁自動空気ブレーキとし、台車架線検測車たる495電車使用されたDT-37Xの付随車といえる軸ばり式高速台車TR206を採用しており、これによって最高速度120 km/h抑えられているものの、その一方で一般形客車20系客車の他、国鉄において汎用の一般貨車コキ10000系やレサ10000系といった高速貨車との連結運転が可能となっている。車体塗色は、青15号黄1号側帯を窓上と窓下に1本ずつ巻いていた。 完成後は1968年昭和43年10月1日ダイヤ改正前に行われた20系客車および10000系貨車牽引試験EF66形EF81形ED78形EF71形の性能試験始まりその後電気機関車ブレーキ性能誘導障害といった各種試験供されたが、1980年新製されたEF64形1000番台性能試験後は使用されることも減り1986年9月奥羽本線行われたED79形試運転最後に運用離脱し、翌1987年廃車された。 >製造データ スヤ11形 - 1970年 (2001)マヤ10形続き日本車輌製造され電気機関車ディーゼル機関車客車貨車強度振動試験用試験車。列車高速化により営業用車両直接機器積んで行う性能試験は運転上の制限増え計測機器準備にも問題があったことから専用の試験車として開発された。 外観12系客車元にしているが車体幅は狭く側面にはマヤ34形と類似する観測用の出窓、また機器積み下ろし用扉が設けられた。計測機器車両各部応力荷重振動加速度変位車輪への横圧、輪重に脱線係数測定主体とし、ひずみ計温度記録計備えるほか、速度走行距離計測するためのパルス発生装置台車車輪の状態を観測するテレビカメラ各種データ処理用のコンピュータ搭載、車端部には被測定車からのケーブル接続するための端子設けられた。これらの計測機器電源としては床下ディーゼル発電機備えられ屋根上のAU13A形ユニットクーラー(5基)といった冷暖房設備電源兼ねている台車高速性能高めるため新幹線0系電車使用されたDT-200を元にしたIS式軸箱支持ディスクブレーキ使用高速台車TR221を採用しており、これによって設計上の最高速度150 km/hとしている。なお、本車車輪車輪横圧・輪重測定のため1位軸と4位軸が特殊断面スポーク車輪となっていた。 完成後は1970年4月5月車両試験台用いて最高170 km/hまで定置状態での速度試験行い6月には本線上で110 km/h運転試験曲線通過試験実施し走行性能確認同年新製されたDE50形の性能試験から強度振動試験車としての運用開始したその後車両性能試験以外にも狩勝実験線脱線現象研究利用され1987年廃車された。 >製造データ

※この「試験車」の解説は、「国鉄10系客車」の解説の一部です。
「試験車」を含む「国鉄10系客車」の記事については、「国鉄10系客車」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「試験車」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「試験車」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「試験車」の関連用語

試験車のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



試験車のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの試験車 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの国鉄10系客車 (改訂履歴)、モデル線 (改訂履歴)、国鉄オハ31系客車 (改訂履歴)、新幹線の編成記号 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS