米国のダム事情とは? わかりやすく解説

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米国のダム事情

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 02:13 UTC 版)

ダム建設の是非」の記事における「米国のダム事情」の解説

日本のダム反対派多大な影響を与えたものとして、組織予算縮小迫られていたアメリカ合衆国内務省開拓局の長官だったウィリアム・ピアーズによる、1995年の「アメリカにおいて、ダム建設時代終わった」という発言があった。ビアーズ日本弁護士連合会招聘によって来日した際に上記趣旨発言行った。これが日本のダム反対派勇気付け、今に至るダム否定流れ形成している。 この講演においてビアーズ述べたのは正確に以下の通りである。 「アメリカではダム建設時代終わったという避けがたい結論得た最早従来型大規模な建設プロジェクト遂行するだけの一般大衆支援政治的支援当てには出来ない。現在遂行されているダム事業速やかに完成させるが、今後新規大規模事業遂行される可能性ほとんどない。」 これが日本大きな影響及ぼし計画中のダムのみならず建設途上ダム事業中止させるという潮流になっているアメリカ国内には「アメリカン・リバース」、「フレンズ・オブ・ジ・アース」、「トラウト・アンリミテッド」という河川自然保護団体があり、ダム撤去精力的に活動している。この3団体1999年12月に『Dam Removal Success Story』(ダム撤去成功物語)という書籍発行した。これはアメリカ国内におけるダム撤去統計および具体例記したものであり、国土交通省もこの書籍援用ダム反対派反論行っている。この中でアメリカ国内では1999年まで467基のダム撤去されている。現状ではその多く国際ダム会議定義したハイダムの基準日本の河川法・河川管理施設等構造令規定された「ダムではなく堤高15メートル以下の「堰」に分類されたものである用途治水・利水というよりは、特に自家発電観光用として目的有するものがほとんどであり、管理主体民間企業中心である。さらに彼らアメリカダム反対派撤去すべきダム対象について同署サブタイトルに、『維持管理しても意味のないダム撤去し河川よみがえらせる』とその理念記している。「フレンズ・オブ・ジ・アース」のジョーン・カントレルは「アメリカではダム撤去急進的なものではない」と述べている一方で、「(ダム撤去を)全米75,000箇所の大ダム適応すべきとは考えていない撤去条件環境安全性経済性三条件が揃ったときである」とも述べている。また『Dam Removal Success Story』には「堆砂などが及ぼす河川環境への負荷考慮した場合無闇にダム撤去進めるべきではない」とダム撤去に際して注意すべき点があることにも言及している。 現在のアメリカ政府ダム建設対す考え方であるが、当の内務省開拓局は「(ビアーズ発言は)別にショックを受けるようなことではない」と述べ予算環境への負荷、そして大ダム建設可能な地点枯渇考えれば今後別の水資源開発方法模索すべきだとも述べている。その一方でダム造るかと問われれば『造る』と答える」とも答えている。アメリカでなぜダム建設セーブされたかであるが、一つ国内にある全ダム数が約75,000箇所日本(約2,800箇所)の約30倍、総貯水容量が約6,148立方メートル日本(約222立方メートル)の約300倍に当たり、水資源開発の緊急性帯びていないこと、整備水準が高いため補修事足りていること、さらに河川勾配緩やかなため治水問題が低いこと、火力発電主力であること、などが挙げられる事実アメリカでは6,786基のダムにおいて改修事業が行われており、撤去ダムの約15倍の数に当たる。またダム建設が全く新規行われていないかと言えばそうではなく国際ダム会議1999年行った調査によれば水不足頻繁に起こるカリフォルニア州において42基のダム建設中とされている。 アメリカにおけるダム撤去代表例として日本でも喧伝されワシントン州エルワ川のエルワーダム、グラインキャニオンダムの場合1918年完成直後ダム一部破壊し修繕行ったものの老朽かも手伝って漏水が続く状況であり、政府策定したダム安全基準にも抵触する状態であった。またエルワ川は絶滅危惧種も含むサケ宝庫であったため、生態系への影響重要な論点であった。そこに水利権更新問題があり、彼らの権利蹂躙する建築物であるがためにダム建設当時から反対していた先住民サケ漁業権復活求めダム撤去主張環境NGO学者生態系保護観点から同調した管理していた民間企業水利権更新求め電力行政管轄する連邦エネルギー省申請行ったが、省当局はこれを自然保護ダム安全性観点から却下連邦議会調停もあって1992年にエルワ川環境回復法が制定され連邦政府企業対し補償額2億9,500ドル払ってダム撤去決定した。エルワ川のダム撤去先述した環境安全性経済性三点でエルワ川の2つダム満足する稼働状況にないという背景があり、当事者合意全米規模での議論経て撤去進められている。また、計画の費用には、撤去後河川環境モニタリング含まれており、アメリカでは河川生態系回復行方注視されている。 日本ではピアーズ発言の影響を受けダム撤去論が台頭し熊本県荒瀬ダム球磨川)や高知県家地川ダム四万十川)の撤去要望高まっている。ダム撤去による河川再生漁業環境良化がその目的であるが、関係各方面にその重要性認知されていないため、行政住民との間、また流域住民中でも賛否の声が上がっている。さらに、エルワ川のダム撤去係る総費用1億4,200ドル予想されており、財政難にあえぎ自然環境保護について理解が浅い日本の地方自治体捻出できるかは、不透明である。このため荒瀬ダム撤去本決まりになりながら財政的な問題から2008年平成20年)に撤去は一旦白紙となり、2010年2月3日再度撤去方針示されるといった状況がある。また、日本でも従来コンクリート固めた護岸工事反省し自然に近い形での河川再生事業国土交通省各地方自治体始めている。例え魚類遡上促進のために固定堰床固工の撤去千歳川北上大堰北上川)などで「自然化工法」と呼ばれる護岸工事などである。ただし、こうした工法成果確認するためのモニタリングはなされておらず、効果のほどは不明である。

※この「米国のダム事情」の解説は、「ダム建設の是非」の解説の一部です。
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